次期自民党総裁に立候補している岸田前政調会長は、アベノミクスについて、”経済は成長したが、格差が生じた”、と指摘し、”分配も考えないと日本がおかしくなる”、と述べ、アベノミクスの副作用を十分認識しているようだ。
また、「新たな資本主義を創る議員連盟」の会長に就任しており、日本の経済の問題点を十分に検討すると期待していたが、どうも選挙目当ての仲間つくりの為の集団で、その成果には期待できそうに無い。
岸田氏は格差の是正を図るため、政治による再分配で中間層に手厚い支援をする、例えば、子育て世帯の教育費や住居費への支援、看護師の処遇改善などを挙げている。この程度で格差が解消出来ると思っているとすれば、岸田氏の認識している格差も大したことではない。
更に岸田氏は、コロナ後の経済回復のために数十兆円規模の大規模な財政出動を打ち出すと宣言している。これまでの日本の借金が1100兆円を越していることを考えれば、数十兆円を上積みしたところで、大勢に影響しないとの判断からであろうが、財政の健全化の面からは真逆の行為だ。また、2025年度までに基礎的財政収支を黒字化する政府目標については”大きな流れをしっかり考えていかなくてはならない”と他人事であり、真剣味が伺えない。
岸田氏が立候補するにあたり党役員の定年制を言い出した時、安倍前首相と決別し独り立ちすると期待が大きかったが、その後安倍氏の支援を期待してすっかり擦り寄っている。異次元金融緩和で大赤字を加速したのは安倍前首相であるが、岸田氏はアベノミクスの継続を主張しており、これでは、党友・党員の支持を得られないばかりか、若手代議士の支持も得られないであろう。
一方河野氏も、”アベノミクスで企業は非常に利益を上げたが、残念ながら賃金に波及してこなかった”、と延べアベノミクスに全肯定ではない。そこで、企業から個人へと、個人を重視する経済を考える、と主張し、賃金に利益を振り向ける労働分配率を高めた企業に法人税の優遇措置を設ける案を打ち出した。この主張の詳細は分からないが、現在の法人税を高めようとする動きではなさそうだ。財政出動については、”必要に応じて財政出動は必要”との姿勢を示すが、コロナ後の経済対策に関しては、規模優先の歳出膨張には否定的である。
岸田氏、河野氏も規模の大きさに差があっても財政出動を必要としているが、共に問題なのは財源だ。財源が豊富であれば、何でも出来る。世界に類を見ない借金大国の財政健全化のためには増税は避けて通れない。しかし、増税は国民の反発必須だ。増して、総選挙の直前に言い出すのは自殺行為であろう。国の財政破綻の前には、法人税、相続税や消費税等の増税を国民にお願いせざるを得なくなるだろうが、お願いするためには丁寧な説明が必要である。
総裁選候補の誰もが、国民への丁寧な説明が必要と言ってはいるが、安倍政権以来丁寧な説明は全く無く、丁寧な説明とは何かもすっかり忘れ去られている。大声で、多弁に、しゃべることが丁寧な説明ではない。原稿を読み上げるのではなく、聞く人の顔を見ながら、納得したかを確かめながら説明するのが、丁寧な説明だ。2021.09.22(犬賀 大好ー748)
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