福島第1原発事故で人間が避難し、居なくなった土地でイノシシやニホンザル、タヌキなどの野生動物が大繁殖しているようだ。動物の繁殖増に関わる最も重要なファクターは、人間の存在であり、放射線ではないのだ。
生物に及ぼす残留放射能の影響は原発事故の被災地で調査されている。その一例は、福島県の帰還困難区域の中でも特に線量が高い地域では、野ネズミの染色体異常がわずかに増加したことが確認されており、両生類やメダカでは帰還困難区域であっても今のところ影響が見つかっていない、とのことだ。
国連科学委員会や国際原子力機関などの国際機関も、「福島原発事故直後の線量が高かった時期に、高線量地域の野生生物の一部個体では影響があった可能性はあるが、個体群や生態系に全体的な影響があったとは考えにくい。」と言った趣旨の報告をしている。
人間の居なくなった土地には、無人の畑や田んぼが残されておりそこに食料となる果物や野菜類が存在するだろうし、野生動物の敵となる人間が居ないとなると野生動物の天国となるのだろう。
現在では原発周辺地域に野生のブタとイノシシの雑種も生息しているそうだ。家畜であったブタが被災地に取り残されたが、そこに野生のイノシシがやってきて交配したようだ。”放射能による遺伝子への影響はない一方で、家畜のブタがイノシシの遺伝子に影響を及ぼしている”と、研究者は説明している。
原子炉爆発時に高放射能を直接浴びた人には多大な影響を及ぼしたであろうが、放射性の塵等が降り積もった避難地域における放射能は当初想像していた程生物に対する影響は大きくないようだ。
また、1986年、ウクライナのチェルノブイリ原子力発電所の原子炉が爆発、大規模な火災が発生して周辺地域に放射性物質を撒き散らした。これにより、現在のウクライナとベラルーシにまたがる広大な地域が立入禁止区域に指定され、今だ戻ることは許されていない。
しかし、現在そこは多くの種類の動物たちがすむ楽園となっているそうだ。ヘラジカやシカ、ビーバー、フクロウ、ほかにもこの地域には珍しいヒグマやオオヤマネコ、オオカミまで多岐にわたる。高い放射線量にも関わらず、人間による狩猟や生息地の破壊に脅かされることがないため、動物たちは数を増やしていると考えられる。
だが、放射線が動物に与える影響という点では、いろいろな調査結果が報告が出されている。ハタネズミに高い確率で白内障が見られること、カッコウの数が減少していること等である。ただし、深刻な突然変異が起こったのは事故直後のみであり、意外に影響は少ないようだ。
この立ち入り禁止区域もロシアのウクライナ侵攻の影響を受けているだろうが、野生動物にとっては、相変わらず天国かも知れない。
2022.05.07(犬賀 大好ー812)
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