中国は、SARSコロナウイルス感染症に引き続きまたしても新型コロナウイルスの発生元になった。SARSウイルスは2002年11月に、中国南部の広東省で肺炎の患者が報告されたのに端を発し、東アジアやカナダを中心に感染拡大し、2003年7月に終息宣言が出されるまで、32の地域と国にわたり8,000人を超える症例が報告された。
現在世界中に猛威を振るう新型コロナウイルスは150万人を超える(9日現在)感染者を出しているが、中国での対策には先のSARSの教訓が生かされているのであろうか。
新型コロナウイルスが世界的に広がった原因に関し、中国政府の専門家チームトップの鍾南山氏は3月27日、広東省広州市で記者会見し、感染拡大を招いた要因として”中国疾病予防コントロールセンター(CCDC)”の地位の低さを指摘した。
CCDCは、米国の疾病管理予防センター(CDC)を見習ってSARS発生の年に創設されたようだが、恐らくSARSの教訓が生かされたのであろう。しかし、米国のCDCなど海外の感染症対策部門のように直接対外発信できる権限が無く、中央政府の許可がすべてにおいて必要とされるようだ。
また鍾氏は12月初めか1月初めに厳格な拡大防止措置を取っていたら、患者は大幅に減っていたと、初動の遅れが感染拡大につながったとの認識を示した。この発言は、初動の遅れは政府にあるとの指摘で、政府に対する批判であり、発言が公にされたこと自体が驚きだ。
SARS感染症の結果CCDCが創設されたが、単なる研究部門との位置づけで主たる権限は中央政府が握っているようだ。政府は初動の遅れを認めておらず、対外発表の権限までは絶対譲らないだろう。
さて、発生源に関し当初は武漢の海鮮市場で売られていたコウモリ説が有力だった。SARSウイルスでもコウモリをはじめ、ハクビシンやタヌキ、ネズミなどの動物が媒介する可能性も指摘されているが、今もって確定的な結論は出ておらず、また有効性が確実とされる治療法もいまだ確立されていないとのことだ。
CCDCが研究面で成果を上げられ無いのは、ウイルスそのものが研究対象として難しいのか、予算や人員の問題か不明であるが、政府はCCDCの将来をどのように扱うであろうか。
さてSARSウイルスにしても、今回のウイルスにしても動物起源説が払拭されておらず、一方では市場ではこれらの動物が相変わらず扱われており、将来同じような感染症の発生の懸念が残る。
一方、海鮮市場のすぐ近くにあるCCDCからウイルスが流出した可能性を香港メディアが報じたそうだ。記事によるとそのセンターでは実験用に600匹以上のコウモリを飼育しており、その研究員の1人がコウモリに攻撃され、ウイルスに感染したのではとの論文が発表されたという。
広東省を地元とするCCDCでは野生動物の感染症を研究対象とすることは容易に推測され先の噂の信憑性は高くなるが、現在削除されているそうで単なる噂かもしれない。しかし、逆に真実であるがゆえに政府の圧力で伏せられたと勘繰りたくなる程、中国の報道規制は強い印象である。
新型コロナウイルス騒動からの脱却を図るために、一刻も早い感染源の解明と抜本的な治療薬の開発が必要であるが、中国は全世界から知恵を借りるべく、これまでに得られている研究情報を公開すべきであるが。
2020.04.11(犬賀 大好-590)
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