今月13日に閉幕した主要7か国首脳会議(G7)の記者会見で、菅首相は東京五輪について”感染対策の徹底と安全安心の大会について、全首脳から大変力強い支持をいただき、東京大会を何としても成功させなければならない”と決意を述べた。
この決意表明で開催は決定的となったが残る問題は観客数だ。東京五輪組織委員会の橋本会長は東京都などに出されている緊急事態宣言が6月20日まで延長されることを踏まえ、会場の観客数上限の決定時期が6月下旬以降となる見通しを示していた。
そこで、16日、緊急事態宣言とまん延防止等重点措置が解除された後の大規模イベントの観客数上限を会場の定員の50%以内であれば1万人とする政府の方針に準じる方向で調整に入ったそうだ。
一方、コロナ分科会の尾身会長が昨日18日記者会見を行い、オリンピックの開催によって人出や接触の機会が増え、首都圏から全国に感染が拡大し、医療体制を圧迫するリスクがあると指摘し、無観客が望ましいとしつつ、観客を入れる場合には現行の大規模イベントよりも厳しい基準に基づいて行うべきだと提言した。
開会式が行われる国立競技場の場合、政府は観客を1万人としたいが、尾身会長は誰も入れないか、現行の5000人上限をもっと減らすべきと主張しているわけだ。マスコミはこの隔たりに大騒ぎしているが、感染症の専門家と政府の考え方が違うのは当然であろう。
専門家は人の健康の面から検討すればよいが、政府は健康面からばかりでなく、国際的な面も含めて検討しなくてはならないからだ。
政府は目下安心安全の開催と一点張りであるが、国際公約している東京五輪を実行し、その際スポーツの力を最大限発揮させるために観客数は多い方が、コロナ患者が1万人規模で増え多少死亡者が出たとしても、日本の国益にかなうと、本音を語るべきだ。
菅首相は、コロナワクチンの接種が急拡大すればコロナの犠牲者が激減すると期待しているようだ。確かに、米国のカリフォルニアやニーヨークでは接種率が50%を超え、感染者が激減し各種規制が撤廃され、活気が戻ってきているとの話だ。しかし、英国では18歳以上の約8割がワクチンの1回目の接種を終え、約6割が2回目の接種を完了しているが、インド型の変異ウイルスが急激に広がり、ロックダウンが解除できない状況のようだ。
米国と英国の違いがどこにあるか、また日本はどちらになるか分からないが、菅首相は米国の方に賭けているようだ。コロナウイルスはファクターXと呼ばれる理解できない要素があり、また得体のよく分からないインド株等の変異株が出現しており、今後どうなるか分からない。
この9月には、総選挙が行われる。この時、日本国民が東京五輪・パラリンピックの余韻に浸って浮かれ気分か、コロナ感染で混乱しているか、選挙の結果が左右される。リスク管理は最悪の場合を予想して対処しておくことが原則であるが、菅首相は楽観的過ぎるのではないだろうか。2021.06.19(犬賀 大好-712)
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