日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

”分をわきまえろ”発言は”時間がかかる”発言より問題が根深い

2021年02月17日 09時47分12秒 | 日々雑感
 2月3日東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が日本オリンピック委員会(JOC)臨時評議員会で、理事会に女性を増やしていく場合は、発言の時間をある程度規制をしておかないとなかなか終わらないから困るとの主旨の発言をし、これが女性蔑視になるとの批判を受け、翌日の謝罪会見で口では謝罪の弁を語ったが、原稿を棒読みであり本心からではないことが露呈し、辞任に追い込まれた。

 女性差別とは、女性であることを理由に不当な扱いを受けたり、差別を受けたりすることであり、外で働いて家族を養うのは男性の役割で、子どもを育てるのが女性の役割といった考え方が差別の根源になるそうだが、人により得手不得手があるため、世の中役割分担のあることは当然となろう。

 この役割分担において不当な扱いが、セクハラ、パワハラ、モラハラ等になるのだろう。役割分担があることを当然と認めれば、不当とは何かが問題となる。何が不当にあたるか、法律で規制されるような犯罪行為の類に関しては明らかであるが、道徳に基ずく行為となると人により判断が異なるから厄介だ。

 例えば、”年長者を敬え”は道徳の一つであるが、これがスポーツ界における先輩、後輩の関係に拡大解釈されると様々なパワハラとなる。また、地域の人々の価値観、伝統、慣習などによっても影響され、長年日本社会で生きてきた高齢者にとって、何が女性蔑視に相当するか戸惑うことが多い。欧米で見かける紳士の行為である”レディファースト”の考えは、女性は”か弱い者”と見なす女性蔑視そのものではないかとも思ってしまう。

 森前会長の謝罪会見でも、この辺りが有耶無耶なまま会見に臨み、一応謝りはしたが内心納得できない様子がありありと読み取れた。

 ”時間がかかる”発言の他に”分をわきまえろ”発言があったが、女性蔑視以上に、日本社会における大きな問題である。この言葉は”空気を読め”や、”忖度しろ”に直結し、民主主義の根幹に関わる。民主主義はお互いに意見を述べ、その中から一致点を見出すことが重要であるが、議論そのものが無駄であるとのニュアンスが含まれる。恐らくこれまで組織委員会において森会長の鶴の一声で何事も決まっていたのだろう。

 そもそも、日本人は議論することが苦手であり、議論始めるとすぐに喧嘩になる傾向がある。このため会議の前に結論は決まっており、会議は儀式の場と化すことが多い。そのため会議の前の根回しが重要で頻繁に行われるが、根回しは非公式の場で行われ、しばしば酒を飲みながらが多い。森前会長の得意とする調整はこのようにして行われていたのであろう。

 酒の場の調整となると女性の出席機会が少なくなり、会議の場では雰囲気が分からず、話が長くなることになってしまう。次期組織委員会の会長が本日にでも決まるとの報道がある。誰が会長になっても、公の場で皆の意見を短時間に取りまとめるのは難しい。2021.02.17(犬賀 大好ー678)


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