日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

森会長の辞任劇から見えるIOCの商業主義

2021年02月13日 09時38分31秒 | 日々雑感
 2月12日、突然東京五輪の組織委員会の森会長が辞任することになった。ことの発端は、2月3日に開かれた日本オリンピック委員会(JOC)の臨時評議員会で、森会長の女性蔑視発言が”反差別や男女平等原則の完全実施をめざす五輪精神”に反するものだとマスコミの批判を受け、翌日には謝罪し発言を撤回したが、会長職の辞任は否定していた。

 自民党の二階幹事長は、発言を撤回をした為問題はない、と述べ、辞任の必要はないとの認識を示した。菅首相も8日の衆院予算委員会で森会長に辞任を促すように求められたが、進退についてはあくまで、組織委員会として判断するものとの認識を示し、このまま時間と共に忘れ去られていくのを期待しているようだった。

 そもそも組織委員会のメンバーは森氏の意見に意を挟む人は除外されていたであろうし、オリンピックの理念は何か、何のために開催するのかの話題は興味の外で、この夏東京五輪を何が何でもやると一致団結しているだろう。日本のオリンピック関係者の間では森氏の会長辞任は問題外だし、増して東京五輪の中止や延期など口にするのもご法度であろう。

 しかし、海外では女性蔑視には敏感であり、森会長の発言について世界のメディアも辞任の方向で関心の高さを示している。11日には五輪の放映権を持ち、開催可否に大きな影響力を持つ米放送会社NBCが“辞任勧告”の記事を掲載し決定打を放った。

 IOCのバッハ会長は森会長が発言の翌日に謝罪したのを受けて、森氏の問題は終わったと沈静化を図っていたが、今月9日、IOCは、一体性、多様性、男女平等はIOCの活動に不可欠な要素であり、森会長の最近の発言はIOCの公約や五輪アジェンダ2020に反する、と改めて非難の声明を出した。

 IOCは表面上、森氏の発言が五輪の理念に反しているとの観点から非難しているが、その裏ではNBCの意向が大きく影響していたと推測する。NBCは1兆円以上の放映権料をIOCに払っており、コマーシャル料で稼ぐNBCはスポンサー企業の意向を重んじなくてはならない。企業は顧客と密着しており当然世論を気にする。

 結局、世論→スポンサー企業→NBC→IOC→辞任の流れであろう。IOCこそオリンピックの基本精神を真っ先に守らなくてはならないが、先立つのは資金であろう。兎も角オリンピックをやらなくては金は入らない。これがバッハ会長の最初の発言であり、NBCの意向を忖度して慌てて声明を出し直したに違いない。図らずもIOCの商業主義が表に出てしまった。

 世界中コロナウイルスが猛威をふるっており、ようやく先進国ではワクチンの使用が始まった。東京五輪は7月24日開幕となるが、間違いなく世界の隅々までワクチンが広がってはおらず、地球上からコロナウイルスが撲滅されてはいないだろう。

 オリンピックは世界の平和の為の祭典だ。オリンピックの精神からはコロナに苦しむ国々を横目に見ながらお祭り騒ぎが出来る筈が無い。しかし、IOCは東京五輪を無観客でも実行したいようであるが、開催の是非はNBCが無観客でも視聴率が稼げるとの判断次第となろう。2021.02.13(犬賀 大好ー677)


コメントを投稿