政府は、2050年地球温暖化効果ガス排出実質ゼロ宣言をしている。その一環として昨年2020年12月、洋上風力を再生可能エネルギーの柱として将来原発45基相当の規模にする目標を決めたが、日本は風力発電の分野では着手に早かったが、いつの間にか欧州や中国勢に後れを取ってしまった。
日立は2012年に旧富士重工業から風力発電機事業を買収し、主に陸上向けと洋上向け2種類の風力発電機を開発・生産していた。陸上設置型では新規設置の国内シェアは2016年度に約4割を占めていたそうだ。
ただ、日本市場は、世界に比べて圧倒的に小さい。2017年に世界で稼働を始めた風力発電所の出力は計5250万kW だったのに対し、日本はたったの16.2万kWであり、その翌年も19.2万kWにとどまっていた。価格が高いと言われて国内市場もなかなか育たなかったが、海外に目を向ける努力も怠った。
2011年に東日本大震災が発生し、原発が一斉に停止したが、そのうちほとぼりが冷めれば原発が回復すると判断したのであろうか、日立製作所は風力発電機の生産から撤退することを2019年1月に決めた。国内の風力発電機メーカーは、三菱重工業と日本製鋼所も事実上生産から手を引いており、日立の撤退で風力発電機を生産する国内企業はなくなってしまった。
世界の流れは原発から自然エネルギーへと変化しつつあったが、日本ではまだ原発コストが一番安いと信じられていたのであろうか、風力発電は見切りを付けられてしまった。
更に経産省は2020年12月までに、福島県沖に設置した浮体式洋上風力発電施設を不採算を理由に、来年度に全て撤去すると明らかにした。この施設は東京電力福島第1原発事故からの復興の象徴と位置付け約600億円を投じた事業であったが。
ところが、同月25日には、改めて洋上風力発電を再生可能エネルギーの本命と位置付けたのだ。洋上と言っても、基礎を海底に固定する着床式から全体を浮かせる浮上式まであるが、今回は浮体式を諦め着床式に方針を変更したのが出直しの根拠であろう。
日本は、風力発電の着手は世界の中でも早かった方だが、技術の流れの読みの拙さから世界に後れを取ってしまった。日本は山地が多いため土台を築き易い陸上設置型が有利であると判断し、また洋上設置型でも日本は遠浅の海が少ないため浮上式を選択したのであろうが、世界の動向から外れてしまった。
日本独自の道を進む選択肢もあるが、国内市場は狭く、また技術開発も一企業だけでは限界がある。携帯電話の分野では一時ガラパゴス化との言葉が話題となったが、風力発電の分野でもその二の舞を踏んでしまった。
経産省と国交省は、昨年政府と民間企業合同の「洋上風力の産業競争力強化に向けた官民協議会」を立ち上げ、洋上風力発電の強化を目論んだが、出遅れを取り戻すことが出来るであろうか。2021.03.03(犬賀 大好ー682)
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