最近組織的隠蔽と言う言葉をよく耳にする。組織とは、共通の目標を有し、目標達成のために複数の人々によって構成されるシステムのことであり、従って複数の人間が謀を巡らし、それを隠せば組織的隠蔽となろう。従って、そこに社長等の管理職が関係しているかは問題外であろう。
最近の組織的隠蔽の分かり易い例は、レオパレス事件に見られる。レオパレス21の手掛けたアパートで大量の施工不良が見つかった問題で、2006年まで在籍していた社長が、施工の効率化のため、仕様とは異なる部材を使うよう指示していたことが明らかになり、施工不良の原因は組織的・構造的であったと解明された。
また、スズキ自動車の検査不正に関し、今年4月中旬に新たにブレーキ検査などの不正が発覚した。数値をかさ上げし不合格の結果を合格とし、1980年代から無資格者が検査するなどの不正が明らかになり、組織的な隠蔽が確認されたそうだ。
自動車業界の無資格検査は2017年、日産自動車やスバルで発覚した。スズキは当時無資格検査は無いと国土交通省に報告していたが今回明らかになった。自動車業界は価格競争が激しく、検査要員の縮小や検査工程の省略化が自動車業界の共通の常識のようである。また、各製造過程における検査が十分行われているため、最終検査は不要との認識もあるようだ。
この点最大手のトヨタ自動車でこの種の不正が無かったとは驚きであるが、逆に言えばトヨタにはコストカットの余裕が残っているとも思われる。そうでなければ、未だにしっかりと組織的隠蔽をしているとしか思えない。
民間企業の場合、組織的隠蔽は内部告発等を切っ掛けに司法権力により明らかにされるが、官僚機構は司法組織が同じ仲間にいるとの安心感があるのか、組織的な隠蔽は常識のようだ。
外務省駐イラン大使を務めた駒野欽一氏に7年前にセクハラ被害を受けたとして、当時部下だった女性職員が強制わいせつ容疑で警視庁に刑事告訴したことが4月15日分かった。
この女性は、セクハラ被害を長年上司に訴え続けてきたが少しも顧みられず、駒野氏にも反省が見られなかったことから、告訴に踏み切ったとのことである。外務省ではこの程度の話は日常的にあり、触らぬ神に祟りなしとばかり組織を上げて隠蔽しようとの風土があると想像される。
官僚機構の組織的な隠蔽を伺わせる事件は、森友・加計学園事件での財務省、統計問題での厚労省にも見られるのは周知の如しである。
更に捜査を担当する警察組織が関わる不正となると有耶無耶の結果になる。その一例が障害者郵便制度悪用事件だ。割引郵便制度の利用の認可を得るためには厚労省の証明書が必要であり、その発行を担当していた当時課長職であった村木厚子さんが逮捕された事件である。しかし、1年以上に亘る取り調べの結果、担当検事のでっちあげと分かり、無罪となった。
村木さんは捜査のあり方、司法のあり方をあきらかにするために、国に対し国家賠償請求起訴に踏み出したが、国はあっさりと一検事の罪と言う形で幕を引いてしまった。一人の検事が一人の人間をこれほど拘束出来る驚きであり組織ぐるみを伺わせるが、検察当局の責任が広がらないようにする組織的な隠蔽の意志がはっきりと読み取れる。
このような組織的隠蔽が広く行われるようになったのは、何か外乱があっても組織の現状維持が最優先との安定志向が強まっているのだろうか。それとも社会の硬直化だろうか。あるいは単に世論の関心が高まりマスコミが取り上げるようになった為なのか。2019.04.24(犬賀 大好-540)
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