米国の過去4カ月の消費者物価指数(CPI)の伸びは、総合指数で2.1%と、年率換算で6%超えの水準に達しているのだそうだ。これに対し、日本の4月のCPIの総合指数は前年同月比0.4%低下と7カ月連続のマイナスだそうで、相変わらず日本ではデフレ模様である。
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、米経済で最近見られる物価上昇は想定より大きいとしつつ、時間とともに落ち着く可能性が高いとの認識をあらためて示していたが、高インフレ期間が予想以上に長引く可能性があるとのFRB幹部の指摘もある。インフレ模様は米国に限らず、米欧でも同様でエネルギー価格の上昇や財政出動による景気回復観測、新型コロナウイルスのワクチン普及期待などを背景にインフレが加速しているのだそうだ。
一方、日本銀行は4月の経済・物価情勢の展望(展望リポート)で、コロナ後の景気回復に伴って物価も次第に上昇していく傾向を示したが、2023年4月の黒田東彦総裁の任期満了までに2%目標は達成できない見通しを示した。
世界の傾向と日本の傾向がかくも異なるのはなぜか、また国民の実生活にどのような影響が出てくるのか、不安になる。年金生活者にとって年金額が年々減少傾向にあるため、現在のデフレ傾向は非常にありがたいが、経済は総じてわずかなインフレ基調にあることが好ましいようで、物価上昇率2%はその目標なのだそうだ。
2012年末からの第2次安倍政権の下、2013年黒田氏が日銀総裁に就任した。安倍首相は黒田日銀総裁と異次元金融緩和を敢行しデフレ脱却を目指した。しかし、8年が経過したが物価上昇率2%の目標は今だ達成されておらず、マスコミの異次元緩和に対する声も小さくなったが、相変わらず続けているようだ。アベノミックスでは市中にお金をばらまき、消費喚起を促したが、当初懸念されたハイパーインフレも現時点では起こっていないのは幸いである。
さて、黒田総裁は金融緩和の出口の議論は時期尚早との説明を繰り返しているが、当初の目標を達成できずに金融緩和を止めるわけにはいかないのだろうが、長年の緩和に伴う副作用も目立っている。
低金利政策による銀行の衰退、市中の投資を盛んにするため日銀が買い上げた莫大な国債の後処理、株価を高めに誘導する上場投資信託(ETF)の買い入れ等、爆弾を抱え込んでいる。
これだけ金融緩和を続けているのに、なぜ日本で物価上昇が起きないのか、様々な意見がある。例えば、日本では国や企業の価格規制が厳し過ぎる等があるが、本当であれば政府は金融緩和よりそこに手を入れるべきであろうが、その気配は無い。
分かり易いのは、日本社会は高齢者が多く、しかも金を握ってるのは高齢者であり、高齢者は既に欲しいものは手に入れており、多少収入が増えたところで購買には結びつかない、がある。本当であれば、金融緩和の実施理由である、個人の所得が増えたら、世の中の購買意欲が上がってインフレが進むとの考え自体が間違っていることになる。
高齢化社会においてはこの経済の大原則を見直す必要があるだろうが、経済学者はどう思っているのだろう。2021.06.26(犬賀 大好-714)
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