先日の連合の大会で岸田首相の挨拶で、今年の春闘では、賃上げ率は3.58%、中小企業においても3.23%と、30年ぶりの高水準となり、また、最低賃金も過去最高の引上げ幅で、全国平均1004円となり、1000円超を達成したと誇った。しかし同時に国民は、物価高に苦しんでいると、賃上げがあってもそれ以上に物価が上がっていることを認めた。
総務省によると、先月8月の消費者物価指数は生鮮食品を除いた指数が2020年の平均を100として去年8月の102.5から105.7に上昇し、上昇率は3.1%となり、3%以上となったのは12か月連続となったそうだ。このうち、生鮮食品を除く食料は9.2%上がり、生活に必須な食料品の大幅な上昇が続いているとのことだ。
日銀は7月28日、経済・物価情勢の展望リポートを公表した。生鮮食品を除く消費者物価指数の前年度比上昇率の見通しを2023年度は2.5%に上方修正した。しかし、海外経済の下振れリスクや資源価格の動向等で不確実性が高いため、2024年度は1.9%、25年度が1.6%で、数値上は政府・日銀が物価安定の目標とする2%付近が続くと見込んだ。
また、日銀は物価上昇と共に賃上げを重視するが、展望リポートでは、物価や賃金が上がり難いことを前提とした慣行や考え方が根強く残り続ける限り、来年以降は賃上げの動きが想定ほど強まらず、従って物価も下振れる可能性がある、と指摘した。賃上げがされない為、物価上昇が持続しないと考えたのであろうが、先述の資源価格の動向等で不確実性が高いためとした言い訳はどこに行ったのか。
実質賃金が低下しているのに、世の中景気は良いようだ。景気循環を知るために利用されている指数の代表的なものは、日銀短観だ。日銀が10月2日発表した9月の短観は、企業の景況感を示す業況判断指数が、大企業・製造業で前回6月調査から4ポイント改善のプラス9と、2四半期連続で改善した。エネルギー価格の下落や半導体不足の緩和が追い風となったそうだ。大企業・非製造業は4ポイント改善のプラス27.6四半期連続の改善で、1991年11月以来、約32年ぶりの高水準となったそうだ。これを見る限り世の中現在景気が良いようだ。
それを裏付ける証拠に国の一般会計税収が大幅に増加しているそうだ。財務省が発表した2022年度の一般会計決算概要によると、国の税収は前年度比6.1%増の71.1兆円だった。3年連続で過去最高を更新したそうだ。企業業績が回復して法人税収が膨らんだほか、歴史的な物価高で消費税収が増えた。賃上げの動きが広がったことにより、所得税収も伸びているようだ。
自民党の世耕参院幹事長は先日の記者会見で、物価高を踏まえた経済対策の裏付けとなる令和5年度補正予算案の規模について「少なくとも15兆円、できれば20兆円の対策が必要だ」と述べたそうだ。現在景気が良い筈だが、更に経済対策として最大20兆円の補正予算が必要と主張するとは、選挙対策としか思われない。国の借金が1200兆円を越えると言うのに、日本の将来を考えていない。2023.10.07(犬賀 大好ー952)
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