今年のノーベル平和賞が2人のジャーナリスト、フィリピンのマリア・レッサさんとロシアのドミトリー・ムラトフさんに決まった。授賞の理由は、世界各地で表現の自由が脅かされ、言論が脅かされているという危機感を背景に、強権的な政権に批判的な姿勢を続ける二人が選ばれたのだ。
共産党一党独裁の中国では、インターネットなどで8日夜ノーベル平和賞の受賞者に関する速報記事が流れたが、間もなく削除されたそうだ。中国当局が、強権下でも表現の自由を守るため努力をしたとノーベル賞委員会が評価した報道を当然ながら不適切だと判断したのだ。
このような他国の出来事を知り、日本は報道の自由がある平和な国と思っているが、どうも感覚が麻痺しているようにも思える。
国際ジャーナリストNGOの国境なき記者団は今年4月に「世界報道自由度ランキング」の2021年版を発表している。世界180か国と地域のメディア報道の状況について、メディアの独立性、多様性、透明性、自主規制、インフラ、法規制などの側面から客観的な計算式により数値化された指標に基づいたランキングである。これによれば日本は71位で決して自由度が高くは無いのだ。
アメリカやイギリス、フランスといった先進国は、その時代情勢によって10位代から40位代の中間よりやや上位を推移している。また、中国や北朝鮮、ベトナム、キューバといった社会主義諸国のランキングは170位代前後を推移し、常に最下位レベルである。
日本では、民主党政権時代に先進国並みに順位が上がったことがあったそうだが、自民党政権では順位を下げ、一昨年に成立した特定秘密保護法の成立が日本の順位下落に拍車をかけたようだ。
現在、中国やロシアに比べれば日本はかなり報道の自由があると思い込んでいるが、世界的に見ると報道が結構制限されているのだ。第2次世界大戦時には報道規制がひどく、大本営発表を信じ込んでいた当時の日本国民の愚かさを嘆いていたが、とんでもない思い違いなのだ。
日本の動き、世界の動きを報道によってのみ知る国民はそこから以外の事実を知ることが出来ず、大本営発表がすべて実情と思い込むのは当然なのだ。現在でも報道の自由があると信ずること自体が既に麻痺しているのだ。
安倍首相がメディア対策に躍起になっていたことは知られており、新聞・テレビなどマスメディア幹部との会食を頻繁に行い、NHK経営委員人事では安倍首相と思想的に近いとされる人物などを送り込んでいたことは有名である。会食が即圧力をかけていたことにはならないだろうが、人情で忖度する雰囲気は出来上がる。
森友学園問題や桜を見る会では官僚の忖度が問題となったが、前述の会合自体を各社が報道しないところを勘ぐれば、十分忖度する雰囲気が出来あがったことを伺わせる。報道の自由が脅かされていることを感じさせない戦略が最高の報道規制だ。2021.10.13(犬賀 大好ー754)
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