今年1-3月の名目GDPは、年率換算で約572兆円になり、2024年末には600兆円に達する見込みだそうだ。そこで2023年の名目GDP成長率は5%近くまで上昇し、バブル期の1991年以来の高い伸び率になると予想されている。しかし、一見経済規模が大きくなっても円安の影響が大きく、物価上昇が進んでいるだけで、日本が豊かになった訳ではない。
2022年におけるGDPの第1位は米国、続いて中国、日本、ドイツと続くが、米国や中国が圧倒的に大きく、日本は米国の1/5、中国の1/4の規模であり、日本を含む第3位以下はドングリの背比べ状態だ。2010年に日本を抜いた中国は日本の4倍超でもはや背中すら見えない状況だ。
さて、かっては世界第2位を誇っていた日本もドル換算での名目GDPが2023年にドイツを下回って4位に転落する見通しであることが国際通貨基金(IMF)の予測で分かったそうだ。円安の影響でドルベースで目減りしたことやドイツの高い物価上昇が主な要因だ。これは一時的な現象ではなく、経済の長期的な低迷の表れとの指摘もあり、日本の国際的影響力の低下などにつながる恐れもあるとのことだ。
日本の名目GDPは戦後、ドイツを抜き、長らく米国に次ぐ世界2位だったが、バブル崩壊後に低成長が続き、失われた30年と言われている。製造業は高度成長期の日本の中心産業であった。しかし、1970年代から伸びが鈍化し、1990年代からは衰退した。世界は情報の時代と変わったにもかかわらず、日本は経済政策も社会体制も変えなかった。そのため新しい産業は成長できず、また今日の貿易赤字や異例の円安につながっている。異次元金融緩和で景気回復を促したが産業構造の変化は乏しく、日本経済は「失われた30年」から「失われた40年」に突入しそうである。
現在の日本を支えているのは産業面では自動車と電子機器と言われている。日本の産業が成長しない原因の一つは、国内での市場争いに主眼が置かれ、国際的な競争をしていないからだとの指摘がある。世界は電気自動車に置き換わろうとしている流れに乗り遅れているのはこのためと言う訳である。電子機器に関しても日本はハード面では世界一流になっているが、ソフト面ですなわち情報面では遅れをとっている。
また、産業面ばかりでなく、日本の大学は世界のトップ10には出てこない。日本トップの東京大学が世界で23位、アジアで11位にランクされているだけである。その他の大学はより低迷気味で、こういう現実を知っている有識者、学会関係者は多いはずだが、懸念は持っていても改善のための具体策には至らない。
政府は、昨年5月に「国際卓越研究大学法」を成立させた。国際的に卓越した研究成果を出せる研究力があること等によって、大学を選別し研究資金を提供するようだが、成果は資金だけではなく、研究者の自由さ等にも関り、簡単ではない。
世界はどんどん変化している。この変化に追随する体制が日本にあるだろうか心配になる。2023.11.01(犬賀 大好ー958)
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