小林政広監督の映画が、仙台で上映されるということで、観てきた。
11月23日、仙台桜井薬局セントラルホールにて、カナザワ映画祭全国巡業の一環ということである。
私が、観光課時代、気仙沼コンベンションビューロー協議会という組織を立ち上げて、企画課長という肩書で仕事し、各種大会などの誘致、業務支援を行ったなかで、フィルムコミッションとして、映画撮影の現地支援も行っていた。小林監督の「気仙沼伝説」についても、その一環で支援、対応したものである。
ロケハンはすでに終わった段階で関わったようにも記憶するが、ロケ地の選定にもずいぶんと関わったというか、ロケ先との仲介交渉も行ったようにも記憶する。2006年の制作ということは11年前であるが、記憶もあいまいになっている。
観光課は、前後2回、最初は5年間、2度目は9年間、市役所生活35年のうち計14年を過ごしているが、最初の出だしが、TBS、木下プロダクションのドラマ撮影対応で、前後、かなりの数のテレビ、映画対応はこなしてきた。どれが、どの時だったか、記憶がミックスされて分からなくなっていたりもする。
この映画では、エキストラで出演もした。気仙沼演劇塾うを座の子どももふたり、主人公の子ども時代という重要な役どころで出演したり、大人のスタッフも、セリフ付きの役を割り振られたりしている。
主人公の自宅という設定の、鹿折地区大浦の民家は、東日本大震災ですべて流され失われた場所だ。
映画に写り込んだ気仙沼のあらかたの場所は、ほとんどすべて津波を被って流されている。
この映画は、震災前の気仙沼が残された貴重な映像、ということにもなっている。
さて、この映画は、映画祭のチラシによれば、
「風光明媚な気仙沼の港町を舞台に、ちょっとワケあり中年男女のラブストーリーをユーモアとサスペンスで彩る大人のためのファンタジー、2006年に製作されながら、ごく一部の機会をのぞき通常公開されることのなかった幻の作品を今回特別上映。今は失われた気仙沼の風景が美しい。」
ということである。
ところで、いま、中年といえば何歳くらいを指すのだろうか?
主演の一方の杉本哲太氏は、当時でも十分に中年だと思うが、女優の鈴木京香さんは、当時、中年というイメージではなかったな。実際、今回の映像でも、溌剌としたむしろボーイッシュな姿は、若者でしかない。鈴木京香のイメージは、「君の名は」以降おしとやかな、みたいなイメージが強いと思うが、この映画では、手足も長く、てきぱきとさっさと歩いたり走ったりのカッコいい女性である。チラシの表現は違和感がある。
でも、まあ、よく考えてみると、中年というのはあのくらいの年代なのか。
61歳の私が、自分は、まだ中年くらいだろう、などと思っている方がおかしいのかもしれない。その昔は、40歳代で初老だったらしいし。
この映画は、撮影後間もなく、気仙沼コンベンションビューロー協議会が事務局を務めて開催された気仙沼映画祭において上映されたきり、いわゆるお蔵入りとなっており、ほとんど上映される機会がなかったようである。
気仙沼映画祭は、小林監督の作品を集めた映画祭で、言ってみれば、私がプロデューサー兼ディレクターで、舞台監督も兼任しており、舞台袖からちらちらと観てはいたが、考えてみると真正面からしっかり観たのは初めてだったかもしれない。
実は、撮影当時から、どうも、サスペンスという部分がしっくりきていなかった。もともとの脚本は別の方で、現場で監督がかなり手直しはされたようだが、もともとの企画には監督は関わっていないはずである。海の底に眠る財宝の宝探しの部分である。
チラシに言う、ユーモアとサスペンスの、ユーモアの部分は、問題ない。昔の無声映画めいた白黒画面や手書きの字幕で遊んだり、コミカルな悪役であったり、楽しませていただいた。
サスペンスの部分は、まあ、それはそれとして、最低限に抑えこんで、むしろ、人間をきちんと描くというか、鈴木京香と杉本哲太の関係性や、鈴木一真らとのからみ、倍賞美津子のお母さんと国村隼の関係、岸部一徳の悪役ぶり、そして、また、なんと言っても、香川照之の変な神父様。鈴木京香さんも、背筋の伸びた溌剌とした魅力的な人間に描かれている。小林監督の作品らしい優れた人間のドラマであると思う。
テーマ曲は海潮音(みしおね)。気仙沼市青龍寺の住職工藤霊龍の作曲。気仙沼の夏祭り、みなとまつりの打ち囃子でも、伝統的な演目に交えて演じられる曲であるが、水越けいこが歌ったバージョンが使われている。
鈴木京香が、風が吹いて波立つ海水浴場お伊勢浜の突端のお伊勢崎にすくっと立った姿のバックにこの曲が流れる。たいへんに魅力的なシーンになっている。
気仙沼のひとびとに、もちろん、エキストラで出演しためんめんも含め、この映画は是非、観てほしいものである。震災前の気仙沼がたっぷりと写り込んでいるものでもある。
そうだな、当時の気仙沼コンベンションビューロー協議会常務理事・故小野寺暁一さんのご家族は、仙台にお出でになっていた。気仙沼演劇塾うを座の故菅野則夫さんのご家族にもぜひ、観てほしい。
あらためて、気仙沼において上映する機会は、ぜひとも、作りたいものだと思う。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます