ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

なかったことのように

2013-02-22 22:49:21 | 嫌いだ嫌いだ
なにも
なかったことのように
なにごとも
なかったかのように

気楽に楽しく
前向きに明るく

人間そうして生きるのが何よりのこと

ぐっすりと寝て
毎朝起きだすにも
気楽に楽しく
前向きに明るく

わたしはだれも失うことがなかった
あの日には

直前の3月3日に
父を病気で亡くしたばかりで
そのことでは
深く喪失した思い
はなかった
倒れてから老人ホームで長く過ごし
ベッドと車いすのうえで過ごした後に
亡くなって
ごく自然に向こうへ行った
ことの然るべき成り行きで
向こうに渡って行った
そう思っていた
喪失した思いはない
そのように感じていた

その数年前に
肺の病気で母を失い
母の思いは知らず
こちらは至極たんたんと
母を送った
大人になれば
だれも経験する
ものごとの自然な成り行きで
向こうに渡って行った

そうだ
多くのひとが亡くなった
多くの家が失われた

私の父は
私の母は
そのこととは関わりなく
死んだ

ひとが死ぬのは
ありふれた日常
日常の出来事として
私の父は死んだ
数年前に
私の母は死んだ

ありふれた日常として

ひとが死んでも
生き延びるひとがいる
いくらたくさんのひとが死んでも
生き延びたひとからはまたひとが生まれて
死んだひとの空隙を埋める
また同じように
ひとが生きる

どんな大惨事があって
どんな悲劇があっても
生き延びたひとから
またひとは生まれる

そして
ダンスを踊る

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