ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

喪失    霧笛128号から

2019-01-26 11:40:16 | 2015年4月以降の詩

僕の生きている時代は

千代に八千代に

続くわけではない

巌の

さざれ石となりゆくほどの時も経過することがない

 

天から落ちた天女の羽衣を拾うことがあっても

ひとときの夢

うつつではあっても夢

天女は再び月の世界へ舞い戻る

あでやかにきらびやかな舞を舞い踊り

あくまでも静かに音もなく舞い踊り

あるいは冷たい悪魔の微笑を浮かべて舞い踊り

天使のやさしげな微笑を浮かべて舞い踊り

怜悧なまなざしで僕を見通し

天の高みへと舞い上がる

 

ペンキで海岸の砂と松を描いてお仕舞い

とは行かず

涼しげな風が吹き渡り

葉擦れの音と

浪の音が響き

 

ほんとうのことは

だれかがどこかで語っているかもしれない

僕が語ることのできるのは

ああそれは良かった

目を奪われるように美しかった

しかしそれはいっときの夢のように消えた

 

淡い経験と喪失のあわいに


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