ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

現在を楽しむこと 霧笛第134号から

2020-08-07 22:04:18 | 2015年4月以降の詩
社会学者見田宗介は「現代社会はどこに向かうかー高原の見晴らしを切り開くこと」(岩波新書)において、新しい世界を創造するための3つの公準を示す

「…新しい世界を創造する時のわれわれの実質的な公準は、次の三つであるように思われる。
 第一にpositive(ポジティヴ)。肯定的であるということ。
 第二にdiverse(ダイヴァース)。多様であること。
 第三にconsummatory(コンサマトリー)。現在を楽しむということ。」(152ページ)

新しい世界
新しい世界?

古い世界 アンシャンレジームはすべて逆転していて
第壱にnegative(ネガティヴ)。否定的であること。
第弐にhomogeneous(ホモジーニアス)。均質であること。
第参にinstrumental(インストゥルメンタル)。手段的であること。
となるのだろうか

手段的であること
現在を楽しまないこと
現在を未来に楽しむためのつらい準備の時期とのみ見なすこと。
終わりのない競争
終わりのない受験戦争
終わりのない就職活動
終わりのない出世競争
際限のない利潤追求
止むことのない成長
皆が一様に駆り立てられる
一つの尺度に追い立てられる
ネガティヴホモジーニアスインストゥルメンタル
落ちこぼれないように必死にしがみつく
落ちこぼれたら人生お終い

なのかな?
一生落第生として終わる
のかな?
ほんとうかな?

ほんとうは
落ちこぼれたっていいんじゃないか?

ポジティブダイヴァースコンサマトリー
肯定的で人それぞれで現在を楽しむこと
みんな違ってみんな良い
人は生まれてから死ぬまでみんな成長する
みんな成長する体力が衰えたって知恵は蓄えられる
ひとはみんなそれぞれの尺度で成長する
それぞれの場所でその場所の尺度で成長する
それぞれの成長を楽しむ
透明なグローバルな均一の尺度は要らない
世の中全体は成長などしない
座標軸はみんな任意の方向を向いている
みんな違ってみんな良い

マネーの成長なんていらない
マネーはいつでも手段でしかない
マネーを信じすぎるな
マネーがマネーを産むそれはファクトだろうが同時に幻影だ
そんな世界は要らない

俺は
そんな世界は要らない
そんな現在は否定する
そんな現在は楽しむことができない

見田はこんなことも言う

「肯定的であるということは、現在あるものを肯定するということではない。現在無いもの、真に肯定的なものを、ラディカルに、積極的に、つくりだしていく、ということである。その中で桎梏となるもの、妨害となるもの、制約となるものがあれば、権力であれ、システムであれ、この真に肯定的なものをこそ力とし、根拠地として、打破し、のりこえていくということである。」(153ページ)

否定を内在した肯定である
肯定するための否定である
未来を肯定するための現在の一部否定である

人間存在は否定を内在した肯定である
人間の意識は否定を内在した肯定である
私はそんなものとして
現在を楽しむ

個別の企業も成長する
世の中に必要なモノとサービスを提供できれば
個別の企業は存続し成長すらできる
世の中が変われば必要なモノとサービスも変わる
個別の企業は時に衰退し寿命を迎える
個別の企業は役割を終えて時に清算され時に倒産する
企業の成長は社会全体の成長とは別のものだ
世の中全体は成長などしない

世の中全体の成長など要らない


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