ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

岡山市学校図書館問題研究会編 ブックトーク入門 教育資料出版会

2015-09-08 00:11:40 | エッセイ

 副題は、「子どもが本を好きになるためには」。1986年の初版。手元にあるのは、本吉図書館の蔵書で、99年の第10刷。

 この本は、日本で初めて「ブックトークの思想と技術を紹介した」本ということになるようである。

 

 「ブックトークとは、あるテーマにしたがって、何冊かの本を順序だてて紹介することである。もともとアメリカから入ってきた図書館の用語であり、アメリカ、カナダ、ドイツ、ソ連などの学校図書館では、日常的に行われているようである。ブックトークの目的は、読書意欲をよびおこすことにあり、ストーリーテリング(おはなし)や読みきかせなどとともに、図書館の重要な働きの一つとなっている。…(中略)…ブックトークは、ブックトーク自体を楽しむのではなく、聞き手を読む気にさせることによってその目的を達成する。」(12ページ)

 

 岡山県は学校司書を先駆的に配置してきた県のようであり、正規の職員、非正規も含めてのようであるが、当時70パーセントを超える学校に配置されていたとのことである。これは、現在でも、恐らくトップクラスの配置率となるのではないだろうか。

 さて、中にこんな記述もあった。

 

 「「図書館によく行く生徒は、…(中略)…一風変わった子が多いですね。」と言われたこともある。そんなとき私は「図書館の主に似るんでしょう。」と笑って答える。「変わっている」というのは、誉め言葉ではないのだろうが、私はそう言われるのが嫌いじゃない。図書館は、もともと自由で個性が大事にされる場である。付和雷同しない子どもがはじき出される傾向のある昨今、とくに子ども一人ひとりを大切にしたいと願っている。「変わった子ども」おおいに結構、大歓迎である。」(29ページ)

 

 社会の中の、ひとつの居場所としての図書館の役割はある。狭い意味での現実の世界、身の回りのいつも一緒にいる人々の中での価値観、それらは重要だし大切にしなければならないわけだが、それだけではない、ということ。歴史と地理の両面で広い世界があるということ、また別の世界、複数の観方があるということ、そこに気づくことのできる場所が図書館であるということ。そこに図書館の大きな意義がある、とつねづね考えている。もちろん、私が独創的にそう言っているとかではない。一般に言われていることだ。

 さて、この本には、実例も多数載っている。もはや30年も前の本だが、役に立つ。分かりやすい。また、岡山県の現場の司書の皆さんが、取り組んだ事例の紹介でもあり、われわれ地域の現場で仕事している人間にとって、勇気づけられる本であることも間違いがない。

 昨年、仙台での研修でブックトークを学んで、図書館を職場とする人間としては、こんなこともやってみたいなとは思っていたところである。(県職員の講師の方、もともと教員のようであるが、講義全体もだし、ブックトーク自体もずいぶんと面白く、実演されていた。)どれ、近いうちにやってみようか。


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