ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

フジコ・ヘミング絵・石津ちひろ文 ねことワルツを 福音館2022

2023-07-04 15:59:44 | エッセイ
 フジコ・ヘミングとは何者か?ロシア系スウェーデン人の画家・建築家を父とし、日本人のピアニストを母にもつ、ピアニストである。いま、『La Campanella』というアルバムを聴きながら書いている。有名な音楽家であるので、ここで私が紹介するまでもない。ただ、ウィキペディアを見ると、16歳で右耳の聴力を失い、一時、両耳の聴力を失っていた時期もあり、経済的にも苦難の時代が長かったようである。父の影響で絵を得意とするという。
 石津さんは、5月12日早朝NHKの「ラジオ深夜便・人生のみちしるべ」に出演され、この絵本を紹介された。
 放送の際には、震災後、絵本・童話作家のなかがわちひろさんらとともに「チヒローズ」と名乗り、気仙沼市に何度もおいでいただき、小泉小学校などを訪問し、子どもたちと交流されたことなども触れていただいた。教室の黒板に「あしたのあたしはあたらしいあたし」の詩を掲げ読んでいただいたが、この詩は、震災後の子どもたちにあしたへの希望を灯していただいたというべきであろう。
 また、この『ねことワルツを』について、はじめ石津さんが、ねこの詩を書いて、それに合わせてフジコ氏が絵を描くという企画であったので、書き上げた詩を預けていたが、お忙しいなか、なかなか取りかかってもらえなかった。世のコロナ禍で外での活動ができなくなり、家に籠もってようやく描いていただき、出版にこぎ着けたのだとおっしゃる。しかし、それですぐそのまま印刷に廻したかというとそうではなくて、その絵をもらって見ると、その絵に深く動かされて、その絵に合わせて言葉を書き直さざるを得なくなったとおっしゃる。もういちど手元で全面的に詩を書き直された。丁寧に手間をかけ、時間をかけて、あるべき作品の完成に取り組まれたということである。
 絵本を開いて、冒頭は「どこのこねこ?」

「この ねこ どこの こねこ?
このこたちは
ひろい うちゅうの
ちいさな ほしの
ちいさな くにの
ちいさな まちで
おもいのままに
いきている
じゆうきままな
こねこたち!」

 石津さんらしい言葉遊びに満ちた珠玉の作品である。
 表題作の「ねことワルツを」は、「パパとさいごのワルツをおどる」という哀しく美しい作品であるが、それらの詩と、フジコ・ヘミングの(デッサン的にはヘタウマ、ではあるのかもしれないが)美しい色彩の水彩画は、実際に絵本を手に取って鑑賞していただきたい。
 気仙沼図書館にも蔵書あり、はじめ、妻が本棚で見つけ借りて読んだ。私は自分のものにしたくて表紙だけはちらりと見ていたが、別に買い求めて、妻とともに繰り返しページを開いている。
 と、ちょうどここで、『La Campanella』のアルバム1枚が終了した。











最新の画像もっと見る

コメントを投稿