蜜柑のつぶやき ~演出家の独り言~

NPO法人劇空間夢幻工房の演出家/青木由里の日々の呟き。脚本執筆・役者・ワークショップ講師も兼業する舞台人日記♪

劇空間夢幻工房 創立25周年記念公演「ISHIN version.2024」

NPO法人劇空間夢幻工房 創立25周年記念公演
タイトル 『ISHIN ~狼たちは最果てに~ version.2024』
脚本・演出 青木由里
出演 青木賢治/栗生みな/村松沙理亜/清水まなぶ/井田亜彩実/導星ゆな 他

日時 2022年9月8日(日)11:00~/15:30~
会場 飯山市文化交流館 なちゅら 大ホール
チケット予約フォーム:https://www.quartet-online.net/ticket/ishin2024

皆さまへ感謝を込めて晴れやかに開催‼
どうぞお楽しみに‼

市民劇場例会

2012年03月12日 16時51分10秒 | 日記
昨夜は、MAを休み市民劇場の例会に行かせてもらった。

観劇したのは、劇団民芸の作品

 静かな落日-広津家三代-
 作=吉永仁郎 演出=高橋清祐
(キャスト)
 広津和郎(作家):伊藤孝雄
 広津桃子(和郎の娘):樫山文枝
 他

1949年に起きた戦後最大の冤罪事件「松川事件」に
ペン一本で挑んだ広津和郎と
病身の和郎に寄り添い支えつづけた一人娘の桃子の
父と娘とのおかしくせつない家族のきずなを描いた作品。

祖父・広津柳浪と父・和郎、娘・桃子の作家三代のおかしな家族。
父と娘を結ぶ不器用な愛情をベースに
和郎の友人・志賀直哉と宇野浩二との男の友情を描きながら
家族のあり方、人間の生き方、そして人が真実にむかう姿勢を浮かび上がらせる―
 (以上「劇団民芸」HPから抜粋転載)

劇中、広津氏を形容する言葉

  忍耐強く、執念深く、みだりに悲観もせず、楽観もせず…

という言葉が印象に残った。

松川事件とは…

1949年(昭和24年)に福島県の国鉄東北本線で起きた列車往来妨害事件。
下山事件、三鷹事件と並び、第二次世界大戦後の
「国鉄三大ミステリー事件」の1つと言われており
容疑者が逮捕されたものの、その後の裁判で全員が無罪となり
現在に至るまで犯人は不明の事件。

小説家である広津氏は、ある日届いた一冊の本を読み
「この文章に嘘はない」と直感。
この本は、獄中から無実を訴える被告の文集『真実は壁を透して』だった。
既に60歳を越えた広津氏だったが
「無実の人を死刑にさせるわけにはいかない」と
専門外の裁判批判に挑み、無罪を勝ち取った。

  その一冊の本のどんな表現から直感したんだろう?

素朴な疑問が湧き、調べてみたところ
下記のような見解に出会った。

広田和郎には、論証的な批判にむかう前提に、人間とはどう感じ考え、どう行動をとるものなのかという文学者の目がありました。また、ことばを生業にしてきた和郎にとって、具体的な人間の暮らしを無視した判決文は説得力のない空文でした。とくに目につくのは、物的・状況証拠がまったくないのに対して、〝しかし、だからと言って、被告が……しなかったとは言われない〟という言い回しでした。そして再び「『軍の権威』の前にみんながおしになった時代」をくり返してはならない、という歴史に対する強い責任がありました。和郎は「何よりも先ず、正しい道理の通る国にしよう、この我らの国を」と筆書きしています。

これだけを読むと、正義感が強く
押しの強い人間のようにも受け取れるけど
広田氏のそれまでの生き方は全く間逆のものだった。

「私が文学に引かれ文学をやっているのは、私という人間の弱さのためである」

と述べ、大政治家の強心臓に対して文学者の心臓は弱く
トルストイもドストエフスキーも心臓が弱いがゆえに
人類の犯すあらゆる非人間性に我慢がならなくなって反逆したのであると論じ
おしつけがましさや無理、不自然を嫌ったとか。

娘の桃子さんが最も愛した父・和郎さんの言葉は

  明日は死ぬ、しかし今日は生きている、つまり今日に死はない
  すなわち死なないと思って人間は生きているのである

当たり前のことのようだけど
その当たり前のことを改めて考え
文章にしたり言葉にするのが作家なのかもしれない。


舞台観劇後は

  広田氏が松川事件に向き合った過程を
  もっと観たかった

と思ったが、湧き出た疑問のおかげで
調べる気になり、知ることが出来たのだから
こういう切り取り方もあり、なのでしょう。

作品の提出の仕方も手法も多種多様

  何を選び、どう提出するか…

再考する機会を与えてくれた舞台でした。

映らない出来事

2012年03月12日 16時03分39秒 | 日記
震災から昨日で一年…
一夜明けた今日は、昨日までの震災関連番組が
殆ど画面から消えた。

人間の特技に

  忘却

というのがある。

苦しみや悲しみ、怒りなど
苦痛に感じる出来事や感情も
時と共に薄れ、徐々に忘れていく。
負の感情は忘れられるなら忘れたほうがいいし
忘れたほうが生きるのに楽な出来事もある。

けど、忘れてはならない出来事もあるんだよね。
その点で、報道番組はとても重要だと思うし
内容も充分吟味して放映して頂きたいと思う。

ただ…

画面に映らない、あるいは
映しきれない出来事もある。

大きな出来事が優先され
それより小さな出来事は
どうしても小さな取り上げ方になってしまう。

震災の被災地は東北だけではない。
長野県栄村もそうだし、千葉や茨城も大きな被害を受けた地域がある。
また、震災後、温泉地で源泉が枯れたり
お湯が噴き出したりという現象が出て
湯が出ない温泉地では観光客の足が遠のき
経営に大きな支障が出始めている。
原因は地震による地殻変動の可能性が高いようだが
本格的な解明はこれからだそうだ。

目に触れない出来事があることを想像する

  想像力

って大切だよね

つい目の前に見えている出来事だけに囚われがちだから―