もうだいぶ前になりますが、文芸春秋の記事を何度か紹介したことがありました。
表紙に赤字で総力特集「麻生自民VS小沢民主」を掲載した昨年の11月号ですが、日野原先生の「誰でも百歳まで生きられる」や東京大学の渡辺先生の「CO2が世界を救う」などがあり、小生は感激してこのブログで紹介しました。
それから文芸春秋も何度か新しい号が出ているのですが、どういう訳か?わが家のトイレには、先ほどの11月号がずっと置いてあるのです。
そして、昨日、朝の用事を済まそうとして、11月号を手にしたのですが、「パラパラ」とめくっていましたら「素敵などろぼうたち」というページが目に入ってきたのです。
俳優の「あさのあつこ」さんが書いた「おとなの絵本」の紹介なのですが、その紹介文が愉快で紹介している「絵本」の良さが「ビンビン」と伝わってきました。
紹介文は、「みなさん、こんにちわ、あさのです。」で、はじまり「実は、一週間ほど砂漠の国に冒険に行って来ました」とありましたので、いったい何を紹介するのかと思っていたのですが、いやいや「やるもの」ですね。その紹介文が面白くて引き込まれてしまいました。
紹介している絵本は、最初が「すてきな 三にんぐみ」(作・トミーアンゲラー 訳・今江祥智 偕成社)という本です。
その内容を転記しますと・・・
あらわれでたのは、
くろマントに、くろい ぼうしの さんにんぐみ。
それはそれは こわーい、どろぼうさまの おでかけだ。
おどしの どうぐは みっつ。
ひとつ ラッパじゅう。
ふたつ こしょう・ふきつけ。
そして みっつめは、まっかな おおまさかり。
よるになったら やまを おり、
さて、 えものは おらんかな・・・・・・。
この さんにんぐみに であったら、
ごふじんは きを うしない、
しっかりものでも きもを つぶし、
いぬなんか いちもくさん・・・・・・。
というものですが、あさのさんは、ここで次にように評しています。
「どうです。ここまで読んだだけで、何だか楽しくなるでしょう。目だけしかわからない山高帽とマントのどろぼうたちをじっくり見つめて下さい。そこはべたべたした甘さも悪人面の醜悪さもありません。落ち着いた暗めの青と黒を基調としたページからは、何とも不思議な雰囲気が立ち上がってきます。(黒ってこんなにも美しい色だったのですねえ。)ええ、そうなんです。この本には、子ども相手だからという安易さも、どろぼうを糾弾する(例えば、最後にはどろぼうたちが改心したりやっつけられたりする。そんなつまらない結末を用意することです。)ちっぽけで下品な常識や道徳観も微塵もありません。かわりに、そこはかとない上質のユーモアと独特の哲学が漂います。」
「訳の妙に舌を巻くのはもちろんですが、作者アンゲラー自身の思考や発想に、わたしなどはただ、ただ圧倒されてしまうのです。
すてきな三にんぐみは、どこまですてきでした。最後のページ、最後の言葉に胸がきゅっとしめつけられました。
ほら ごらん。
まるで さんにんに そっくりだ。
悠久の時を感じます。人に一生を越えて流れゆく時間。
物語のすごさをも、また感じます。泥棒の自覚もないままに、涼しい顔をしてわたしたちの税金を泥棒している輩にこの三にんぐみを見習え!といってやりたいわたしです。」
となるのですが、やはり現物を読んでみないと実感がわきませんね。
残りの二冊は、
「チンパンジーとさかなどろぼう」(作・ジョン・キラカ 訳・若林ひとみ 岩波書店)・・・タンザニアの絵本
「かさどろぼう」(作・絵・シビル・ウエッタシンハ 訳・猪熊葉子 徳間書店)・・・スリランカの絵本
いずれも「どろぼう」がテーマになっていますが、おおらかに大胆に「悪」をも許せるような人間の大きさ、広さを持て!と言いたいようです。
今日は「おとなの絵本」についてでした。