久しぶりに文芸春秋を読みましたら、またまた、あさのあつこさんの素敵なエッセー?が載っていました。
前にもあさのさんのこのコーナーを紹介したことがあるのですが、この2009年7月号も素敵な内容でした。
「へびくんって素敵!」というタイトルでしたので、今度は、どんな内容のものかな?と思ったのですが、イヤー、楽しいものでした。
あさのさんの暖かさと「ピリィ!」と辛みが効いた心情が柔らかく、そして、辛辣に響いてきて、料理で言えば「美味しい!美味しい!」を連発したくなる味でした。
「そんことより、中身を教えろ!」ですか?
『みなさん、こんにちは。あさのです。
3週間ほど前から、軒下に燕が出入りするようになりました。毎年のことなのですが、彼ら彼女らがやってくると、ああ夏が始まるんだと思います。
季節を何に感じるか、どう感じるかは人それぞれ、十人十色、感性の個性の問題なのでしょう。私の場合は、夏の始まりは燕の到来、終わりは甲子園の決勝戦です。ああ始まるんだと、ああ終わるんだの間に、高校球児は暑くて熱い戦いを経験し、燕は二度、卵を産み、十羽以上の雛を一人前、いや、一鳥前に育て上げます。人間が一人前になる基準は曖昧ですが、燕の場合ははっきりしています。
自分で餌を獲れること。何千キロに及ぶ過酷な旅に耐えられること、その二つです。人は大人の範疇となる年齢になったとき、一人前でなくとも(けっこう多いですよね。半人前成人とか三分の一人前大人)、よほどの事情がない限り生命の危機に陥ることはないでしょう。でも、燕にとって夏が終わるまでに一鳥前になれなかったとしたら・・・・・、それはそのままま死を意味します。
時々、渡り鳥ってなぜ、あんな過酷な旅を選択するのだろうかと、大いなる自然に挑むように海を渡るのだろうかと考えてしまいます。
さてさて、燕の大敵の一つが蛇です。せっかくの・・・・』
と始まる文章ですが、いかがですか?何気ない生活場面を語っていますが、人生に対する優しさと辛さが「せつせつ」と伝わって来ませんか。しかも、この文章は、絵本解説の始まりみたいな部分ですから、ここからがもっと面白いのです。
では、その内容を!と言いたいところですが、全部で三ページしかないものですので、是非、文芸春情を読んで楽しんで下さい。
テーマが「大人の絵本舘」ですから、蛇にまつわる絵本を解説したものですが、最初の「へびくんのおさんぽ」などは、ネズミ、アリ、トカゲ、カタツムリなど蛇にとって餌となるような動物が水たまりを渡るために蛇の背中の上を渡るというもののようです。
あさのさんは、燕のような渡り鳥たちより過酷な人間社会の有り様を絵本の蛇のように「ほんわり優しい世界にしたい!のではなく、「傷つき、裏切り、時に殺し合いながら」など、実生活は厳しいけれども、絵本の蛇のような優しさが少しでもあれば・・・と願っているように感じました。
最後に、三冊目の「たすけて」という絵本の紹介で、あさのさんは、アメリカを「架空の敵を作り戦争を始めた超大国」とみているようですが、「戦争はどんな理由があれ、絶対反対」という姿勢が表れており、小生も多いに共感できるものでした。