「ギリシアで一羽の蝶が羽ばたくと、フロリダで竜巻が起きる」なんて言葉があります。地名はルーマニアだったり竜巻がハリケーンだったりしますが、たしかにあり得ることです。ただ大きな問題は、その因果関係を人間の能力ではきちんと証明することができないことでしょう。「一羽の蝶 → 竜巻」と偉そうに言っている人に、では「ハリケーンカトリーナの原因はどこのどの蝶か?」と聞いたらそのことはよくわかります(それがわからないからこそカオス、なのでしょうが)。
【ただいま読書中】
『5分でたのしむ数学50話』エアハルト・ベーレンツ 著、 鈴木直 訳、 岩波書店、2007年(08年5刷)、2200円(税別)
まずはクイズから。数字を三つ思い浮かべて並べてください。たとえばそれが「123」だったとしましょう。それではそれをもう1回繰り返して6桁の数字をつくってください。「123」は「123123」になります。ではその6桁の数字を「7」「11」「13」の中からどれでも好きな数で割ってください。答えは、「割り切れる」かあるいは「割り切れずに余りがでる」か、のどちらかになるはずです。ではその結果がどうなったか、私があててみましょう。「割り切れた」。合ってます?
こんな感じで、ドイツの新聞に毎週連載されていた短い数学コラムがまとめられています。対象は一般人。ですから非常に読みやすくなっていますが、その分書く方にはとんでもない難しさが要求されています。「簡潔でわかりやすい」と「数学的正確さ」とを両立させなきゃいけないのですから。
巨大な素数の話では、2003年の時点で最大の素数は400万桁。それを本に印刷したら800ページの大型本になる、という話が紹介されています。ちなみに2006年9月には980万桁の素数が発見されています。もし印刷したら…… ちなみに巨大素数を探索するインターネットサイトがあるそうです。メルセンヌ素数(2の累乗から1を引いた数で素数)を検証するためにネットワーク(「メルセンヌ・ネットワーク」という名前だそうです)上のコンピュータが手分けして約数調べをおこなうそうで、setiを私は思い出します。これだと、幸運によって自分のコンピュータが最終結果を出した場合に、そのメルセンヌ素数の発見者として専門数学者よりも有名になるチャンスが得られます(ついでですが、「2の累乗+1」の素数はフェルマー素数)。
18世紀にオイラーによって発見された「最も美しい公式」の話も興味深いものです。オイラーがフリードリヒ大王に仕える宮廷数学者だった、というところにまず「時代(歴史)」を感じますが、式自体が「0=1+(eのiπ乗)」という、まったく異なった目的のための数を組み合わせることで成り立っているところに、本当に数学の美しさを感じることができます。式の意味は全然わかりませんが。
どうしても納得がいかないのが「ヤギ問題」。あるゲーム番組で、最終戦の勝者に3つのドアから一つを選んでもらいます。そのうち一つのドアの向こうには豪華賞品、残りの二つはハズレのしるしにヤギがいます。つまり当たる確率は1/3。でどれかを回答者が選択すると、司会者は残りの二つのうちの一つのドアを開けてそこにヤギがいることを見せます。で、ここからが問題。回答者はそこで選択をやり直すことが許されるのですが、選択を変えた方が得か損か、ここで数学者で意見が分かれてしまったのです。散々議論して得られた数学者の結論は「無条件に選択を変える(もう一つのドアを選ぶ)方が、当選確率は2/3になる」というものでした。素人には直感的には受け入れ難い結論です。だって当選確率は、選択を変更してもしなくても1/3から1/2になっているはずなのですから。
ここで確率論やベイズの公式が持ち出されていますが、難しいことを言わなくても、実際に1万人くらい集めて二つのグループに分けてやってみたらわかりそうですが。
あ、なんかわかった気がしました。要するに「必ず選択を変える」ことで「最初にハズレを引いた人(2/3)」が全員当選になる(そのかわり、最初にアタリを引いた人は全員外れになる)、ということで当選確率が2/3になる、ということで良いのかな。で「絶対選択を変えないグループ」は当たる確率は1/3のまま。「選択を変える」と「選択を変えない」が同数だったら、混ぜ合わせて「賞品をゲットできる確率」は「2/3 + 1/3」を2で割るのだから「1/2」。あ、ちゃんと最初の予定通りの当選確率になりました。解決。
著者は、この連載のアイデアを得たときすぐに150のテーマに関して詳細な概要を記した企画書を作成したそうです。私がもし自分の得意な分野で何かを書くとしたら……もちろん150くらいのテーマはすぐにひねり出せますが、ひねり出すにはそれなりの時間がかかるでしょうし、それぞれについて面白く書けるか、といえば自信がありません。ともかく、ある程度数学についての素養があれば、さらっと読めて楽しめる本、と言えます。
【ただいま読書中】
『5分でたのしむ数学50話』エアハルト・ベーレンツ 著、 鈴木直 訳、 岩波書店、2007年(08年5刷)、2200円(税別)
まずはクイズから。数字を三つ思い浮かべて並べてください。たとえばそれが「123」だったとしましょう。それではそれをもう1回繰り返して6桁の数字をつくってください。「123」は「123123」になります。ではその6桁の数字を「7」「11」「13」の中からどれでも好きな数で割ってください。答えは、「割り切れる」かあるいは「割り切れずに余りがでる」か、のどちらかになるはずです。ではその結果がどうなったか、私があててみましょう。「割り切れた」。合ってます?
こんな感じで、ドイツの新聞に毎週連載されていた短い数学コラムがまとめられています。対象は一般人。ですから非常に読みやすくなっていますが、その分書く方にはとんでもない難しさが要求されています。「簡潔でわかりやすい」と「数学的正確さ」とを両立させなきゃいけないのですから。
巨大な素数の話では、2003年の時点で最大の素数は400万桁。それを本に印刷したら800ページの大型本になる、という話が紹介されています。ちなみに2006年9月には980万桁の素数が発見されています。もし印刷したら…… ちなみに巨大素数を探索するインターネットサイトがあるそうです。メルセンヌ素数(2の累乗から1を引いた数で素数)を検証するためにネットワーク(「メルセンヌ・ネットワーク」という名前だそうです)上のコンピュータが手分けして約数調べをおこなうそうで、setiを私は思い出します。これだと、幸運によって自分のコンピュータが最終結果を出した場合に、そのメルセンヌ素数の発見者として専門数学者よりも有名になるチャンスが得られます(ついでですが、「2の累乗+1」の素数はフェルマー素数)。
18世紀にオイラーによって発見された「最も美しい公式」の話も興味深いものです。オイラーがフリードリヒ大王に仕える宮廷数学者だった、というところにまず「時代(歴史)」を感じますが、式自体が「0=1+(eのiπ乗)」という、まったく異なった目的のための数を組み合わせることで成り立っているところに、本当に数学の美しさを感じることができます。式の意味は全然わかりませんが。
どうしても納得がいかないのが「ヤギ問題」。あるゲーム番組で、最終戦の勝者に3つのドアから一つを選んでもらいます。そのうち一つのドアの向こうには豪華賞品、残りの二つはハズレのしるしにヤギがいます。つまり当たる確率は1/3。でどれかを回答者が選択すると、司会者は残りの二つのうちの一つのドアを開けてそこにヤギがいることを見せます。で、ここからが問題。回答者はそこで選択をやり直すことが許されるのですが、選択を変えた方が得か損か、ここで数学者で意見が分かれてしまったのです。散々議論して得られた数学者の結論は「無条件に選択を変える(もう一つのドアを選ぶ)方が、当選確率は2/3になる」というものでした。素人には直感的には受け入れ難い結論です。だって当選確率は、選択を変更してもしなくても1/3から1/2になっているはずなのですから。
ここで確率論やベイズの公式が持ち出されていますが、難しいことを言わなくても、実際に1万人くらい集めて二つのグループに分けてやってみたらわかりそうですが。
あ、なんかわかった気がしました。要するに「必ず選択を変える」ことで「最初にハズレを引いた人(2/3)」が全員当選になる(そのかわり、最初にアタリを引いた人は全員外れになる)、ということで当選確率が2/3になる、ということで良いのかな。で「絶対選択を変えないグループ」は当たる確率は1/3のまま。「選択を変える」と「選択を変えない」が同数だったら、混ぜ合わせて「賞品をゲットできる確率」は「2/3 + 1/3」を2で割るのだから「1/2」。あ、ちゃんと最初の予定通りの当選確率になりました。解決。
著者は、この連載のアイデアを得たときすぐに150のテーマに関して詳細な概要を記した企画書を作成したそうです。私がもし自分の得意な分野で何かを書くとしたら……もちろん150くらいのテーマはすぐにひねり出せますが、ひねり出すにはそれなりの時間がかかるでしょうし、それぞれについて面白く書けるか、といえば自信がありません。ともかく、ある程度数学についての素養があれば、さらっと読めて楽しめる本、と言えます。