【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

あけましておめでとうございます

2011-01-01 17:45:48 | Weblog
本年もよろしくおつきあいくださいませ。昨年末に“予告”をしていた作品から、本年の読書日記を始めます。

【ただいま読書中】『カンタベリー物語(上)』チョーサー 著、 桝井迪夫 訳、 岩波文庫、1973年(95年改版)、700円(税別)

先日読んだ『イン ──INN イギリスの宿屋のはなし』でも取り上げられていたサザークのイン陣羽織屋(ザ・タバード)に集った29人の巡礼たち。階級も職業もさまざまですが、目的は一つ、カンタベリーへの巡礼。暇つぶしと親睦のために、各人が宿からカンタベリーへの道中、往路に2つ復路に2つの話をし、一番素晴らしい話をした人にこの宿で夕食をご馳走しよう、と宿の主人が誘いをかけます。審判と案内役は宿の主人です。
『饗宴』のビッグ・バージョンのようですね。『饗宴』とは違って順番は籤で決まりましたが。さて、トップバッターは騎士です。では、始まり始まり~ぃ。ちょーん。
アテネの王セシウス公の妹エミリー姫を巡る二人の騎士の恋の争いです。トップバッターという緊張からか、ややぎこちない語り口ですが、ちゃんと盛り上げるところは盛り上げるように努力の跡が見えます。一騎打ちだったのが王の裁定で話が無理矢理拡張されて100人対100人の対決になってしまいます。
せっかく気高い騎士の話が終わって、宿の主人が次は僧に話をさせようとしていると、酔っぱらった粉屋が「気高い話ならあっしにまかせろい」と割り込んできます。彼が語るのは、大工の若い女房が大工の目の前で上手く浮気をするわ、言い寄ってきた男にお尻にキスをさせるわ、の下品なお話です。
それを聞かされた大工が、粉屋に対するお返しの話を続けます。こちらの主人公はもちろん粉屋。粉ひきを請け負って作業中に粉をちゃっかりネコババする粉屋が、大学の学生を上手く誤魔化して粉を抜き取ったとほくほくしていたら、その代わりに自分の娘と女房を盗まれてしまう、という色と欲のお話です。
未完の話が一つ挟まって、本巻の最後は高等弁護士が語る高尚な物語。お話自体は、聖なる女性の数奇な運命とキリスト教の神への賛美ですが、チョーサー自身への自己言及があるのが笑えます。


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