【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

節電

2011-05-24 19:02:20 | Weblog

 この夏、もしも節電運動でエアコンの稼働量が相当減少したら、それによって東京のヒートアイランド化が少しでも改善する、なんてことは期待できないでしょうか。コジェネなどをフル稼働させたらかえって悪化するかもしれませんが。

【ただいま読書中】『さまよえる湖』スウェン・ヘディン 著、 岩村忍 訳、 角川文庫、1968年(1994年15刷)、480円(税別)

 著者は1934年に内乱が続くウイグル地区で、「ロブ湖」探険に出発します。1896年に第一回の探険を行なってから38年ぶりのことでした。自動車と馬車、カヌーで一行は出発します。しかし、食べることが楽しみだったのでしょうね、よく料理の話題が登場します。ある日の夕食は「パンとバター、チーズ付きの野菜スープ、リソール(魚か鳥の挽肉にパン粉と鶏卵を混ぜた衣を着せて油で炒めた料理)、馬鈴薯、菓子付きコーヒー」となかなか豪華です。中国人のコックはトルコ料理も作るし、羊の肉をスウェーデン料理に調理することもできるそうですが……スウェーデンに羊がいるんです?
 読みやすい文章ですし、薄い文庫本ですから、一気に読めます。
 「楼蘭」「シルクロード(本書では「絹の道」)」などのとても古い時代の話も登場します。「そうか、あのへんか」と私はなにかわかった気分で呟きます。
 著者がたどり着いたロブ湖は、その時には、縦123km、幅は最大76kmの塩水湖でした(ちなみに、琵琶湖は縦が63.49km、最大幅は22.8km)。そこを手こぎのカヌーで探険して回るのですから、大変です。ツバメ号のような帆船だったらちょっとは楽かな? 塩水湖ですから、かつての湖の跡には塩が堆積していて簡単に確認することができます。蒸発が激しいため、新しい湖底はだんだん塩で埋められていきます。しかし古い湖底(の跡)は激しい風で浸食されます。そのため湖は「さまよう」ことになるのです。
 ……もしかして、日本にやってくる黄砂の一部は、「さまよえる湖」の一部?

 子供時代にこの話(ジュブナイル版)を読んで衝撃を受けたことを改めて思い出しました。当時私には「探検家の熱情」「異国の不思議な風景」「エキゾチックな食物」などに強い印象を受けましたが、今感じるのは「よくもあんなに危ない時代に探険をしたものだ」です。もちろん著者もそれはわかっていて、ライフル銃で武装はしていますが、それでも本気の強盗団や軍閥などに襲われたらひとたまりもないでしょう。そもそも「権力(中央政府)」の側だってあやしいのですから。こうして過去を見てみると、探検家って人たちは、「地理上の探険」だけではなくて「時代の探険」もやっているのでしょうか。