【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

2012-05-01 19:32:24 | Weblog

 絶滅危惧種のことはよく言われます。ところで進化論の発想でいけば、生態系にどこか隙間ができたら既存の種や新種がそこを埋めるはずです。で、「新種の(発見ではなくて)発生」は現在の地球ではどのくらい行なわれているのでしょう? 「破壊(絶滅)」だけではなくて「創造」もあるからこそ、「命」はここまでつながってきているはずなのですよね。

【ただいま読書中】『世界で最も美しい10の数学パズル』マーセル・ダネージ 著、 寺嶋英志 訳、 青土社、2006年、2400円(税別)

 本書は「パズルと数学の関係に関する解説本」です。単に「パズル」を楽しむのだったら、パズル本をお読みください。と著者は言ってます。
目次:「スフィンクスの謎かけ」「川渡りのパズル」「ウサギのパズル」「ケーニヒスベルグの橋」「4色問題」「ハノイの塔のパズル」「地球から追い出せのパズル」「うそつきのパラドクス」「洛書の魔法陣」「クレタの迷宮」

 有名な「スフィンクスの謎かけ」はなぞなぞですが、これが「パズル」と「(学校での)数学の問題」との違いを教えてくれます。学校の問題を解くには「演繹法」「帰納法」が主に使われますが、スフィンクスのなぞを解くには「洞察的思考」が必要です。隠されている問題の本質を、直感的に把握する行為(または結果)です。
 次の川渡りも有名ですね。旅人が、狼と山羊とキャベツを連れていて、川を渡るのに船には自分ともう一匹(または一個)しか乗せられない(どれだけでかいキャベツなんだ?)。狼と山羊、山羊とキャベツを一緒にして目を離すとどちらも後者が食べられてしまう。さて……というパズルです。そのバリエーションで、3組の夫婦も紹介されています。こちらは、食うか食われるかではなくて「女性の評判(夫が不在の時に他の男と一緒にいたら悪い噂が立つ)」がパズルの条件となっています。ここで話は順列組み合わせに。いやあ「3!」なんて、なつかしいなあ。
 そうそう、著者は「パズルを楽しみたいなら、他のパズルブックを読め」なんて言っていますが、実は各章ごとに派生問題というか応用問題というか、“そのジャンルのパズル”がいくつも集められて紹介されています。ですから、小難しい解説なんかどうでもいい、と主張する読者でも、パズルブックとして楽しむことは可能です。
 「ウサギのパズル」では、フィボナッチ数列が登場します。著者はそろそろ本気を出し始めました。私が大好きな素数の話も登場します。「ケーニヒスベルグの橋」では位相幾何学。オイラーはこの橋の地図をグラフ化して証明しました。それは19世紀後半の位相幾何学繁栄の地盤固めだったのです。
 「ハノイの塔」は、わが家にもあります。円柱が3本、円盤が7枚のかわいらしいものですが、本書によるとオリジナルでは円盤がなんと64枚! 最小手順は2の64乗マイナス1回です。ということで、このパズルから「無限」の概念に話は広がっていきます。
 本書は「パズル」を入り口にした「数学という迷宮」へと読者を誘い込む素敵な罠です。「算数」とは違った「数学」の魅力の一部を本書で知り、その後迷宮の奥にどんどん踏みこんでいく“勇者”が多からんことを祈ります。