【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

ロスフード

2013-08-18 07:30:58 | Weblog

 食べ残しはともかく、当然のように「これは食べられない」と廃棄している食料の大きな部分は本当は食べられるものなんだそうです。テレビでちらっと見て影響を受けたものですから、この前はピーマンの中身(種の部分)を捨てずにそのまま食べてみました。別に問題はなかったので、案外これはいけるかも、なんて思っています。
 つぎは、ゆで卵の殻……って、これはさすがに口の中がじゃりじゃりになりそうですね。せっかくのカルシウムなのに、もったいないなあ。

【ただいま読書中】『北の農民ヴァイキング ──実力と友情の社会』熊野聰 著、 平凡社、1983年、1800円

 著者はかつてオスロに留学し、ノルウェー人の持つ「個人主義」がいわゆる「西欧の個人主義」とは一線を画するものであることを実感します。
 西暦800年代、西欧にはヴァイキングの嵐が吹き荒れていました。彼らは海賊や略奪をするだけではなくて植民も行い、イングランドもデンマーク系ヴァイキングのデイン人に大半を支配されていました。ヴァイキングの活動は本当に広範で、東はカスピ海や黒海、西はアイスランド・グリーンランド・ヴィーンランド(アメリカ大陸のニュー・ファンドランド)にまで活動領域が及んでいました。そういったヴァイキングの一人、北ノルウェー人のオウッタルの記録では、彼は、豪族・農民・探検者・捕鯨者・交易者、そしてなによりヴァイキングでした。
 北欧の農業では、大麦・オート麦・小麦なども作られましたが、中心は牧畜でした。いきおい農業の中心は牧草作りとなります。家畜は夏の間は山に放牧され、冬は家畜小屋に入れられました。飼料は不足するのが常ですから、冬の前に家畜は越冬用と用に分けられました。麦芽からはエール(ビール)が作られましたが、アルコール飲料としてだけではなくて、航海用の保存飲料として用いられ壊血病予防にも役立ちました。
 アイスランド植民は、通例の人口増による移動だけではなくて、ノルウェーで最初の王権が成立した時期であることから、社会変動によって豪族的農民が王権と衝突した〔土地不足によって旧来の粗放的農業が困難になった)ことが原因、と著者は考えています。「王」と言っても、統一的な権力を持っているわけではありません。「国民」は散在する農民たちで、それぞれの地方ごとに集会を開いてはトラブルの解決などをしていました。したがって「王」も各地方を回って自分が王であることを知らしめなければなりません。
 公権力がなければ、自分の身は自分で守らなければなりません。しかし個人の力には限界があります。そこで頼りになるのが、血族と姻族と友情でした。さらに、復讐のシステムも整備されていました。
 経済活動の基本は「贈与」です。気前の良さはすなわち美徳でした。復讐のシステムにさえ贈与が組み込まれています。そして、贈与が期待できない場合(たとえば航海の途中、異国で水や食料の補給が必要となったとき)には当然のように略奪が行われます。これが「ヴァイキング」です。当然「税金」などという概念は成立さえしません。日本人として一番わかりやすいのは「贈与をベースとして形成されている義理と人情の世界」かな。私としてはこれがイメージとしては一番しっくりきました。
 こういった歴史的背景を持つ北欧の「個人主義」が、ひと味違ったものになるのは当然でしょう。最近「北欧のシステム」が福祉や教育や家具など様々な分野で注目されているようですが、歴史を無視して形だけ真似てもたぶん日本に有益なことはあまり起きないような気がします。