【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

好きこそものの上手?

2013-08-28 06:52:23 | Weblog

 大体の男子はセックスが好きなはずですが、大体の男子はセックスが上手とは言えません。

【ただいま読書中】『食と健康の話はなぜ嘘が多いのか』林洋 著、 重松洋 監修、日経プレミアシリーズ、2013年、850円(税別)

 「栄養」とは「生命」そのものです。体を構成しそれを動かすために必要なものすべてですから。ところが「栄養」について論じる人で「解剖学」「生理学」「生化学」などをまるっきり無視している人がけっこういます。そういった人たちが大声で述べる「嘘」にだまされないためには、まず人体の基本を勉強する必要があります、ということで、本書は書かれました。
 「栄養」と言えばなぜか「食品」に注目が集まります。しかし、食品を食べてもその「栄養素」がすべて消化吸収されるわけではありません。吸収されても形が変わるものもあります。さらに、健康な時と病気の時でそれらの機能は変化します。
 まずは消化器官の紹介です。最初は「口」。ちょっと意外ですが、説明を聞くとたしかに口も立派な消化器官でした。「十二指腸はトルコのイスタンブール」「小腸はアリスもびっくりのワンダーランド」なんて楽しい説明が大腸まで続きます。
 そしていよいよ「栄養」。
 まずは糖質です。糖質のコントロールはけっこう厳密に行われています。もしも極端に糖質を制限したりすると、肝臓から貯蔵してある糖が放出されます。筋肉は糖だけではなくて中性脂肪も“燃料”として使うことができます。しかし脂肪が不完全燃焼すると有害なケトン体ができてしまいます。
 さて次は脂肪。最近はすっかり“嫌われ者”ですが、体内では重要な働きをしています。面白いのは、一度消化吸収されても、体内の脂肪組織で脂肪に再合成されるときには大体元の姿に復元されることです。つまり、豚の脂はまた豚の脂、鳥の脂はまた鳥の脂。コレステロールは酢酸から合成されます。「体によいお酢」から「体に悪いコレステロール」が合成されるとは、人体はなかなか味なことをやってます。こうやって大体のものは合成が可能ですが、体内で合成できない必須脂肪酸(リノール酸とαリノレン酸)はどうしても食べる必要があります。
 蛋白質は、一度アミノ酸までバラバラにされてしまいます。そこから必要な蛋白質を合成しますから、豚を食べたら豚に、鳥を食べたら鳥になるわけではありません。コラーゲンを食べてもそのままもう一度コラーゲンが再合成されるわけでもありません。また、必須アミノ酸は食べる必要があります。ただし「アミノ酸のサプリ」は、普通に食事できる人には不必要です。それが本当に必要なのは、飢餓状態の人。また「酵素」を食べる人もいますが、これはナンセンス。だって胃腸で一度アミノ酸になっちゃうんですもの。
 ということで話は「サプリメント」へ。サプリで多いのは「微量栄養素」ですが、なぜか人はこの「微量」という言葉で魔法にかかってしまいます。「微量だけど、必要な栄養素。足りなくなったら大変だ、サプリで補充しよう」と。微量栄養素の代表はビタミンですが、ビタミンが足りなくなるのは「足りなくなる食生活」に根本的な問題があるはず。あるいは「食べても吸収できない体の異常」かもしれません。だったら、生活を変えるか医者にかかるべきで、それらより先にサプリに飛びつくのはやめた方がよいです。
 さらに微量栄養素の“問題点”は、「不足したら障害が生じる」こととともに「過剰に摂取したらその分健康になる、わけではない」ことです。そこを勘違いして過量摂取をして健康障害を起こす人がときにいるそうです。また、「個人差」があることも忘れてはいけません。「隣のおじさんに良かったもの」が「自分に良いもの」である保証はないのです。さらに「栄養素同士の組み合わせ」の問題もあります。単純に「○○を食べたら健康になる」なんてことはないのです。
 本書は“攻撃の書”ではありませんから「○○健康法は間違っている」なんてことは主張しません。ただ「自分の体について、もっと知ろうよ」と言っているだけです。無知ゆえに根拠のない“デマ”を信じて損をするのは、つまらないですから。