【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

青くない空

2016-01-03 07:52:45 | Weblog

 「雲一つなく晴れ上がった空の色は、何色?」と聞かれたら、私は反射的に「青色」と答えたくなります。で、それが正しいかどうか、実際に空を見ました。確かに「青」ではありますが、よくよく見るとのっぺりとした均一の色ではなくていろんな色調が混じっているようにも見えます。さらに、ただの青色だとしても、湿度や気温によって、「青色」の彩度や明度は違うのではないか、と思えます(厳密に確認はしていませんが)。
 さらに上記の質問には「時間」の指定がありません。すると夜中だったら「黒色」? だけど月や星があったらただの黒色とは言えないでしょう。さらに夕方や朝方だったら、空は何色?

【ただいま読書中】『古楽の音律』東川清一 編、春秋社、2001年、4200円(税別)

 ピュタゴラス音階では「1オクターブ」が「53」に分割されてそこに適当な間隔で「レ」とか「ミ」が配置されます。純正律音階も「53」分割ですが、「レ」とか「ミ」の位置がピュタゴラス音階と違っています。18世紀に愛用されていた純正律音階は「55」分割です。そして平均的調整律では「48」分割です。このレベルの分割値は「コンマ値」と呼ばれますが、もっと正確に音律計算をする場合には「1200(あるいはそれ以上の)」分割の「セント値」を計算する場合もあるそうです。「ドレミファ……」と指折るだけでは、指の数が足りません。
 ところで、平然と「分割」と書かれていますが、これは等差数列でしたっけ?それとも等比数列? オクターブは倍音ですから音階は等比数列、と私は理解していたのですが、本書の図を見るとまるで等差数列になっているように見えます。おそらくこれは、読者の理解しやすいように、ということで図解されているのでしょうが。
 「1:2」とか「2:3」ときれいに分割しての音程のところで登場するのが「モノコルド」という一本弦の楽器です。弦を駒で分割して音を出す……って、これは先日読んだ『算数宇宙の冒険』に登場した「モノコード」ですね。音楽と数学は、密接に関係しているようです。
 さて、鍵盤楽器では純正律には対応できない、と恐ろしいことが本書には書かれています。だけど、バイオリンや人の声では対応可能。では鍵盤楽器はどうすれば良いか、と言えば、鍵の数を増やすのがすぐに思いつく対応策です。それは16~17世紀に試されました。たとえばヨアン・アルベルト・バンは「完全鍵盤」のチェンバロを考案しました。1オクターブの鍵盤で18の音が出せるようになっていますが、これ、人間の指の数が足りないのではないかしら。結局「やはり1オクターブには12の音で」ということになり、そこで採用されたのが「平均律」です。そもそも「53」または「55」コンマを12の鍵に割り振ろうと思えば、どうしてもその間隔は「不等」になります。それをなるべくバランス良く、どの和音を出してもひどい不協和音になりにくいように割り振っていくのです。
 そして、バッハの「平均律クラヴィーア」です。このタイトルにバッハは「平均律(die gleichschwebende Temperatur)」ではなくて「よく調整された(Wohltemperirte)」という言葉を使いました。これを「平均律」ではなくて「快適で我慢できる程度の和声で演奏できるような調律」という意味に解釈する学者がいることを著者は紹介しています。しかし「平均律クラヴィーア」では全24調の作品が登場します。すべての調を(どれも完璧ではないにしても)万遍なく演奏できるのはすなわち「平均律」ではないでしょうか。
 私自身は、平均律で育った人間なので、それ以外の調弦法で音を出されても、「和音」の善し悪しは感じることができたとしても、「曲」としてどうかをきちんと判断できる能力を欠いています(「日本人はrとlの区別がつかない」と似ているかな?)。ただ、「オクターブ」というものが摩訶不思議なものであることはなんとなく感じることができました。それと、この手の話題では「ピュタゴラス」がごく普通に登場するのが面白く感じられます。そのうちピュタゴラスについても少し読んでみようかと思っています。