俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

2015-08-06 09:35:35 | Weblog
 DDTという殺虫剤は様々な有害性があるとして、日本では1972年に製造販売が禁止された。危険な物を禁止することは良いことだろうが、メリットを考慮しないことは片手落ちだ。スリランカでは、それまで年間約250万人だったマラリア患者がDDT散布中は31人まで激減していたのに、禁止後僅か5年で年間250万人の状態に戻ってしまった。この事態にWHO(世界保健機関)は2006年にDDTの使用を再承認した。
 DDTの禁止が招いたのは更に危険な殺虫剤の使用とマラリア患者の激増だった。DDTに代わる安全な殺虫剤が開発されるまでDDTの使用はやむを得ないということだ。
 何であれメリットとデメリットがある。合成保存料は有害物だろうが、それによって食中毒が予防されている。手術は危険な治療方法だろうが、それによって助かる命がある。たとえ危険であろうともそれによって得られるメリットのほうが大きければそれに頼らざるを得ない。
 マスコミが紫外線の危険性を煽れば何も考えずに日焼け止めを塗りたくる。実証データがある訳ではないが、紫外線よりも日焼け止めクリームのほうが発癌性が高いのではないだろうか。少なくとも日照不足によるビタミンD欠乏症を招いていることは確実だ。
 化粧品に対する女性の無警戒ぶりには呆れる。多分、周囲の人も皆、長年使っているから不安を感じないのだろうが、薬品を塗りたくっていれば害があって当然だろう。カネボウの美白化粧品で多くの女性が白斑肌になったと報じられた時、私は全く驚かなかった。起こるべくして起こったと思ったからだ。多分氷山の一角だろう。
 検査数値が基準値を1ポイント上回るだけで薬を飲まされる。こんな治療は不要だろう。自覚症状があるか更に悪化する迄は、生活習慣病の危険性よりも薬の副作用のほうが怖い。
 巷ではメリットとデメリットを秤に掛けない議論が多い。危険性がすぐに禁止へと短絡的に飛躍する。公園の遊具は次々に撤去され、エスカレート上の歩行さえ咎められる。デメリットがあればすぐに禁止されるのが最近の風潮だ。メリットにも目を向ける必要がある。私は薬の有害性を散々指摘しているが緊急時の使用までは否定しない。試験などにおいて解熱剤や下痢止めを使うことは必要だろう。
 危険という警告に過剰反応すべきではない。何等かの必要性があるからそれは使われている。そもそも長所は短所でもあり得る。優しさは優柔不断であり勇敢さは無謀に通じる。善と悪でさえ多分DNAのように螺旋構造になっているのだろう。

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