俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

加工肉

2013-11-08 09:50:16 | Weblog
 偽装表示問題が拡大しつつある。マスコミは当初のように定義の曖昧な「鮮魚」で騒ぐことは無くなり、産地偽装などの本当の偽装について報じるようになった。しかし最近よく使われる「加工肉」は問題があり、こんな曖昧な言葉の乱用は鮮魚と同様、慎むべきだろう。そもそも我々は「加工していない」生肉など食べない。加工の度合いが異なる合成肉から成型肉まである程度正確に報じるべきであって、単純化し過ぎれば誤報になる。
 加工肉の説明で「牛脂注入」という言葉が使われているが正しい説明とは思えない。注射器で牛脂を注入するイメージがいかにも人工的で偽装らしい印象を与えるので意図的に使っているのだろうが、不正確だ。インジェクション加工と呼ばれるこの手法は赤身肉を霜降り肉に見せ掛けるために行われているが、加工肉の中で最も安い合成肉にも最も高い成型肉にも使われていない。牛脂とは旨みのエキスであり、注入以外に表面に貼り付けるという手法もあるらしい。
 合成肉とはクズ肉を固めた物でありステーキというよりはハンバーグに近いものだ。肉片に内臓や牛脂を混ぜて固めて主にサイコロステーキとして売られている。
 成型肉とは肉片を接合させた物だ。大きな肉片に小さな肉片を接合した物が高く、小さな肉片を幾つも接合した物は安い。この加工の問題点は小麦などの成分を含む結着剤が使われていることであり、多くは牛脂注入とは無関係だ。
 このように様々な加工肉があるのに一括りにして牛脂注入と扱うのは誤りだ。飲食業界の偽装を非難するのならマスコミも自らの「迎合と単純化」という偽装体質を改めるべきだろう。
 実は私は牛脂は非常に優れた「調味料」だと思っている。低ランクの牛肉を美味しくする素晴らしいテクニックだ。表示しなかったことは問題だが、この騒動で料理の技術が否定されるのなら本末転倒ではないだろうか。「料理」の料は素材を、理は技術を意味する。料ばかりを重視して理を認めないことは食文化に否定だとさえ思う。安くて美味しいということは1つの理想だろう。

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