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俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

再生力

2015-10-28 09:46:52 | Weblog
 ヒトデやイモリほどではないが人間にも再生力が備わっている。多少の怪我であれば自力で修復できる。胃で起こっていることはもっと凄い。胃酸が胃壁を溶かす以上のスピードで再生するからこそ胃が消化されずに済んでいる。まるで、右足が沈む前に左足を出す水上歩行術のような凄技だ。
 怪我が治るのは自然治癒力に依存する。医療にできることはその補助と一時凌ぎだけだ。切り傷であれば傷口を縫合して出血を防ぐ。あとは自然治癒力によって癒着することを待つ。骨折すれば骨を正しい位置に戻して固定する。やはり待つだけだ。
 関節痛であればしばらくは酷使を控える。この間、極力、鎮痛剤は使わないほうが良い。鎮痛剤は治療薬ではなく痛覚を麻痺させるだけだ。実際には傷んだ状態のままなのに痛まなければ傷が治ったと勘違いして通常通りに使って患部を悪化させかねない。鎮痛剤を使わない痛み止めもある。オフセット鎮痛と呼ばれている。これは現状よりも強い痛みを与えることによって現在の痛みを感じにくくさせる。いきなり42℃の湯に浸かれば熱く感じるが44℃の湯に入った後であれば熱く感じないのと同じ錯覚だ。より強い痛みを感じさせることによってそれまでの痛みを忘れさせる。勿論これは知覚上での錯覚であって治療効果は全く無い。この錯覚を利用した有害なマッサージもある。
 老人の慢性関節痛は怪我ではなく劣化だ。だから自然治癒力は働かない。それなのに藪医者は、鎮痛剤で痛みを和らげることを治療だと思い込んでいる。たとえ痛みが緩和されても関節は傷んだままだから劣化が進む。こんな偽医療は患者のためにならない。
 白髪を染めれば皮膚や毛髪を傷める。眼鏡を使えば水晶体の調節力が衰える。柔らかい物しか食べなければ咀嚼力が低下する。鎮痛剤もこれらと同じように、現在の快適さを求めることによって将来の不具合を招く。
 怪我や病気であれば治せるかも知れないが老化は治せない。そんな現実を認めないから対症療法に頼り続けて健康を害する。老化を誤魔化す薬は一時凌ぎに過ぎない。
 老人の関節痛に有効なのは鎮痛剤ではなくリハビリだ。関節の劣化は治らないが筋肉を鍛えれば関節の負担を軽減できる。筋力が弱いと外部の力が直接関節に掛かるが、筋肉と関節で力を分散させれば関節の負担が減る。かつて横綱千代の富士関は肩の脱臼癖を克服するために筋肉の鎧を身に纏った。野球では「投手の肩は使い減りする」と言われているが、使い減りするのは関節の軟骨だ。だから投げ込みよりも筋力トレーニングのほうが有効だ。それと同じように、関節に負担を掛けない水中ウォーキングなどによって筋肉を鍛えることが関節痛の対策として有効だろう。

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