俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

本性

2010-03-12 15:36:55 | Weblog
 人間に普遍的に備わっている性質を「本性」と呼ぶのは根本的に間違っている。それは人間の最も原始的な性質に過ぎない。
 人間の脳は多層構造になっている。一番奥には原始動物の脳があり、その上に爬虫類の脳、更に上に哺乳類の脳、そして一番上には人類の脳が乗っかっている。一番高尚な層に注目せず、一番低劣な部分を「本性」と呼んで一体どんな意味があるのだろうか。低次な脳ではなく高次な脳の最も優れた働きこそ「本性」の名に相応しい。
 優れた特性に注目せず愚劣な属性を根拠にして「人間なんて所詮こんなものだ」などとしたり顔で話す人は人間一般ではなく彼本人の愚劣性を証明しているに過ぎない。
 低レベルなものは普遍的に共有され得るが、高レベルなものは決して多くの人には共有されない独自のものとなる。例えば私は自分の「徳」を他者と共有しようとは思わない。私自身が磨き上げた私独自の徳でありこれこそが私の「本性」だ。
 人類に普遍的に共有される性質とされるものは最も低レベルなものに過ぎず、決して本質的な特性ではない。人類の素晴らしさはその可能性を最大限に生かした卓越した少数者によって体現され得る。最低レベルを本質と考えるのは誤りだ。

コメントを投稿