俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

同情

2010-03-12 15:53:21 | Weblog
 同情を賞賛する人は、実は同情心の乏しい人ではないだろうか。
 同情は非常に有害な感情だ。生きることを辛くさせる。自分一人が生きることでさえ辛い人が他人の不幸にまで同情すればこの世は不幸だらけと感じられ、「生きるに値しない」とさえ結論付けるのではないだろうか。
 同情心の強い人は深く傷付く。そんな現実を否定したくなる。現実から逃避して理念の世界に生きたくなってしまう。一方、同情心の乏しい人は傷付くことも無く、同情している自分を誇りに思う。私はこんなに優しいと感じて優越感を持つ。こんな人が同情を高尚な感情として褒め称えているのではないだろうか。
 高く評価されるべきなのは同情ではなく「共歓」だろう。「蛇でも相手が痛がると知っているから咬む」(ニーチェ)のに対して、他者の歓びを感じ取ることは高度な精神性を必要とする。少なくとも蛇にはできないことだ。単純に頻度を比較するなら、歓びよりも苦痛のほうが遥かに多く、人生は苦痛に満ちている。それだけに自分の歓びだけではなく他人の歓びまで共歓できれば人生はずっと歓びに満ちたものとなり得る。

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