俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

差別語

2015-09-05 10:22:59 | Weblog
 私は結構長い間、「ちょん」を朝鮮人を指す差別語だと思っていた。「バカチョンカメラ」は「馬鹿でも朝鮮人でも扱えるカメラ」というとんでもない言葉だと思い込んでいた。しかし改めて辞書を引いてみればそんな意味ではなかった。
 広辞苑に収録されている単語を拾ってみると、ちょん掛け、ちょん切る、ちょんの間、チョンボ、ちょん髷など「ちょっと」とか「小さい」といったニュアンスの言葉ばかりが並ぶ。朝鮮と関係のある言葉は1つも見つからない。どうやら誤った言い掛かりを真に受けた人が放送禁止用語に指定したのだろう。
 「チンコロ」は中国人に対する差別用語だと昔誰かから教えられたがそんな意味は無いようだ。差別用語と指摘されるとその単語を極力使わなくなるので全然検証できなくなる。こうやって差別語と濡れ衣を着せられた言葉が無際限に増殖する。
 昔「チンコロ姐ちゃん」という漫画があった。このチンコロはちんちくりんでコロコロという意味だったようだ。つまり小柄でグラマラスな女性、かつての流行語を使えば「トランジスタグラマー」という意味だろう。
 私は子供の頃から反対語という考え方に疑問を持っていた。座標軸の取り方を変えれば様々な反対語があり得るからだ。例えば「好き」の反対語は「嫌い」ではあるまい。心理的には「好き」と「嫌い」はかなり近い。むしろ「無関心」のほうが「好き」とは懸け離れた感情だ。
 屁理屈はさておき、先進国の反対語は何だろうか。後進国と言いたくなるが発展途上国と呼ぶのが正しいようだ。後進国は差別語になるらしい。しかしこんな変な言い替えをするのは日本語だけではないだろうか。
 最近「幻魔大戦 Rebirth」という漫画が出版された。「幻魔大戦」は、今年1月に亡くなったSF作家の平井和正氏の代表作と言われ、漫画家の石ノ森章太郎氏にとっても「サイボーグ009」と並ぶ代表作とされている。しかし平井氏も石ノ森氏も故人だ。どうやら昨年完結した「サイボーグ009 完結編」が予想以上に売れたことに味を占めた石森プロダクションのメンバーが勝手に改作しているものと思われる。ところが主要登場人物の名前が変更されていることには驚かされた。旧作ではサンボだった黒人少年がソニーに改名されていた。これは多分かつての「ちびくろサンボ」騒動の影響だろう。確かに「ちびくろ」は差別的な言葉だがサンボは問題無かろう。固有名詞まで原作者の意図を無視して変更されるとはとんでもない過剰反応だろう。「言葉狩り」は固有名詞にまで及んでいた。

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