俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

安全

2014-09-26 08:37:51 | Weblog
 「日本人とユダヤ人」でイザヤ・ベンダサン(山本七平氏)が「日本人は、安全と水は無料で手に入ると思いこんでいる」と指摘してから44年経った。今でも水と安全は非常に安く手に入る。
 中国は物価が安いと思っている人があるだろうが、安全な物は非常に高い。中国の金持は中国製品を避けて高価だが安全な日本製品を買うと言う。これでは日本に住むよりも日用品の価格が高くなってしまう。日本でなら水道水をガブ飲みできるが中国でそんなことはできない。わざわざ輸入品のミネラルウォーターを買わざるを得ない。
 自転車について面白い話を聞いたことがある。中国製の新品よりも、一旦、日本に輸出されて逆輸入された中古品のほうが安全と考えられているそうだ。日本の工業規格に従って作られた中古品のほうが、国内規格さえ満たすかどうか分からない新品よりもずっと安心だということだ。
 暑い夏の日に一泳ぎすることも大変だ。海も川も汚染されているしプールは芋を洗うような混雑ぶりだ(中国では「餃子のよう」と表現するらしい)。自宅にプールを作ればとてつもなく高く付く。
 治安も中国では高コストになる。犯罪率は高いし警察は頼りにならない。自分の身は自分で守らねばならないのだから住居の安全対策費はかなり高額になる。
 新幹線の安全性も日中で雲泥の差がある。仮に運賃が1/10であっても危険性が100倍であればそれを好ましいとは思えまい。
 中国では空気でさえタダではない。地域によっては外出のためのマスクが欠かせない。家庭では空気清浄機が必需品だ。これは空気を吸うことでさえ金が掛かるということだ。
 情報・娯楽費も高コストで危険が伴う。政府に統制されていない情報・娯楽を楽しむことは高コストであり、しかもいつ国家権力によって摘発されるか分からない。
 少なからぬ法律が日本では国民の安全を守るために定められているが、中国では憲法さえ無視されて共産党が恣意的にルールを定める。司法でさえ共産党の意のままになるのだから法律は総てザル法だ。無法地帯に住んでいるようなものだ。
 ビジネスも大変だ。役人は賄賂を求め支払わなければ様々な嫌がらせをする。しかし支払えば別の危険が待っている。その役人かその上司が失脚すれば贈賄罪に問われることになるだろう。
 中国の高額所得者の多くが外国に移住したいと考えるのも無理は無かろう。外国人は日本の自動販売機に驚くそうだ。誰も見張っていない自動販売機のが盗まれないことに彼らは驚愕する。イラクやシリアなどは論外だが、安全な日本に住んでいるということだけでその経済的メリットは大きい。

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