お片付けの途中ではありますが、めっちゃ面白いドラマを見つけたので紹介します。
Netflixで配信中の「クイーンズ・ギャンビット」(Netflixオリジナル)
これ、チェスの話です。しかも女性のチェスプレイヤーの話。
ウォルター・テヴィスの小説を基にしたドラマ。ウォルター・テヴィスは映画「ハスラー」や「地球に落ちてきた男」の原作者でもあります。
舞台は1950年代から60年代にかけて。主人公のベスは日本の団塊の世代とほぼ同世代かと思います。まだ米ソ冷戦の時代。
ベス・ハーモンは8歳で孤児になり、孤児院に引き取られます。そこで用務員のシャイベルさんからチェスを教えてもらい、天才的な才能を発揮して、世界的チェスプレイヤーになっていくというお話。
全7話のミニシリーズですが、途中でダレることなく最後まで突っ走ります。
もうね、のっけからズズズンと引き込まれて目が離せなくなります。映像も音楽も素晴らしい。何より、主人公のベスを演じるアニャ・テイラー=ジョイが素晴らしい。
彼女はほとんど笑わない。端正な顔立ちで、無口で無表情なチェスプレイヤーを好演しています。
60年代といえば、アメリカでもまだ女性の社会進出は少なく、女性のチェスプレイヤーは珍獣のように扱われていた時代です。
男性ばかりのチェスの世界でぐんぐんのし上がっていく彼女の姿は、女性にとっては痛快そのものですが、同時にそれは彼女が失ったものの大きさを反映してもいます。
彼女の生い立ちは悲惨で養子として引き取られた先でも不運は続きます。
でも、どんな境遇にあっても、ベスはチェスのことしか考えない。よくある天才肌です。
「64のマス目が世界のすべて。その中にいれば安全なの。自分の手で制御できる。先も読める。傷ついても自分の責任」とベスは新聞記者に言いますが、記者は「創造と心の闇は表裏一体、天才と狂気は紙一重」と、彼女を厳しく批評します。
ベスにチェスを教えた用務員のシャイベルさんは言います。
「才能の裏には代償がある。支払うものは何か、いい時がいつまで続くか?
胸に抱える怒りにも・・気をつけろ」
ベスには女性チェスプレイヤーであることの孤独と重圧がのしかかり、次第にアルコールに溺れ、自堕落な生活に陥りますが、再起を果たしてグランドマスターを目指します。
最終決戦の相手はロシアのボルコフ。最後の決戦シーンは鳥肌ものです。
彼女がぐんぐんのし上がっていくにつれて、彼女が打ち負かした男性たちも次第に彼女を応援し始めます。
力を尽くして挑戦すれば、運命はかならず開けてくる、というストーリーでもあり、特に今の世の中で存分に力を発揮できないでいる女性にこそ見てほしいドラマです。
チェスをテーマとした映画は他にも「ボビー・フィッシャーを探して」などいくつかありますが、これは出色の出来で後世に残るドラマになること間違いない。
私にとっても、今年のベスト1になりそうです。
小川洋子の小説「猫を抱いて象と泳ぐ」も私の大好きな作品で、チェスの棋譜の描写が実に細かく美しく描かれています。
興味のある人はこちらもぜひ。
チェスってどうやってプレイするのかも知らない私ですが、これを見て、チェスやってみたい、と思い始めています。