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ツタヤで借りてきたDVD最後の1本は
「ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ」(2016年米英合作)
1920~30年代に活躍したアメリカの若き天才作家トマス・ウルフ(通称トム)と、ヘミングウェイやスコット・フィッツジェラルドを生み出した天才編集者マックス・パーキンズの、実話に基づく物語。
トマス・ウルフをジュード・ロウ、編集者のマックスをコリン・ファースが演じている。しかも、トマス・ウルフの恋人役がニコール・キッドマンという豪華な顔ぶれ。
(原作はA・スコット・バーグ『名編集者パーキンズ』)
主演の二人がいい。
何しろ、コリン・ファースとジュード・ロウだもの。
実話の重みもあり、また、1920年代から30年代にかけて(大恐慌時代)のアメリカってこうだったのね、という時代背景もよくわかる。
フィッツジェラルドの「グレート・ギャッツビー」の旧タイトルが「ウェスト・エッグのトリマルキオ」だったとは。小さなトリビアだ。
マックスはこの例をあげて、タイトルがいかに大事か、読者目線で書くことが大事かをトムに教える。
作家というのは、ともすれば自らが書きたいことを書き、読者を置いてけぼりにする傾向があるけれど、天才的な作家でも、編集者の目から見たら、まだまだ未熟で、それを巧く導くのが編集者の仕事でもある。
でも、本当にこれでいいのか、作品をダメにしているのではないかと不安だ、ともマックスはもらす。
「失われしもの」(後に「天使よ故郷を見よ」に改題)の手書き原稿が、段ボール箱山盛り3箱分もありびっくり。トマス・ウルフはとにかく文章量が半端なかったみたいで、それをマックスは9万語も削除したという。
9万語といってもピンと来ないけど、日本語の原稿に直すとたぶん400字詰め原稿用紙で数百枚分といったところか。
そりゃすごいよ。
一方、
この映画、父と息子の物語でもある。
マックスには5人の娘がいるのだけど、実は彼は息子が欲しかった。
だから、若いトムに対するマックスの愛情は、父親のそれでもある。
編集者と作家という立場ながら、二人は妻も恋人も嫉妬するほど仕事にのめり込む。
トマス・ウルフの未熟さがまたいい。
才能あふれる若き小説家なのだが、非常に未熟で酒におぼれる。
彼を支えてきた年上の恋人(ニコール・キッドマン)もまたひどく不安定で自殺未遂をしたりする。
それを見守るマックスの常に冷静沈着な表情。
これはもう、コリン・ファースじゃないとね。
父と息子といえば、お約束の親子の確執。
息子は父親を乗り越えるべく、父親に反抗し、独立しなくてはいけない。
一人前の男になるために。
トムはマックスと訣別することになる。
でも、トムにはわかっていた。マックスがどれほど彼を大事に思い、愛情を注いでくれていたかを。
残念ながらトムの短い人生はアッという間に終わってしまうのだけど。
最後にトムはマックスに短い遺書を残す。
そこで、マックスは、家の中でも脱がなかった帽子を脱ぎ涙をぬぐう。
フィッルジェラルドの零落ぶりも描かれる。
「偉大なギャッツビー」は今も健在で、ハリウッドで映画化されてるよ、
と言ってあげたい。
作家って大変です。
心身すり減らして作品書いてもほとんど認められない。たいていは。
今はとくに本が売れない時代だから、たとえ才能があったとしても、
今すぐ売れる本を書けないなら、作家はいらない、という時代。
天才的編集者も天才作家も出にくい社会だと思う。特に日本は。
父と息子の話。
そして、
天才は天才を見抜く力を持つ、
という映画でもありました。
トマス・ウルフ、読んだことないから一度読んでみなくちゃ。
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