ないない島通信

「ポケットに愛と映画を!」改め。

祈りの幕が下りる時

2019-07-08 11:23:31 | 映画

 

(これは2018年の記事です)
久しぶりに日本映画を見ました。
阿部寛、けっこう好きなので。
「トリック」「テルマエ・ロマエ」「カラスの親指」「麒麟の翼」・・

今回は「麒麟の翼」と同じく、TVドラマ「新参者」の刑事、加賀恭一郎シリーズの完結編のようです。
今回は、加賀恭一郎のきわめて個人的な歴史がからんできて、彼がなぜ日本橋署に長年勤め続けてきたのかがわかるというもの。

で、率直な感想ですが、
「砂の器」と一緒じゃん!

途中で興ざめというか、大体、私「砂の器」が好きじゃないので、同じ路線だとしたら、やだなあ・・という感じでいたら、案の定・・でした。

ネット評などでは大方大絶賛! なので、
私の感想など無視してご覧になるといいかと思いますが。

日本的な悲壮感に満ちた悲劇にイマイチ共感を感じないタイプなのですね。
「砂の器」のあの悲劇的な音楽とかね。好きじゃない。

この作品は、松本清張の「砂の器」へのオマージュではないかという映画評がたくさんあって、さもありなんという感じですが。
それって、言ってみれば、松本清張が描いた昭和30年代の日本の悲惨な状況、ハンセン病への差別、貧困など、実は現代もさほど変わっていないのだ、という事を言いたかったのかしら。

でも、それにしては、親子の愛情がメインで、社会的な背景はイマイチ薄い気がします。
大体、簡単に人を殺しすぎるし(あの二人、一体何人殺した?)それでいて自分たちが被害者だと思いこんでいるその勘違い。
それを日本的な悲劇に仕立てあげるストーリー構成も好きじゃないです。

というわけで、私的にはイマイチな作品ではありましたが、阿部寛、好きなので、まあいっか。

久しぶりに日本の映画を見て、日本の映画ってわかりやすくていいなあ、と思った。
これって翻訳小説を読んだ後に、日本の小説を読むときに感じるわかりやすさに近いものがある。
日本語で書かれたもの、作られた映画は、やはりダイレクトに響きます。

翻訳モノ、英語字幕で見た映画は、どこか一枚薄いヴェールを通して観ているのかもしれない。ということにも気づきました。

もっと日本の映画観なくちゃって思った。

阿部寛が好きな方はどうぞ。

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紅き大魚の伝説

2019-07-05 10:12:03 | 映画

 

(これは2018年8月22日の記事です)
今日紹介するのは、中国のアニメ、

「紅き大魚の伝説」

中国のアニメってどんなもんだろうか、と好奇心で見てみました。
意外といい!

子どもの頃に「白蛇伝」というアニメを見ていたく感動した記憶があります。
「白蛇伝」は舞台は中国ですが日本のアニメです。

「紅き大魚の伝説」は純粋に中国で作られたアニメです。

ストーリーはシンプル。
主人公の少女チュンは人間界とは別の世界に棲んでいます。
16歳を迎えた時、チュンはイルカとなって人間界を訪れる(通過儀礼として)のですが、そこで危うく命を落としかけ、人間の少年に助けられます。しかし、少年はチュンを助けたために命を落としてしまいます。

そこでチュンは、天界の魂の番人の所にいき、自分の寿命と引き換えに少年を助けたいと申し出ます。少年は赤いイルカの姿となってチュンの前に現れるのですが、少年を助けたことで、村に災いが降りかかります・・

最後のシーンでナレーターがこう言います。
命は短い、いずれは死ぬ
せっかくなら少し大胆に 恋におちて
山を登って 夢を追って
そう 大胆なくらいがいい
天が命をくれたのは、奇跡を起こすため・・

(でもその代償も払うべし)

メッセージはとてもシンプル(悪くいえばベタ)。

でも、スケールが大きくて、映像が本当に美しい。
さすが孫悟空の国です。
これを見ると、日本の文化はどんだけ深く中国の影響を受けていることだろうかと気づかされます。

一方で、非常にジブリっぽい映像で、最初はジブリとコラボなのか、と思ったほど。
ストーリーもキャラクターも、ジブリそのままといってもいいくらい。
このアニメを制作した人たちは、ジブリでアニメーターをしていたようです。
ジブリの手法を学び、自分たちなりにアレンジして、新しい作品を生みだしたということでしょう。

どこか「千と千尋の神隠し」や「もののけ姫」を彷彿とさせるシーンもあります。でも、よくよく考えてみれば、日本の妖怪やもののけ等は、元は中国から日本に輸入された文化と日本固有の文化が混ざり合ったものだったわけで、互いに交流する中で新しいものを作りだしていくというのは、昔から行われてきたこと。こうしたことは、どうやっても止められない流れなのでしょう。

「スターウォーズ」だって日本の黒沢明監督作品に大いに触発されてできた映画です。国境を超えて影響しあい、より良いものを作っていく。そうして、互いに触発し影響しあって進化していくのでしょう。

中国のアニメもここまで進化したのか、と感動する声もあちこちで見受けられますが、日本のアニメーション業界で散々低賃金で働かされた結果、アニメーターたちがそのノウハウを身につけ、新しいものを生みだすのは時間の問題だったはず。

もう日本の独り勝ちは終わったのかもしれない。
うかうかしてると、どんどん世界に追い抜かれていく。
そんな気もします。

2時間を超える大作で、途中、少し退屈します。
それにストーリー展開が唐突で、よくわからない部分があったりしますが、追々修正されていくでしょう。
次に出てくるのは、とてつもない名作になる可能性があると思います。

ネットで予告編が出ているので見ていただければと思います。

https://www.youtube.com/watch?v=Bb6ic3P5od4

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僕だけがいない街

2019-07-03 10:34:46 | 映画

さて、タイムトラベルものアニメ、第三弾です。

「僕だけがいない街」

あまりメジャーじゃないけど面白かった。

(以下は2018年8月8日の記事です)
「時をかける少女」に続いて、やはりタイムスリップものアニメ「僕だけがいない街」を紹介します。

これ、私の日本語の生徒の一人、アメリカ人のAさんに勧められて見ました。日本のアニメは世界的に有名で、多くの外国人が日本語を始めるきっかけにもなっています。

原作は三部けい(さんべけい)の漫画。2014年に漫画大賞二位を獲得。その後、2016年にノベライズ化され、アニメになり実写映画化もされています。

タイムリープものとして、またサスペンスとしてよく出来ています。
アニメは全12話完結です。

29歳の藤沼悟は売れない漫画家ですが、「リバイバル」と自称している不思議な能力を持っています。何かの事件が起きる直前、タイムリープして同じ光景を二度見てしまうのです。

ある日、バイト先から戻ると自宅で母親が何者かに殺害されています。その犯人を捜し事件を未然に防ぐため、彼は18年前小学生だった時代にタイムスリップします。どうやら、18年前に悟の小学校で起きた連続少女殺人事件と母親の殺害事件は関係があるらしい。18年前の事件を未然に解決すれば、母親の死を防げるのではと悟は考えます。

こうして、悟は2回にわたり、18年前の小学生の時代にタイムリープし(外見は小学生、中身は29歳)殺人事件に巻き込まれるはずだった少女たちを未然に助けようとします。でも、なかなかうまくいかない。一度目は事件当日を回避して成功したかに見えたけれど、結局失敗。二度目のタイムリープでは殺害されるはずの少女を別の場所に匿い、何とか事件からは回避できたが、悟の命が危うくなる・・はたして真犯人は誰、そして母の命は救えるのか?

毎回20分ちょっとの短めの連作ですが目が離せず、最後まで一気に見てしまいました。

連続少女殺人事件というサスペンスもなかなかですが、さらに、親による虐待、シングルマザーやサイコパスなど現代的な問題も盛り込まれていて、見応えがあります。

犯人の意外性もあり、伏線も散りばめられていて、非常によく出来たストーリーです。

仲間の大切さ、少年時代のかけがえのなさは「グーニーズ」や「ストレンジャー・シングス」等に通じるものがあります。最後もバッドエンドでなくていい。

というわけで、日本のアニメもなかなか。
日本のドラマや映画ってイマイチ面白くないのよね、と私が言ったら、Aさんはアニメは面白いよ、と教えてくれたのでした。
外国人に日本の良さを教えてもらうこと、けっこう多いです。日本の作品を見直さねば。

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「君の名は。」・・再び

2019-07-01 10:51:51 | 映画

 

昨日、TVで見てしまいました。

「君の名は。」二回目。

で、気づいたことを少し。
先日も書きましたが、私、このアニメ好きじゃないです。

少女趣味でチャライから。
でも、アイデアは面白い。

基本的にキアヌ・リーブス主演の「イルマーレ」と同じですね。
タイムパラドックスをどう処理するかが見所かしら。

タイムトラベルもの大好きな私としては見逃せない映画ですが、何であんなにチャライのか??

前半1時間もかけて瀧とミツハの入れ替わりがお気楽なライトノベル風に描かれる。
ま、そこがいい、と若い人は言うんでしょうけど。セカイ系とかいうライトノベルの手法か?

SF好きの私が作るなら、高校生のチャライ恋愛劇は短めにして、タイムパラドックスに基本を置き、糸守の歴史や民族についてもっと詳しく語ると思うなあ。糸守って魅力的な場所じゃないですか。

運命の赤い糸で結ばれた恋人、というファンタジーは手垢がついていてイマイチ面白くない。
まあ、若い人には面白いのでしょうけど。

 

私は、この物語の肝は、世界の揺らぎ、だと思っています。

世界が揺らいでみえる、なぜなら、私自身が揺らいでいるから。
自分自身の揺らぎはすべからく世界に反映されるから・・

そして時間の分岐が生まれ、新しい世界に移行する・・

これって、先日書いた「マンデラ効果(マンデラ・エフェクト)」にも近い現象かと思います。
(2019年4月24日の記事「マンデラ効果」参照)

「マンデラ効果」については、私自身は都市伝説の一つだと思っていますが、あるいは数多くある都市伝説の中に、何がしかの真実が含まれているかもしれない・・

ミツハの友人の勅使河原君がこう言ってるシーンがありますね。

「エヴェレットの多世界解釈・・」

そう、まさにこの物語は時間が分岐して多世界に移行する、という解釈を前提として作られています。

「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のパート2でドクがマーティに説明する、あれです。
マーティが過去に戻った時点で分岐が生まれ、新しい時間軸に移行した・・

けれども、残念ながら、この物語(「君の名は。」)が意図するものは、時間や多世界解釈ではなく、あくまでも恋愛の背景としての時間なんですね。

物語の主題は出会うべき二人の恋人たちであって、時間や多世界ではない。
そして、恋人たちにとって、世界は常に揺らいでいる。
実をいうと、私たち自身にとっても世界は揺らいでいるのかもしれません。

そうした幻惑にも似た感情を引き起こすという点で、タイムトラベルものは恋愛物語の優れた背景になりえるのだと思います。

そう、世界は見た目ほど確かではない。
揺らいでいる・・

これ、たぶん真実だと思うなあ。

 

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