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世界と日本のボーダー文化

The Border Culture of the World and Japan

カストロ元議長は、2009WBCの決勝は日本と韓国と予測

2009年03月21日 | スポーツ



キューバの元国家評議会議長フィデル・カストロは、来週23日の夜(日本時間では、24日朝)にロサンジェルスで行なわれるWBCの決勝は、日本と韓国と予測。http://www.granma.cu/

以下に、キューバの新聞『グランマ』に掲載された、キューバチームの敗北をめぐるカストロの論評の翻訳(私訳)を掲げます。

フィデル・カストロ「責められるのは我々だ」
(『デジタル・グランマ・インターナショナル』2009年3月20日)

 日本とキューバの試合は、今朝3時に終結したが、我々は完膚なきまでに敗北した。

 WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の組織委員会は、世界の上位3チームがサンディエゴで戦うように組み合わせを決めた。キューバはカリブ海の国であるにもかかわらず、アジア(東側)のグループに入れられたのだ。

 しかしながら、数日後にロサンジェルスで行なわれる試合で、西側のどのチームも日本や韓国に勝てるかどうか。そのクオリティからして、アジアの二つの国が決勝を争うことになるだろう。

 組織委員会のもくろみは、思想の戦いでヒロイックに抵抗し負けることを知らないキューバを排除することにあったのだ。しかし、またいつの日かこのスポーツで、我々は君臨することになるだろう。

 おもに若い選手たちからなる今度のWBCのキューバチームは、疑いようもなく我が国の最良選手たちであり、真の代表である。大いなる勇気をもって戦い、最後まであきらめずに、最終回まで勝利をめざしたのである。

 専門的アドバイザーと共に首脳陣によって示されたラインナップは、すばらしいものであり、自信をうかがわせるのだった。攻守共に強力だった。試合が要求する状況に備えて、すぐれたピッチングスタッフと強力な打撃陣を用意した。こうしたコンセプト通りに、彼らはパワーフルなメキシコチームをまったく寄せつけなかった。

 ここで指摘しておくべきだと思うが、サンディエゴでの首脳陣の采配は、支離滅裂だった。絶えず改革を実行している敵に対して、平坦に踏みなされた道を行くという保守的な規範が蔓延していた。我々はしかるべき教訓を学ばねばならない。

 あらゆるスポーツの中で、起こりうるありとあらゆる種類の状況や、ダイアモンドの9人の各自の役割を考えれば、今日のベースボールほど、人々にいろいろな期待を呼び起こすものはない。真に感情を鼓舞する見せ物である。

 スタジアムがファンで埋まるとしても、カメラで捉えられるイメージに匹敵するものはない。ベースボールは、映像というメディアによって転送されるべく考案されたかのように思える。テレビはあらゆるアクションを詳細に扱うことで、人々のそうした興味を高めるのである。テレビは時速100マイル(150キロ)で投げられたボールの縫い目や回転の模様を見る機会を、さらにボールが白線上を転がったり走者の足がベースに触れる前後の10分の1秒間に守備の選手のグラブにおさまったりするのを見る機会を我々に提供する。チェス以外に、これほど変化にとんだ状況を有するゲームは、ほかに思い浮かばない。もっとも、チェスの場合は筋肉の動きではなく、頭脳の中の知的な働きであり、それはテレビで映し出すことができないのだが。

 キューバはあらゆるスポーツを楽しみ、多くのアマチア選手を有しているが、とりわけベースボールは国民の情熱となってきた。

 我々は栄誉にあぐらをかいてきた。いま、敗北の責任を引き受けねばならない。日本と韓国は、地理的に米国からかなりの距離があるが、この米国から輸入した、というより押し付けられたスポーツに豊富な資金を投じてきた。

 二つのアジアの国におけるベースボールの発展は、かれらの明確な国民性に寄るものだ。かれらは勤勉で、自己犠牲的で、ねばり強い。日本は1億2千万以上の人口を有する豊かな先進国であるが、ベースボールの発展に献身してきた。資本主義システムの中のほかのものと同様、プロスポーツも多大な金の動くビジネスであるが、国民はプロ選手に対して厳しい水準を要求している。

 日本でプレーしたことのあるキューバの選手は、そうした水準の高さを熟知している。米国のメージャーリーグでプロ選手に支払われる年棒は、米国の次に強力なプロリーグを有する日本より明らかに高い。日本のプロ選手は誰でも日本で8年間プレーしないかぎり、米国のメージャーリーグや、その他の国でプレーできない。そうした理由で、外国で活躍する選手には、28歳以下の者がいない。

 日本のトレーニングは信じがたいほどに厳しく科学的である。おのおのの選手に必要な筋肉を鍛えるための科学的方法を考案してきた。毎日、打者は打撃練習に、左か右の投手から投げられる数百球を打つ。投手は毎日400球を投げる義務がある。もし試合中にミスをおかせば、もう100球投げねばならない。しかし、かれらはあたかも自分自身に課した罰であるかのように、嬉々としてそれをこなすのである。そのようにして、かれらは頭脳から送られてくる命令に忠実に従う筋肉を見事なまでにコントロールすることができるようになる。そういうわけで、誰もが日本の投手陣が思うようにボールコントロールする能力に驚嘆するのだ。似たような科学的な方法は、守る時も打つ時もそれぞれの選手が行なわねばならないあらゆる動きに応用できる。もう一つのアジアの国、すなわち韓国でも、選手たちは似たような国民性をもって技術的な進歩を遂げた。韓国はいまや世界のプロフェッショナルベースボールにおける強豪国だ。

 アジアの選手たちは、西側の選手に比して、身体的に強靭とはいえない。パワーの点でも同じだ。だが、強靭な身体を持っているだけでは、アジアの選手たちが磨いた反射神経に勝つことはできない。同様に、パワーだけではアジアの選手の科学的方法や冷静沈着さの埋め合わせはできない。韓国は、よりパワーフルな巨漢選手を探す努力をしてきた。

 我々の希望は、我が国の選手たちの愛国的な献身と、かれら自身の栄誉と国民を守ろうとする熱意とに支えられていた。選手層にしても、たとえば日本と比べて10倍以上も人的資源にめぐまれないし、そうした乏しい人的資源から、我々の敵からの賄賂を受け取るようなモラルの低い者を差し引かねばならない。しかし、ベースボールの世界での覇権を維持するためにはそれだけでは充分でない。我々は選手たちを鍛える際にもっと科学的な方法を採りいれねばならない。我が国の一流の教育施設やスポーツ施設がそれを可能にするだろう。

 幸い、我が国には、すぐれた運動能力を有する若手の投手や打者が十分そろっている。一言でいえば、単にベースボールだけでなく、あらゆるスポーツ分野における我が国の選手の鍛錬のために、練習方法を改革しなければならない。

 我がナショナルチームは、数時間のうちに帰国するはずだ。かれらが示したパフォーマンスに値する栄誉をもってかれらを迎えることにしよう。不運な結果をもたらした数々のエラーの責任は、かれらにはない。責められるのは我々だ。期限までに自分たちのエラーを訂正することができなかったからだ。

フィデル・カストロ・ルス(署名)
2009年3月19日 午後2時58分