越川芳明のカフェ・ノマド Cafe Nomad, Yoshiaki Koshikawa

世界と日本のボーダー文化

The Border Culture of the World and Japan

歌手の島津亜矢さんにノックアウト。

2009年03月16日 | 音楽、踊り、祭り
 きのう、たまたまかかっていたNHKBSの歌番組で、島津亜矢さんという演歌歌手の歌を聴きました。

 熊本ダイアレクトで、父親から都会にでていった娘あるいは息子に語りかける歌、「帰らんちゃよか」という曲でした。

 



 オペラ歌手にも匹敵するほどの声量があるのは、だれもが認めるところでしょうが、歌詞(ことば)を自分の中に取り込んで歌う点は、天性なのでしょうか、それとも努力の賜物なのでしょうか。

 その歌いっぷりを見て、ふと、南大東島出身のオキナワ民謡歌手、内村美香さんを思い出しました。

あるいは、ジャンルはちがいますが、キューバの大物歌手セリア・クルースをも彷彿とさせます。




 島津亜矢さんは熊本の田舎から出てきて、作詞家の星野哲郎氏に師事したそうです。作曲家の船村徹氏とよくコンビを組んで曲を作っている御大です。
 
 いまどきの男にはない侠気があるので、男の歌を歌わせるとすごく巧いです。北島三郎と共演して、サブちゃんの歌を見事に歌っていました。

 番組のラストで、「(一緒に歌えた)今日の日は、私の宝です」と、先輩サブちゃんに感謝の気持ちを表現した点に、彼女のこれまでの苦労が忍ばれました。

 それでは、北島サブちゃんと島津亜矢さんのヴァーチャルな共演をお楽しみください。

 まずは、サブちゃんの「風雪ながれ旅」からどうぞ。語りうたになっています。さすがおさえ気味に歌うところが心憎いです。

 


 つぎに、島津亜矢さんの「風雪ながれ旅」です。耳の鼓膜をやられないように、ボリームをすこし落としてくださいね(笑)。
 
 
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映画評『THIS IS ENGLAND』

2009年03月16日 | 映画
シェーン・メドウズ監督『THIS IS ENGLAND』
越川芳明

 フォークランド紛争(1983年)の後、保守的なサッチャー政権下のイギリスの田舎町を舞台に、労働者階級のスキンヘッドの若者たちを描く。

 スキンヘッドといえば、ドイツのネオナチなど、人種差別主義を露骨に標榜する極右団体を連想させるが、この映画でもパキスタン移民を目の敵にするコンボという男が出てくる。

 それに対して、同じスキンヘッドでも、オシャレな平和主義者もいて、それはウッディという名の男が代表する。

 イギリスのスキンヘッドは歴史的に60年代後半のモッズに端を発し、ブーツやシャツや帽子などを加味して、独特のレゲエ・カルチャーを発生させたという。

 この映画の主人公である12歳のショーンは、フォークランド紛争で父を亡くし行き場を失っていたところをファッショナブルで人に優しいウッディに救われるが、その後、硬派で極右のコンボに洗脳されて、パキスタン人狩りに参加するようになる。
 
 映画はそうしたスキンヘッドの若者たちの微妙な対立に分け入り、社会的「他者」である彼らを内側から描ききった。

 ショーン少年は、恋愛もふくめて、次から次へと精神的な冒険を繰り返す。

 その内面の揺れは、時代と場所が違うとはいえ、雨宮処凛の『生き地獄天国』(筑摩書房)を連想させる。

 Toots& the Maytalsのスカの名曲や、UK Subsのヘビメタ、ClayhillのカヴァーしたThe Smithsの “Please, please, please Let Me Get What I Want”など、背景に流れる80年代の音楽と相まって、静かな感動を呼び起こさずにはいない。

(『Studio Voice』2009年4月号164頁)

『THIS IS ENGLAND』は、2009年3月14日(土)より、シアターN渋谷ほかにてロードショー


コメント (1)
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