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「たかがサッカー、されどサッカー」ロベルト・コッシーのサッカー部長日記(予告編3)

2015年03月30日 | サッカー部長日記

 

「人間がただ一つの人格だけで生きるのは難しいと、私は昔からずっと分かっていたように思う」と言ったのは、アイルランドの鬼才、小説家のコラム・マッキャン。人間には誰しも多重人格の要素があるようだ。マッキャンの言葉を裏づけるように、私も知らないうちに、複数のペルソナを使い分けてようだ。メキシコをはじめとする中南米やカリブ海では「ロベルト・コッシー」と呼ばれ、境界領域を放浪。2013年にキューバのハバナで、修行をおこない黒人信仰<サンテリア>の司祭(ヨルバ協会公認)になり、2014年9月に明治大学体育会サッカー部副部長就任し、2015年4月に部長就任(予定)。だが、前部長・別府昭郎教授と同様、サッカーに関してはまったくのド素人。もっぱら学生諸君の学業成績や生活のサポート、体育会に関連する各種行事や会議、サッカー部と大学とのあいだの橋渡し役、選手の引率および試合観戦などに専念。

3月某日  

栗田大輔監督よりメールあり。トヨタスタジアムでの中京大との交流戦以降に静岡でおこなっていた合宿が無事終了したという。交流戦を含めて5日間の長い遠征だったが、これまで順調に調整ができているとのこと。 詳細は、明大サッカー部マネージャー日記明大スポーツ(新聞)

三浦佑介ヘッドコーチより、春シーズンの日程が決定した旨の連絡あり。関東大学サッカー連盟のホームページで確認する。4月4日(土)の初戦の相手は、順天堂大学。昨シーズン2位(明大)と3位(順大)の争い。ちなみに、昨シーズンは春と秋ともに、0-0の引き分け。今年も熱い試合になりそうだ。 

学生スポーツは、おそらく最上級生のがんばりにかかっている。私が特に注目している4年生がいる。FWの藤本佳希君(文学部4年)。ドイツ文学専攻で、ベンヤミンの専門家の岡本和子先生のゼミに所属。岡本先生によれば、3年ゼミにもよく出席していたとのこと。昨シーズンの関東大学サッカー連盟のベストイレブンにも選ばれた逸材。だが、去年はあと1点で得点王を逃している。今年は、得点王になり、全日本にも選ばれてほしい。MFの瀬川祐輔君(政経学部4年)はスポーツ推薦でなく、一般入試で入学してきたインテリゲンチャー。去年は公式試合にもしばしば出場。いよいよ4年生になって勝負の年だ。顔つきも締まってきた。甘さを捨ててがんばれ。DFの鈴木達也君(商学部4年)も好青年だ。柏ユース時代は、現トップチームの吉田監督の指導を仰いでいたという。彼のポジションである右サイドバックには、U-23代表選手(オリンピック代表)の室屋成君(政経学部3年)がレギュラーを張っている。その厚い壁を乗り越えろ。  

アメリカの現代作家ポール・オースターによれば、「現実はいくつもあるんだ。単一の世界というものはない。(中略)世界一つひとつが、人間の精神の産物なんだ」という*(1)  

オースターの言葉をスポーツに応用すると、イメージトレーニングがいかに大事かということになる。うまく行くシチュエーションを幾つも思い描けるようにしたい。また、失敗したときは、いち早く気持ちの切り替えをしたい。「気持ちの切り替え」とは、悲惨な現実によって精神を押しつぶされることなく、むしろ、精神によって悲惨な現実をコントロールすることだ。この世の中に「失敗」というものはない。気持ちの持ち方次第で、失敗はすべて成功につながる。そう楽天的に考えたい。  

八谷淳希君(商学部3年)は昨秋、練習中に腹部に大きな怪我して入院。だが、先日の中京大との交流戦では、90分間正ゴールキーパーを務めて、完全復活を果たした。清水エスパルスユース出身で、それまでトントン拍子できたので、怪我で練習を休まなければならなかったときには、いろいろと葛藤があったはず。

怪我が選手を逞しくしてくれる。

*註(1)ポール・オースター『闇の中の男』(新潮社)、83ページ。