越川芳明のカフェ・ノマド Cafe Nomad, Yoshiaki Koshikawa

世界と日本のボーダー文化

The Border Culture of the World and Japan

浅草のうなぎ屋「色川」

2007年10月03日 | 小説
先週、来日中のサンディエゴ州立大学のジェリー・グリスウォルドと浅草に行き、昼飯を食べた。やっぱりウナギかな、と思い、「色川」に連れていった。

暑い日で喉が渇いたので、カウンターでビールを飲みながら待っていると、ジェリーがおやじが団扇で火を熾すところを写真に撮りたいというので、おやじに叱られるのを覚悟で訊いてみたら、ああ、いいよ、と簡単に応じてもらった。そこから、ジェリーはデジタルカメラのヴィデオカメラ機能を使って、15秒くらいヴィデオを撮った。あとで見せてもらったら、滅法いい画像がとれていた。あとで、ユーチューブに載っけてもらいたいものだ。

それはともかく、後ろのテーブル席にすわった比較的若いカップルが「ビール1本、並ひとつ、上ひとつ」と、注文すると、おやじが「だれが並を食うんだ」と怒ったようにいった。男のほうが「彼女です」と、応えると、「女性に<並>なんか、食わせるか?」と訊いた。すると、男は素直に「上ふたつにしてください」と、いった。それを聞いたおやじが「そうこなくっちゃ。将来嫁さんになる人に<並>なんか食わせたバチがあたるよな」というと、男は「でも、結婚してます」と小声でちょっとだけ反論した。おやじは「母ちゃんだったら、なおさらじゃないか」と、お説教をした。完全におやじの勝ちであった。

もしこのカップルが初めてここにやってきた一見の客だとすれば、マクドナルドの接客とはまったく正反対の、この<注文の多い料理屋>に、もう二度と足を運ばないか、それとも常連になってなんども通うかのどちらかだろう。わたしは、こんな嫌みのない頑固おやじが好きで、なんども通っています。

調子に乗って、あとで講演があるのにもかかわらず、ビールを二本飲んでしまった。だが、講演でのグリスウォルド教授の舌は、得意のジョークが炸裂し、じつに滑らかであった。みなさんも、「色川」で叱られてください。ほかにも、下町の雰囲気の味わえる店を知りたいものだ。
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