「新番組」「新ドラマ」の会見について書いてみたいと思う。僕はドラマのプロデューサーをやっていた時代から、何度この記者会見を体験しただろうか。
もちろん、プロデューサーと相談しながらも、「記者会見」を仕切るのは「宣伝部」の仕事。でも、出演者のケアや席順等含めて、細かいところまで、番組宣伝担当者と確認をしていく。
ドラマの場合で説明しよう。まずは「会見」に出て頂く俳優さんを決める。これは事務所との行政もあるので、かなり気を遣う。俳優さんが決まったら、彼らのスケジュールの合う日を「ドラマのスケジューラー(ドラマ本体の撮影スケジュールを作り、キャスト・スタッフに伝える役割の人)と決める。
宣伝担当者も、他のドラマや新番組等の「記者会見」と被っていない日を情報を収集して、割り出す。
会見の日時と場所(ロケ現場やスタジオの場合、ホテルの会見場の場合・・・いろいろある)が決まったら、細かい打ち合わせに入る。
司会をするアナウンサーの押さえ。主題歌のレコード会社へ連絡。会見に間に合う場合は、記者に配る会見資料の入った袋にサンプルCDと歌手の資料を入れる手配。そして、オープニングテーマとエンディングテーマと二曲ある場合は、会見が始まる前は「オープニングテーマ」を会見終了後は「エンディングテーマ」を会場に流せる様に、レコード会社から音源を貰い、エンドレスで流れる様にする。
宣伝担当者は「会見場」のレイアウトの打ち合わせを美術デザイナーと・・・俳優さんが立って写真を撮る時にバックに「番組名と放送日時」が入る高さに、会見の看板を作る。
普通のノーマルな会見では、「記者会見」の始まる30分前に会場、主題歌を流し始める。
おっと忘れていた。司会のアナウンサーの進行表のチェックもプロデューサーの大切な仕事。俳優さんの登場に合わせて、簡単に役柄の紹介と登場順、それぞれの俳優さんにNG質問があるかも確認しておく。基本は会見のアタマで、「質問は番組の事に限ります」と司会がコメントする事が最近は多い。
俳優さんの控え室の順番、控え室から会見場への導線の確認も大切だ。
会見スタートが近づくと、プロデューサーはコメントしなければならないので、舞台袖の席に着席。
俳優さんの登場順、座り位置は宣伝担当者が直前に説明する。
主題歌がフェードアウトすると、司会が喋りだし、会見スタート。
そうそう、会見場に入って貰う順番がある。その為に、媒体の「スチールカメラマン」は早めに来て並ぶのだ。会場と同時に、まず「スチールカメラマン」を来られた順番に会場に入って貰う。当然、いちばん前列である。それから「記者」の方々が入場。その前に、ENGと呼ばれる「ビデオカメラ(ワイドショーとかで流れる映像を撮る取材カメラ)」は既に中に入っており、複数台になる事が多いので、「俳優さんがマイクで喋る声」の回線を、音声を分岐する機材から各ENGに分ける。
そして、会見スタート。アタマで「ドラマのダイジェスト」を見せて、出演者登場という事もあるが、通常は司会が主演から呼び込む。出演者全員が座った段階で、プロデューサー(時には、脚本家・ディレクターも)が番組の企画意図と概要を喋る。この喋りは短い方がいい。誰もプロデューサーの挨拶を聞いていないから。僕の場合は、記事になりやすい「キーワード」を幾つか、考えておいて、手短にコメントする。そして、主演から一人一人、コメントを貰う。
それから「質疑応答」と呼ばれる記者からの質問タイムになる。会見に出て頂いた出演者全員に質問が行く様に、懇親にしている記者に、質問がいかない出演者が出そうになったら、質問して欲しいと宣伝部の方から頼んでおいて貰う場合もある。
もちろん、出演者のプライベートな事やゴシップに関する質問が出た場合は司会がやんわりとお断りする。
ここまでで30分。「記者会見」終了を司会が告げると「エンディングテーマ」が流れ出し、一度出演者は退場。スタッフは出演者のイスを無くし、「フォトセッション」と呼ばれる写真撮影の時間になる。ここで注意しなければならないのは、主役の1ショットは別にしても、後のショットを何人で撮らせるかである。例えば5人出演者がいたら、普通は1ショットと5ショット。しかも、5ショットを横に5人立ちでなく、前に3人座り、後ろに2人立って貰う事もある。理由は5人を横に並べて撮影させると、トリミング(例えば、掲載の際、左と右端の出演者を切って3人だけの掲載にする事)
される場合があるからだ。折角、会見に出て貰っているのに、写真が新聞等に載らないのは、事務所行政上まずいからだ。僕も何度か痛い思いをしている。
「フォトセッション」が終わると、やらない場合もあるが、「囲み」と呼ばれる各出演者を記者が囲んでの取材となる。「囲み」を受ける出演者と「囲み」をしない出演者が分かれる場合がある。FRIDAYとかにゴシップを書かれて間もない出演者は「囲み」をしない事が多い。番組以外の事を聞かれる場合があるからだ。もちろん、それぞれの出演者の「囲み」には、宣伝部のスタッフが付いていて、NG質問が出たら、即、止めるスタンバイはしてある。
「囲み」が終わったら、別室で、それぞれの出演者が個別取材を受ける。プロデューサーが取材を受ける事もある。大概の場合、主演への「個別取材」が多い。「取材ごとに衣裳を替える女優さん」もいて、専属のメイクさんやスタイリストさんがバタバタと行き交う風景も見られる。
全ての「個別取材」が終わって出演者全員を送り出したら、長い一日は終わる。
そうそう、この間の「お弁当」や「飲み物」「お菓子等の差し入れ」の手配の確認も重要チェック事項である。
「記者会見」の後、何も無ければ、プロデューサー・スタッフ(制作会社のプロデューサーやAP、時にはスケジューラーも来ている)、冷え冷えのビールで乾杯・・・となるのだが、脚本打ち合わせや撮影が入っていると、スタジオやロケ現場、会社に戻って、エンドレスに仕事は続くのだ。振り返ってみて、「連続ドラマのプロデューサー」の仕事って、ほんま大変やったなぁ~としみじみ思う。1クールやると、僕の場合はストレスから5キロは体重を増やしていた。