出版社/著者からの内容紹介
下半身が動くと、なぜ世界は潤うのか--。人間の奔放な「下
半身」が世界経済に与える影響、そのセックス産業の驚愕の収益システム、さら
にはそこで働く女性たちの収支バランスなど、世界規模で膨張し続けるセックス
産業のマネーの流れと実態を、気鋭のエコノミストが分析する。といってもただ
の経済分析ではない。たとえば、デリヘルの市場規模(2兆4000億円)は島根県
の経済規模に匹敵し、ファッションヘルス+イメクラの市場規模(6780億円)は
2006年度ODA関係予算に迫り、ピンサロの市場規模(6457)は2006年度地方交
付金予算を上回ってしまう事実。このような事例を引きだし、セックス産業のエ
ロすごさ、エロまぬけな側面を浮き彫りにする。下半身に左右される人間と、そ
の人間がつくりだす世界市場を、経済システムとしてとらえ、あるときはユーモ
ラスに、あるときは淡々と、でも基本的には鋭く分析。おもしろおかしいわりに
は、気がつくと、あら、身になっている。そんなエロおもしろい一冊です。
出版社からのコメント
「下半身」はGDPも左右する--。気鋭のエコノミストが、世
界のセックス産業市場を独自の手法で分析、これまで表に出てこなかった「世
界最古の産業」の全貌をみつめる。「下半身」が世界経済に与える影響から、そ
の欲望ビジネスの驚愕の収益システムまで、徹底的に解明する。
著者からのコメント
本書は、人間の「下半身」を通奏低音として、日本経済と世界
経済を概観した異色の作品である。
筆者は、本書の執筆にあたって、長い時間をかけて数多くのフィールドワーク
を行った。統計データがほとんど整備されていないので、この手のテーマを深く
掘り下げるには、どうしても足で稼ぐことが必要になるのだ。
そして単に市場規模などを推定するだけでなく、セックス産業で働く女性たち
の内面にも迫り、その生活の実態を探ろうと試みた。アジアなど海外での
取材の結果もふんだんに盛り込んでいる。
もちろん、セックス関連の産業で働く人たちは膨大な数に上るので、そのすべ
てをつまびらかに把握することはできないが、読者が知りたいと思う基本的
な情報については十分に網羅したつもりだ。
人間であれば、誰もが持っている隠された欲望。この欲望は、新しい産業の
発展を生み出す原動力にもなってきた。インターネットの世界がこれだけ急速に
発展したのも、もとはといえばエロに対する根強い需要に対応するためであった
のだから。
読者は、本書を通じて、これまで秘密のベールに包まれていた欲望産業の生い
立ちや実態などについて、楽しんでいただけたのではないか。また、セックスを
基軸とした世界経済の相互関係についてもある程度は理解していただけたのでは
ないだろうか。
人間の有史以来、存在し続けてきたセックス関連の産業は、今後も世界的に繁
栄を続けていくだろう。
ところで、第6章でも触れたが、政策当局は、こうしたセックス関連産業にど
う対峙していけばいいのだろうか。これは非常に難しい問題である。
政策当局がセックス関連産業を野放しにしておくことは問題といえるが、逆に
規制を強くしすぎるのもまた問題である。たとえば、埼玉県川口市のJR西
川口駅周辺は、首都圏有数の歓楽街となっていたが、近年、警察当局が性風俗
産業の締め付けを強化したために、性風俗産業とともに共生していた商店街や不
動産業界など他産業の経営にも甚大な悪影響を及ぼすことになってしまった。
2006年12月には、「西川口の違法な性風俗産業はほとんど壊滅した」と埼玉県警
による大本営発表があったが、同時に地元経済が失ったものも大きいといえよ
う。
政策当局には、セックス関連産業をうまくコントロールする非常に微妙な手綱
さばきが求められている。そして、セックス関連産業をコントロールするには、
まず何よりも、それらの産業を十分に理解することからはじめなければならな
い。筆者は、引き続き日本や世界のセックス産業の行方を見届けていきたいと思
う。
カバーの折り返し
人間の本能には、セックスに対する強い欲望がある。人間に最も
近いとされる類人猿ボノボ(ピグミーチンパンジー)は生殖と結びつかないセッ
クスを楽しむといわれるが、人間にもそのような遺伝子が組み込まれている
と考えられる。ただ、ボノボと人間の違いは、人間社会では快楽としてのセック
スが社会によって抑圧されるようになり、その結果として金銭の授受を伴うセッ
クスが産業として成立したという点だ。そこで本書では、セックスという視点か
ら世界経済の仕組みを解読してみたい。世の中では様々なセックスビジネス
が展開されているが、こうしたビジネスにおけるマネーの流れをつかむこと
で、各国の売春産業の規模や、先進国と開発途上国の関係などが明確に浮かび上
がってくるはずである。
著者について
門倉貴史(かどくら・たかし)
エコノミスト。1971年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。浜銀総合研究所、社
団法人日本経済研究センター、東南アジア研究所(シンガポール)を経て、
2002年に第一生命経済研究所・経済調査部主任エコノミストとなる。2005年か
らBRICs経済研究所のエコノミスト・作家として講演・執筆活動を開始。専
門は日米経済、アジア経済、BRICs経済、地下経済と多岐にわたる。著書に
『人にいえない仕事はなぜ儲かるのか?』(角川oneテーマ21新書)、『ワーキン
グプア』(宝島新書)、『統計数字を疑う なぜ実感とズレるのか?』 (光文
社新書)、『インド人はなぜゼロを見つけられたか』(小学館)など。
「風俗」に関する事は「人間臭くて」面白い。悲喜劇的要素も孕んでる場合もあったりして・・・














