旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

積翠城と鶏ちゃん焼きと三千盛と 越美南線を完乗!

2023-10-14 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

長良川鉄道の看板列車「ながら」が北濃に向けて出発して行った。ディーゼルの匂いが残り香のよう。
深紅に輝くこの「清流レストラン」には一度は乗って食べて呑んでみたいものだ。

峠を歩いて越えてきた訳ではないけれど、ここは越美南線の終点北濃駅。
きょうは越美北線の旅を引き取って、長良川鉄道で呑んで旅する休日だ。

北濃駅に迎えにきてくれた600形は昨年デビューしたピチピチの新潟美人(新潟トランシス社製)だ。
旧国鉄の急行色に着飾った姿が旅情を誘う。

越美南線はその総延長のほとんどを清流長良川に沿って走る。風光明媚な景色が流れる車窓が楽しい。
ガリ釣りが解禁になって、清流には腰まで浸かった名人たちが鮎竿を操っている。

清流と一緒に流れて45分、新潟美人は郡上踊りと清流と名水の城下町に差し掛かる。

木造平屋建ての郡上八幡駅は昭和4年の開業当時のもの。
ちょっとモダンで愛らしい駅舎に、ガス灯、バス停、郵便ポストそれに電話ボックス。んっいいね。

宮が瀬橋から長敬寺へ向かう本町・鍛冶屋町・職人町の古い町並みを歩く。
間口2問と狭く奥に深い造りはどこか京都に似ている。大火を経験した町並みは隣家との境に袖壁をもつ。
風に揺れる郡上踊の提灯の向こうに白亜の天守閣が見える。

郡上八幡城(積翠城)は市街地の北東にそびえる八幡山にある。
天守は大垣城をモデルとした模擬天守だそうだから、史実を反映していないものなのだろう。
それでも1933年(昭和8年)に建てられた木造4層だから、すでに立派な文化財かも知れない。

噴き出る汗を拭いつ宮が瀬橋まで戻る。こうした旅で得た教訓、観光地でのお昼は開店時間に飛び込め!
11:00、吉田川を見下ろす「そばの平甚」に収まる。オーダーする頃には店内は満席だ。
陶のグラスに冷たい “黒ラベル” を注いでグッと呷る。美味いね。アテは “そばの実おろし” これが良い。

ほどなく “飛騨牛ランチ” が登場。清らかな水で打った二八も食べたいし、飛騨牛丼も食べたい。
ビールのアテに出汁が染みた飛騨牛を抓んだら、冷たい蕎麦を出汁にさっとくぐらせてズズッと啜る。
いやぁ美味いな、ささやかに幸せだなぁ。

店を出て小さな路地を下ると、古い町並みに並行して流れる小駄良川が飛沫をあげて吉田川に注いでいる。
なんとも涼やかで良いね。しばらく清水橋の日陰に入ってこの飛沫を浴びていたい。

「宗祇水(そうぎすい)」は水の町郡上八幡のシンボル。
この湧水は室町時代にこの地を訪れた連歌師 宗祇の名に由来する。
今宵は「宗祇水神祭」らしい、湧水に奉献酒を冷やして準備は万端だ。

ヘッドライトが煌めいて、13:27発の美濃太田行きがやって来た。
深紅の500形502号は観光列車「ながら」仕様、オールロングシートだけどね。

「ながら」は相変わらず長良川とランデブー、数えたのが確かなら8つの鉄橋がこの川を跨ぐ。
途中、色とりどりのカヌーやカヤックを追い越して濃尾平野をめざす。

大矢駅では臙脂色の下り列車と行き違い、1両と1両が千鳥式に向き合って、片田舎の長閑な交換風景なのだ。

深紅の「ながら」は、梅山駅で長良川に別れを告げる。
せきてらす前駅で90度の転針をすると中山道太田宿へと向かう。

中山道51番目の太田宿は飛騨街道と郡上街道が分岐してX字を描く交通の要衝。
鉄路も高山本線に越美南線が合流し太多線が分岐する。現代でも要衝であることに変わりはない。

夕暮れから激しい雷雨に見舞われた。稲妻が閃光してドカンドカンと付近に落雷する。
それでも間隙をついて駅前の雑居ビルに飛び込む。ローカルな酒場で地酒を愉しみたい。
とりあえずの生ビールにアテは “久田見油揚げ”、分厚い三角の油揚は食べ応えあり。生姜醤油で美味しい。

高山本線で飛騨川を遡ると2つ目の中川辺に白扇酒造がある。
“花美蔵 岐阜九蔵” は風格のある濃厚な酒だ。たっぷりのおかかと黄身を落とした “まぐろ納豆” が嬉しい。

岐阜ケンミンのソウルフード “鶏ちゃん焼き” は、漬け込んだ鶏肉と野菜たちにニンニクが効いて美味しい。
二杯目は多治見の “三千盛”、本来刺身や繊細な料理にあう大吟醸だけど、この辛口は濃い料理にも負けない。

越前と美濃を結ぶ幻の越美線の旅を終えて、岐阜の地酒でほろ酔いになっている。外はいまだに雷鳴が轟く。
ヤンキーな兄さん姉さんに囲まれ、紫煙の煙に燻されて、美濃太田の夜はふけゆくのだ。

長良川鉄道・越美南線 北濃〜美濃太田 72.1km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
GOOD BYE青春 / 長渕剛 1983



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2 コメント

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tsakae様 (呑み人)
2023-10-12 23:43:22
こんばんは。
ほんと郡上八幡は遠いですね。
名古屋スタートでも1日潰れますね。
私は2013年以来、ちょうど10年後の2度目です。
それでも、やっぱりお踊りは見たいし、
鮎の塩焼きで一杯やりたいし、
3度目のための宿題を残して来ました。
いつもコメントありがとうございます。
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郡上八幡 (tsakae)
2023-10-08 08:04:26
名古屋から 電車で 郡上八幡
に行ったことがあります。
電車の 記憶はありません。
観光列車もいまは あるのですね。
懐かしい風景思いだしました。

https://blog.goo.ne.jp/tsakaegoo/d/20110623
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