地球上にある約1万2千個の核兵器… 35年ぶりに再び増加傾向へ
ウクライナ戦争と米中対立の中、安全保障における各国の不安高まる
1989年の冷戦終結後は減少し続けてきた核兵器が、今年約30年ぶりに再び増加する起点になる恐れがあるという警告が出た。
ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は13日に公開した「2022年鑑」で、「核保有国9カ国が保有核兵器の現代化を引き続き進めている」とし、「核兵器全体の数は昨年よりやや減少したが、次の10年で再び増加するだろう」と見通した。同研究所は核保有国として、米国、ロシア、中国、英国、フランスの5カ国にインド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮の4カ国を加えた9カ国を挙げた。韓米政府は北朝鮮を核保有国として認めていないが、世界的にはすでに既成事実とされていることを示している。
SIPRIは今年初め、全世界の核兵器数は1万2705個で、1年前の1万3080個よりやや減少したと発表した。全世界の核兵器の90%以上を占める米国とロシアが、すでに数年前に退役の核兵器を解体する作業を続けているためだ。しかし、両国も軍事的に使用できる核兵器の数はある程度維持している。
世界の核兵器数は冷戦末期だった1986年の約7万個から徐々に減ってきたが、今年初めて増加に転じる可能性が高いと、SIPRIは見通した。同年鑑の作成に参加したマット・コーダ研究員は、「我々はまもなく冷戦後初めて保有する核兵器が増える時点に到達するだろう」とし、「昨年は核兵器がやや減少したが、今後10年間は核兵器の増加が予想される」と話した。
このような変化をもたらした最大の原因は、ロシアのウクライナ侵略や米中対決の激化などで世界情勢に大きな転換が起きているためだ。特にウラジ―ミル・プーチン大統領は、ウクライナ戦況が思い通りに進まない中、何度も核兵器使用の意思を示し、これまで続いてきた核兵器削減の流れに冷水を浴びせた。コーダ研究員は「プーチンの核兵器発言などで他の核保有国が核戦略を見直すことになり、このような理由でしばらくは核削減に向けた議論を進めることが難しくなった」と指摘した。
中国も軍事的劣勢に対応するという名分を掲げ、核戦力の強化に乗り出している。米国メディアは昨年7月、中国政府が新疆や甘粛、内モンゴルなどで戦略核ミサイル用と推定されるサイロ(ミサイル用地下発射施設)300基余りを建設していることが衛星で確認されたと報道した。続けて中国軍縮協会(CACDA)の沙祖康名誉会長は昨年9月、中国が「核兵器先制不使用」原則を見直す必要があると主張した。米国などでは、中国が現在保有する約350個の核弾頭を1000個レベルに増やす可能性があると見ている。
また、英国は昨年、ロシアと中国の核兵器について「透明性が足りない」とし、自国の核兵器保有上限を225個から260個に増やした。またフランスは昨年初め、第3世代戦略原子力潜水艦の開発計画を公開し、インドやパキスタン、イスラエルも核兵器の改良と拡張などに乗り出したものとみられる。
北朝鮮は昨年は核実験を実施しなかったものの、核能力を高めたものとみられる。北朝鮮が保有している高濃縮ウランとプルトニウムなどの核物質は、昨年は核兵器40~50個を作れる量だったが、今年は45~55個分に増え、このうち一部を利用して核兵器20個を作り保有しているものと推定される。SIPRIは、北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)用核弾頭を作ったという公開された証拠はないが、準中距離弾道ミサイル(MRBM=射程1000~3000キロメートル)用核弾頭は保有している可能性があると指摘した。このミサイルは朝鮮半島と在日米軍基地がある沖縄を含む日本全域を打撃できる。SIPRIのダン・スミス所長は「冷戦後、核兵器が使われる危険性は今が最高潮かもしれない」と述べた。