韓国作家としては初めてであり、アジア女性作家としても初めて。ノーベル賞全体で見ると、2000年にノーベル平和賞を受賞した故金大中(キム・デジュン)元大統領以来2人目の韓国人受賞者だ。

2024-10-11 20:37:20 | 韓国を知ろう
 

ハン・ガン氏、

韓国作家初のノーベル文学賞受賞…「歴史的トラウマに立ち向かう」

登録:2024-10-11 06:19 修正:2024-10-11 11:07
「現代散文の革新家」
 
 
小説家のハン・ガン氏が2016年5月4日、ソウル東橋洞のあるカフェで開かれた記者会見で、ブッカー国際賞を受賞した『菜食主義者』と新作『すべての、白いものたちの』について語っている=キム・ジョンヒョ記者//ハンギョレ新聞社

 2024年ノーベル文学賞受賞者に小説家のハン・ガン氏(韓江、53)が選ばれた。韓国作家としては初めてであり、アジア女性作家としても初めて。ノーベル賞全体で見ると、2000年にノーベル平和賞を受賞した故金大中(キム・デジュン)元大統領以来2人目の韓国人受賞者だ。ハン氏が小説家としてデビューしてからちょうど30年であり、韓国に最初の近代小説が紹介されて107年目にしての栄誉だ。これまで詩人のコ・ウン氏が候補に取りあげられたことはあったが、ハン氏が50代で世界で最も権威のある文学賞を受賞すると予想した人はほとんどいなかった。

 ノーベル文学賞を主管するスウェーデン・アカデミーは10日午後8時(韓国時間)、「過去のトラウマに立ち向かい、人間の命のもろさを浮き彫りにする強烈な詩的散文」の作家だとハン氏を紹介し、今年のノーベル文学賞受賞者として発表した。また「肉体と精神、生ける者と死者の繋がりに対する独特な認識を持っており、詩的かつ実験的な文体で現代散文における革新家となった」と説明した。

 ハン・ガン氏は1970年に光州(クァンジュ)で生まれ、9歳の時に上京した。父親は有名な小説家のハン・スンウォン氏(85)。延世大学国文学科を卒業し、出版社に勤めた経歴がある。1993年に詩でデビューし、翌年に短編小説『赤い碇(原題)』で再デビューを果たした。2005年当時、70年代生まれとしては初受賞した李箱文学賞(短編「蒙古斑」)に続き、東里文学賞、萬海文学賞などを受賞し、韓国を代表する作家となって久しい。

 ハン氏は2016年5月『菜食主義者』(2007)がブッカー国際賞を受賞し、国際舞台でも知名度があがり始めた。済州(チェジュ)4・3事件をテーマにした小説『別れを告げない』で昨年11月にフランスのメディシス賞外国小説部門、今年3月にエミール・ギメ アジア文学賞を受賞した。メディシス賞選考委員会は当時、ハン氏について「韓国で最も偉大な作家といえる」としたうえで、「ハン氏の本が出版されるのは、韓国だけでなく、国際的にも一つの事件となる」と評価した。

 1995年に初の小説集『麗水の愛(原題)』が出版されて以来、主な作品として長編小説『黒い鹿(原題)』(1998)、『君の冷たい手(原題)』(2002)、『ギリシャ語の時間』(2011)、『少年が来る』(2014)、『すべての、白いものたちの』(2016)、『別れを告げない』(2021)、小説集『僕の女の実(原題)』(2000)、『黄色模様の永遠(原題)』(2012)、詩集『引き出しに夕方をしまっておいた』(2013)などがある。

 ハン氏は被害者や主人公と自分を重ね合わせて作品を書いてきた。『別れを告げない』の発表に当たって、「書く時は他のことができない。動くこともできない。歩くことも、食べることも、ままならない。最も受け身な姿勢で、書くこと以外のすべてを括弧の中にしまい込んだまま、言葉を一つひとつ書いていく。それ以外の方法はない」と綴ったことがある。昨年のメディシス賞受賞記者懇談会でも「9年にわたって書いた『少年が来る』と『別れを告げない』が対になっているわけだが、(それを書いている間)とても寒かった。これからは冬から春へと進みたい。もう歴史を題材にした小説は書かないつもりだ」としたうえで、「もう少し個人的な、命に関する小説を書きたい」と語った。ノーベル文学賞がその転換点に立ったハン氏の背中を押している。

イム・インテク記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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