尹錫悦政権と市民社会の隔たりは大きい。対米・対日関係に「全賭け」している尹錫悦政権は、米国と日本の不法行為にまで目をつぶり、韓米日三角同盟に向かってひた走っている。

2023-04-26 10:38:09 | 韓国を知ろう

停戦協定70周年…

「韓米日同盟に全賭け」では平和を築けない

登録:2023-04-25 08:22 修正:2023-04-25 13:22
 
2018年の平和プロセス座礁後、最長の「対話ゼロ」 
尹政府、韓米日同盟だけに専念…北朝鮮、核武装に走る
 
 
朝鮮半島終戦平和キャンペーン所属のメンバーが臨津閣で署名運動を行っている= 統一義兵提供//ハンギョレ新聞社

 4月15日、仁川(インチョン)空港。4月26日に予定されている韓米首脳会談の準備のために米国を訪問して帰ってきたキム・テヒョ大統領室国家安保室第1次長は、「米国の盗聴問題と関連し、韓米両国が同盟関係を強化できる『災い転じて福となす機会にしよう』と、『意気投合』した」と述べた。尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の外交安保ラインの実力者であるキム次長は、ワシントンでは情報分野を含む韓米日三角同盟を推進する意向を明らかにした。北朝鮮の核開発の高度化や米中戦略競争の激化、ロシアとウクライナ戦争など安保環境の変化に対応するためには、70周年を迎えた韓米同盟をさらに強化すべきというのが尹錫悦政権の考えのようだ。

 翌日の4月16日、臨津閣(イムジンガク)。朝鮮半島終戦平和キャンペーン所属のメンバーたちが終戦宣言と平和協定の締結を促す署名運動を繰り広げた。分断と戦争の傷を象徴す臨津閣は、外国人も多く訪れる観光名所だ。メンバーたちは朝鮮半島で戦争はまだ終わっておらず、またいつでも起こりうるとし、世界市民が戦争を終えて平和を作ることに力を合わせてほしいと訴えた。その結果、100人以上の参加を引き出した。同キャンペーンは休戦協定締結70年目の7月27日までに100万人を目標に署名運動を行っている。

 このように尹錫悦政権と市民社会の隔たりは大きい。対米・対日関係に「全賭け」している尹錫悦政権は、米国と日本の不法行為にまで目をつぶり、韓米日三角同盟に向かってひた走っている。一方、市民社会は「韓米日三角同盟に全賭け」が北朝鮮の核とミサイル高度化とあいまって停戦体制をさらに不安定にし、戦争危機まで招きかねないと批判の声を高めている。

 このような隔たりは歴史のタイミングと向き合っている。朝鮮戦争を止めることにした停戦協定は7月27日に70周年を迎える。また、10月1日は韓米相互防衛条約締結70周年だ。ところが、停戦協定と韓米同盟が同年に生まれたのは偶然ではなかった。休戦交渉当時、北進統一を国是として掲げた李承晩(イ・スンマン)政権は停戦協定に断固反対していた。一方、早期休戦を大統領選挙の公約に掲げた米国のアイゼンハワー政権は、何としても停戦交渉を完了させようとした。結局、韓米は停戦協定と引き換えに韓米相互防衛条約を結ぶことで合意した。70年間にわたり朝鮮半島問題の両軸として機能してきた停戦体制と韓米同盟は、朝鮮戦争が生んだ「歴史の双生児」であるわけだ。

 最初から停戦体制と韓米同盟は相互依存的だった。ところが停戦協定第60項には、「3カ月以内に」朝鮮半島問題の平和的解決に向けた高官級政治会談を招集するよう建議するという内容が含まれている。すなわち、停戦協定は平和協定を通じて恒久的かつ強固な平和体制に進むための過渡期的装置だ。まさにこの部分で、平和体制と韓米同盟は高度の緊張関係をはらんでしまう。韓米同盟とその物理的な核心である在韓米軍の主な役割は、停戦体制の維持と管理にある。これは停戦体制が平和体制に切り替われば、韓米同盟も変化が避けられないことを示している。

 このような構造的緊張を解決しようとする試みがなかったわけではない。1990年代初め、盧泰愚(ノ・テウ)政権の朝鮮半島脱冷戦プロセスは、米国の在韓米軍の3段階削減計画および作戦統制権の移管をめぐる議論と軌を一にしていた。しかし、在韓米軍の削減ではなく、むしろ増強が必要だと考えていた米国の強硬派の妨害で、朝鮮半島平和プロセスと韓米同盟の柔軟化はいずれも失敗に終わってしまった。

 2000年6月に史上初の南北首脳会談に臨んだ金大中(キム・デジュン)大統領は、在韓米軍の駐留を容認するという金正日(キム・ジョンイル)総書記の意向を伝えた。これを聞いた米国のクリントン政権も、朝米関係の正常化に乗り出した。朝米は同年秋に互いに特使を派遣し、クリントン大統領の訪朝にも合意した。しかし、11月に米国で政権交代が起き、すべてはなかったことになってしまった。そしてホワイトハウスの新しい主になったジョージ・W・ブッシュ政権は、北朝鮮との交渉を中断し、北朝鮮の脅威を口実にミサイル防衛体制(MD)の構築を宣言したうえ、北朝鮮をイラク、イランと共に「悪の枢軸」と称し、先制攻撃対象にした。これに対抗して北朝鮮は核兵器の開発に本格的に乗り出した。

 奇しくもブッシュ政権を経て、停戦体制の平和体制への転換と韓米同盟、そして朝鮮半島非核化の間の「三角関係」が水面上に浮上した。平和体制は朝鮮戦争を公式に終わらせ、南北・朝米の敵対関係を平和関係に転換することを意味する点で、北朝鮮を「共同の敵」とする韓米同盟との緊張は避けられないものだった。しかし、対話と交渉を通じて北朝鮮の核問題を解決するためには、平和体制は選択ではなく必須だった。結局、6カ国協議では平和体制問題を南北米中が参加する「別途のフォーラム」で取り上げることにした。しかし、2007年の韓国大統領選挙の結果、大統領府の主が変わったことで、平和体制は後回しにされ、韓米同盟強化論が猛威を振るった。

 その後、10年間水面下に沈んでいた平和体制が再び浮上した時点は2018年だった。4・27板門店(パンムンジョム)南北首脳会談と6・12シンガポール朝米首脳会談で、平和体制と関係改善、そして非核化を同時的かつ並列的に進めることに合意したのだ。しかし、米国の主流は自分たちの大統領だったドナルド・トランプを怯えた目で見守っていた。恐怖の実体は「いつか在韓米軍を連れ戻したい」と語っていたトランプが、朝鮮半島平和体制と非核化が可視化すれば米軍の撤退を命じるのではないかという懸念だった。その恐怖を和らげるため、トランプ政権の外交安保チームは終戦宣言を白紙化するなど、朝米交渉の妨害に奔走し、議会は国防授権法を通じて在韓米軍を2万8500人以下に減らすことができないようにした。朝鮮半島問題に関して米国の主流が最も重要視するものが何かということを、改めて確認した瞬間だった。

 2019年に入って「トップダウン」方式の朝鮮半島平和プロセスが座礁したことで、朝鮮半島はそれ以前と完全に変わってしまった。30年近く核開発を「手段」として平和体制と朝米国交正常化、そして制裁の解決を追求してきた北朝鮮は、南北・朝米首脳会談が失望だけを残したと判断し、核武装そのものを「目的」にし始めた。時間が経つにつれ、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が述べた「新たな道」は、安保は核で、経済は自力更生で、外交は中国とロシアを中心に進めていく路線であることが明らかになっている。

 このような北朝鮮の路線は、北朝鮮に対する韓米の政策手段が枯渇しつつあることを意味する。非核化を最高の目標にしてきた韓米は、北朝鮮の安全保障上の懸念を解消できる平和体制、北朝鮮の深刻な経済難を解決できる制裁の解除と経済協力、外交的孤立から抜け出せる韓米日との関係改善を非核化の相応措置にしてきた。しかし2019年を経て核兵器を「国体」にすることにした北朝鮮では、もはや平和体制、制裁の解決、関係改善という言葉は姿を消した。事実上、放棄したという意味だ。

 
 
米ワシントン訪問を終えたキム・テヒョ国家安保室1次長が15日午後、仁川国際空港第2旅客ターミナルから入国した後、取材陣に応じて質問を聞いている=仁川/聯合ニュース

 その結果がまさに「対話ゼロ」の時代だ。南北の公式の対話は2018年12月以降、これまで一度も開かれていない。1971年に南北対話が始まって以来、最も長い空白だ。朝米対話も2019年10月の実務会談以後、扉が固く閉ざされている。これまた1990年以来最長期間だ。韓米が対話を提案しても、北朝鮮が一切応じない状態が続いている。

 対話が消えた朝鮮半島では、韓米同盟と韓米日軍事協力が猛威を振るっている。これらは朝鮮半島の南側では称賛の対象に、朝鮮半島の北側では糾弾の対象になっている。特に尹錫悦政権は、韓米同盟の強化と韓米日軍事協力の推進以外には、韓国の安全保障を守るいかなる代案もないかのように、これにすべてを賭けている。古希を迎えた韓米同盟を記念し、強化することに余念がないあまり、「70歳の停戦協定」を平和協定に生まれ変わらせることには全く関心がない。政治的二極化と機能不全現象が激しくなっている国会も同じだ。

 これに対し、米議会の一部では「朝鮮半島平和法案」の制定を目指す動きがみられる。民主党のブラッド・シャーマン下院議員が19人の議員と共同発議した同法案には、いくつかの注目すべき点がある。まず2021年に法案発議者は民主党所属3人だったが、今回はアンディ・ビックス共和党議員をはじめとする20人が共同発議者として名前を連ねた。また、以前の法案にはなかった在韓米軍関連条項も含まれた。米政府に朝鮮半島平和協定の締結に向けた外交的関与を求めながらも、「同法案のいかなる内容も、韓国および他国に駐留している米軍の地位には影響を及ぼさない」と明記したのだ。このような米議会の動きは、韓国にも示唆するところが大きい。平和体制と韓米同盟の共存の可能性を真剣に探索し、朝鮮半島の平和を定着させる案を模索しているためだ。

 今年で2つの70周年を迎えた韓国は、重大な岐路に立たされている。予告された道は、韓米同盟の強化と韓米日三角同盟の追求が北朝鮮の核開発の高度化とあいまって朝鮮半島停戦体制の不安が高まるものだ。朝鮮半島休停戦体制の不安が国際的な新冷戦構図とかみ合って、韓国に加えられる危険がさらに大きくなる恐れもある。冷戦という巨大な構造的暴力が分断、戦争、停戦体制の根源として働いたように、新冷戦の鋭い刃が朝鮮半島停戦体制に向かって伸びているためだ。尹錫悦大統領が韓米同盟を強化するために、ウクライナに兵器供与を示唆したことに対し、ロシアが北朝鮮に最新兵器を提供する可能性をちらつかせて対抗したのは予告編に当たる。

 ならば、他の道はないだろうか。実際、平和体制と韓米同盟間の構造的な緊張を乗り越え、平和プロセスを推進するには進歩政権より保守政権の方がはるかに有利だ。金大中、盧武鉉(ノ・ムヒョン)、文在寅(ムン・ジェイン)政権は平和協定を口にするたびに「在韓米軍を撤退させ、韓米同盟を崩壊させようとしているのか」という保守陣営の理念攻撃に苦しめられた。これに対し、尹錫悦政権と与党「国民の力」が南北米中参加の平和協定交渉を提案したとしても、理念攻撃に苦しむことはほとんどないだろう。むしろ超党的な協力と国民的な支持を受けながら、また北朝鮮にも異なる道を示すことで、朝鮮半島平和プロセスの新たな章を開くことができる。私たちも、保守が主導し中道と進歩が支持して協力する真の安全保障に向けた道に進むべき時ではないだろうか。

チョン・ウクシク | ハンギョレ平和研究所長(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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本当にアジア太平洋秩序は終わったのだろうか。 同意しがたい。

2023-04-25 09:38:47 | 米国は、「世界の憲兵」をやめろ!

[寄稿]

「アジア太平洋」から「インド太平洋」への転換、

盲目的に受け入れるべきか

登録:2023-04-24 06:06 修正:2023-04-24 07:45
 
本質的にインド太平洋戦略は太平洋・インド洋・大西洋をつなぐ米国の伝統的な海洋戦略で、中国の現状変更の試みと影響力の拡大を抑制するための地政学的布石だ。したがって、排他性を前提とした同盟と集団防衛に焦点が当てられている。 

ムン・ジョンイン | 延世大学名誉教授
 
 
尹錫悦大統領が先月30日、ソウル中区新羅ホテルで開かれた「第2回民主主義サミット」インド太平洋地域会議に出席し演説している=大統領室写真記者団//ハンギョレ新聞社

 「今やアジア太平洋時代は過ぎ去り、インド太平洋の新しい時代が開かれた」

 韓国と米国はもちろん、欧州の国際会議でもよく耳にする話だ。地政学的概念としてのインド太平洋が地理的概念であるアジア太平洋を圧倒している。本当にアジア太平洋秩序は終わったのだろうか。 同意しがたい。

 地域秩序の急激な変化は、大国間の大きな戦争や革命のような大国内部の政治変動の結果として現れる。ナポレオン戦争によるウィーン体制、第1次世界大戦後の国際連盟体制、第2次世界大戦後の米ソ対決と冷戦体制、ソ連の解体による冷戦秩序などが代表的な事例だ。しかし、既存のアジア太平洋秩序がまだ健在であるにもかかわらず、日本の安倍晋三元首相が提案し、米国のドナルド・トランプ前大統領とジョー・バイデン大統領が具体化したインド太平洋戦略とそれに伴う新たな地域秩序が、非常に短い時間で支配的パラダイムとして登場したのは、不可解な現象だ。

 1990年代初め、冷戦が終わると、米国中心の単極体制のもとで新たな地域分化が起きた。欧州連合(EU)が先に独自の経済圏を構築した。これに負けじと米国もカナダとメキシコを糾合した北米自由貿易協定(NAFTA)を作り、日本とオーストラリアが主導したアジア太平洋経済協力(APEC)の結成にも積極的に参加した。アジア太平洋時代が開かれるきっかけだった。

 冷戦後のアジア太平洋秩序は、さまざまな面で肯定的だった。アジアと南・北米、太平洋沿岸21カ国が参加するAPECは、自由貿易を標榜する開かれた地域主義の代表的事例として位置づけられた。先進国と途上国の見解の相違など、困難もあったが、それを補うものとして環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)、地域的な包括的経済連携(RCEP)、ASEAN自由貿易地域(AFTA)、多様な二国間自由貿易協定が生まれた。さらにアジアと欧州を連携するアジア欧州会議(ASEM)も発足し、地域間の自由貿易秩序の礎を築いた。

 毎年開かれるAPEC首脳会議は、最も高いレベルの政治安保協議の場となった。特にASEAN主導の下、中国とロシアを含むアジア太平洋地域安保協議は、多国間安保協力の新たな可能性を開いた。異なる政治体制と価値観にもかかわらず、域内交流と協力が活性化し、それなりに戦略的共感も形成されてきた。1990年代以降、アジア太平洋地域が享受してきた平和と繁栄は、まさにこのような大陸と海洋勢力を包括する地域秩序の結果だと言っても過言ではない。

 インド太平洋戦略は「自由で開かれた」(米国)あるいは「平和で繁栄する」(韓国)インド太平洋を目指し、包容、信頼、互恵を協力の原則(韓国)として示しているが、アジア太平洋秩序とは相反するものだ。まず、その下部体制といえる韓米日3カ国軍事協力、クアッド(QUAD)、オーカス(AUKUS)、NATO拡大の動きなどを見てもそうだ。本質的にインド太平洋戦略は、太平洋・インド洋・大西洋をつなぐ米国の伝統的な海洋戦略で、中国の現状変更の試みと影響力の拡大を抑制するための地政学的布石だ。したがって、排他性を前提とした同盟と集団防衛に焦点が当てられている。これを正当化する論理として、価値観外交という二分法的大義名分を掲げている。民主主義国家の連合を通じて朝中ロなど権威主義国家の軸に共同で対応するといったものだ。

 経済分野でもインド太平洋経済枠組み(IPEF)という閉ざされた地域主義を特徴とする。米国は通商と技術の分野で、中国とのデカップリングに同盟と友好国の参加を求めている。リショアリング(海外に移した生産拠点を再び自国へ移転すること)、ニアショアリング(既存の事業拠点から地理的に近い近隣国に事業を移転すること)、フレンド・ショアリング(同盟国や友好国など近しい関係にある国に限定したサプライチェーンを構築すること)などの言葉が示すように、インド太平洋戦略の目標は結局のところ中国排除だ。国際通貨基金(IMF)の最近の報告書は、このような地政学的かつ地経学的進化が世界経済に致命的な打撃をもたらすと警告している。

 中国の浮上を実存的脅威とみなす米国と日本の立場からすると、インド太平洋戦略は十分妥当に思えるかもしれないが、同域内のその他の国々の利害関係と考え方は異なる可能性がある。二つの秩序の二者択一に伴う付随的被害が非常に大きいからだ。その上、アジア太平洋秩序の墓碑銘を書くにはまだ順機能が多い。

 しかし残念ながら、ほとんどの国がインド太平洋秩序への転換を盲目的に受け入れており、その転換の適切性に対する学問的、政策的議論はあまりみられない。果たしてアジア太平洋秩序とインド太平洋秩序の共存と調和の接点を見出すことは不可能なのか。インド太平洋戦略への便乗がもたらす地域水準の損益計算はどうなるのか。特に、韓国のような半島国が大陸を離れて海洋戦略に全面的に参加するのは望ましいことなのか。 韓国は長い間、アジア太平洋秩序の最大の受恵者だった。熾烈な討論と論争を通じて、我々自らの答えを見出さなければならない。

 
//ハンギョレ新聞社
ムン・ジョンイン | 延世大学名誉教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr
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中国は、尹大統領の発言が公開された当日の20日には、「他人の口出しは許さない。一つの中国の原則を順守し、台湾問題を慎重に処理してほしい」(汪文斌外務省報道官)と不満をあらわにして

2023-04-24 11:23:56 | 中国を知らなければ世界はわからない

尹大統領に怒る中国…

崩壊したバランス外交、訪米後に具体的対応

登録:2023-04-24 04:15 修正:2023-04-24 08:46
 
 
                                        尹錫悦大統領と中国の習近平国家主席/聯合ニュース

 「(尹錫悦大統領の発言は)到底受け入れられない。厳重な憂慮と強烈な不満を提起する」

 米中戦略競争の「最前線」である台湾問題について、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が19日のロイター通信とのインタビューで、「力による現状変更に反対する」、「(この問題は)北朝鮮問題のように地域の次元を越えた世界的な問題だ」と述べた発言に対し、中国は4日間にわたって強い反発を示している。

中国官営メディア「韓国外交の国格は粉々に」

 中国外務省は23日午前1時27分ごろ、ウェブサイトに資料を発表し、韓国の指導者の台湾問題についての誤った発言に対して、孫衛東外務次官が「命令を受けて」20日にチョン・ジェホ在中韓国大使に厳重に抗議したと明らかにした。「命令を受けて(奉命)」という表現によって、この抗議が中国共産党上層部の指示によるものであることを明確にした。

 中国は、尹大統領の発言が公開された当日の20日には、「他人の口出しは許さない。一つの中国の原則を順守し、台湾問題を慎重に処理してほしい」(汪文斌外務省報道官)と不満をあらわにしており、21日には尹大統領や韓国を名指ししてはいないものの、「火遊びをする者は必ず焼け死ぬだろう」(秦剛外相)と、より強硬な発言を行っている。これに加えて異例の時間帯にさらに資料を発表し、重ねて不満を表明したのだ。

 「グローバル・タイムズ」などの中国官営メディアも「韓国外交の国格が粉々になった」という社説をウェブサイトの最上段に載せ、「台湾問題に対する韓国の誤った認識がこれほどだったとは知らなかった」と指摘した。

 中国が韓国に対して鋭い批判を繰り返すのは、26日の韓米首脳会談を控えた敏感な状況で飛び出した尹大統領の発言が、台湾問題について中国の引いた「レッドライン」を越えたと判断したためとみられる。大きく2つの問題が指摘できる。

尹大統領の「台湾発言」、禁止線を越える挑発と判断

 まず、「外交の門外漢」である尹大統領の発言そのものが極めて乱暴なものだったということ。中国が極めて敏感に反応する台湾について、韓国が公式文書で初めて言及したのは、2021年5月の韓米首脳会談の時だった。当時の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は米国のジョー・バイデン大統領との共同声明で「台湾海峡における平和と安定の維持の重要性を強調した」と述べた。台湾問題を重視する米国に配慮した選択だったが、直ちにチェ・ジョンゴン外交部第1次官(当時)らが「一般論的な文章を盛り込んだもの」とし、中国の不満をあらかじめ封じこめようと努めた。しかし、今回は尹大統領が自ら、当時よりはるかに強い「力による現状変更に反対する」という表現を初めて使った。

 中国の神経をさらに逆なでしたのは、中国にとって絶対に譲歩しえない「最重要利益」だと考えている台湾問題を北朝鮮に例えたことだ。尹大統領は1992年の韓中国交正常化の基本前提である「一つの中国」原則を否定しているという誤解を招きうる、危険千万な発言だった。米日首脳は台湾問題について中国を強くけん制しはするものの、余計な誤解を避けるために、自分たちが「一つの中国」原則を尊重していることをまず初めに表明する。中国外務省は23日の資料でこの問題に直に触れ、「韓国の指導者は一つの中国原則について何一つ言及していない」と批判した。

 
 
尹錫悦大統領が昨年11月、カンボジアのプノンペンで米国のバイデン大統領と握手を交わしている/聯合ニュース

 しかし、中国が異例の怒りを相次いで表明している根本的な原因は、尹錫悦政権発足後、ますます明らかになりつつある米国偏向外交のせいだとみられる。文在寅政権時代に韓中関係を安定させた対中「3不政策」(THAAD追加配備を行わない、米国のミサイル防衛システムに参加しない、韓米日軍事同盟は結ばない)はすでに形骸化して久しい。韓米日は14日、米ワシントンで防衛実務者協議(DTT)を開催し、ミサイル防衛訓練と対潜水艦戦訓練を定例化した。韓国政府はさらに、今回の韓米首脳会談を通じて、韓米日の情報共有システムの拡大・強化あるいは新たな体系を作るとの構想を示唆している。

 尹政権のこのような動きがどこへ向かうかは明らかだ。冷戦解体からのこの30年あまりの間、韓国が享受してきた繁栄の土台となった「米中バランス外交」の廃棄と「韓米日3カ国同盟」による中国封鎖だ。北京のある中国人消息筋は「中国はこの発言を見て、韓国がさらに米国側に立ったものと受け止めている」とし「まもなく行われる韓米首脳会談の結果を見守ったうえで、具体的な対応を取るだろう」と述べた。

北京/チェ・ヒョンジュン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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海外メディアとのインタビューで、ロシアと戦争中のウクライナに条件付きで殺傷力のある兵器を供与する可能性を示唆した尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の発言が、国際社会で波紋を広げている。

2023-04-23 20:24:56 | 尹大統領は、おかしいね!
 

尹大統領のロシア・中国「刺激」と米国への「全賭け」、

朝鮮半島の危機煽る

登録:2023-04-22 01:44 修正:2023-04-22 07:40
 
 
尹錫悦大統領が20日、青瓦台迎賓館で開かれた「二次電池国家戦略会議」に出席し、冒頭発言を行っている=大統領室写真記者団//ハンギョレ新聞社

 海外メディアとのインタビューで、ロシアと戦争中のウクライナに条件付きで殺傷力のある兵器を供与する可能性を示唆した尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の発言が、国際社会で波紋を広げている。ロシアの反発と米国の歓迎表明で「韓米日対朝中ロ」の対決構図がいっそう強化される中、米国側に密着する尹大統領の「全賭け」外交に対する懸念が高まっている。条件付きの発言という前提があるとしても、ロシアが北朝鮮といっそう密着する根拠を作り、朝鮮半島で危機感が高まる事態を大統領自ら招いた格好だ。

 大統領室高官は20日、ソウル龍山(ヨンサン)の大統領室で記者団に対し、尹大統領のロイター通信とのインタビュー内容と関連し、「常識的かつ原則的な答え」だとしつつも、「これから韓国政府がどう考えるかは、今後ロシアの行動にかかっている」と述べた。また、「国際社会の憤りを買うほど大量の民間人の犠牲が発生しない限り、これまでの立場を引き続き維持する」と述べ、再びボールをロシア側に渡した。

 民間人に対する大規模攻撃や大量虐殺などを前提に「人道・資金援助だけに固執するのは難しいかもしれない」と明らかにした尹大統領のインタビューが19日公開されたことを受け、クレムリン(ロシア大統領府)などロシアの反発が相次いだ。20日にもロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官が「ウクライナに対する兵器供与はいかなる国によって行われても露骨で敵対的な反ロ行動だ」と反発した。また「類似の動きは、そのような行動を取った国々との2国間関係に否定的に反映され、その国の具体的安保利益に触れる問題に対するロシアの立場を決めるうえで考慮されるだろう」とし、「韓国の場合、これは朝鮮半島問題の解決に対する立場にかかわるものになりうる」と述べた。朝ロ間の特殊関係を活用して、南北関係に影響力を行使する可能性を示唆したのだ。駐韓ロシア大使館も同じ趣旨の立場を示した。

 一方、米国防総省のジョン・サプル報道官は韓国メディアの質問に対し、「米国は北大西洋条約機構(NATO)とウクライナ国防連絡グループに対する韓国の貢献を歓迎する」と述べた。米国務省も「ウクライナに対する追加支援と関連して同盟と緊密に協力する」と明らかにした。

 尹大統領の発言を媒介に朝鮮半島をめぐる対立構図が強固になっていることについて、大統領室はロシアの反発は「起きていないことに対するコメント」だとし、26日の韓米首脳会談でウクライナ支援関連議題が議論される可能性も低いと言及した。大統領室高官は「韓国と米国が『ウクライナに対してどのような追加支援を行うか』に関する議論は現在準備されていない」と述べた。

 しかし、尹大統領が他国を刺激し、朝鮮半島をめぐる国際情勢を不利に導くメッセージを自ら発信したことは批判を免れないものとみられる。中国は同日、尹大統領が両岸(中国と台湾)関係について「力による現状変更には絶対反対する」とインタビューで言及したことに対し、「他人の口出しは容認しない」と厳しく批判した。これに対し外交部は「チャン・ホジン外交部第1次官が中国のシン海明大使を呼び、強く抗議した」と明らかにした。

 中国とロシアは先月、習近平中国国家主席のロシア訪問を機に関係強化を図っており、韓国にとっては北朝鮮の核問題の解決に向けた中ロの協力が欠かせない。中国は韓国の最大の交易国であり、韓国の対ロシア交易量も211億5千万ドル(2022年基準)でかなりの規模だ。

 慶南大学極東問題研究所のイ・サンマン教授は、本紙の取材に対し、「米国、中国、ロシアの間でバランスを取り、国益の最大化を目指さなければならないのに、すべて放り投げて米国一辺倒に進むことを受け入れる人はいないだろう」とし、「政策決定のためには、まず与野党の意見も聞いて公論化する必要がある。大統領が一人で決定し、マスコミを通じて公表するような内容ではない」と指摘した。

 政界の反発も続いた。野党「共に民主党」のイ・ジェミョン代表は記者団に「昨日は大統領の一言で大韓民国が、また大韓民国国民が大きな荷を負わされた日」だとし、「軍事支援問題を直接言及したが、対ロ関係を深刻に損ね、北東アジアの平和安定に大きな負担になるのではないか懸念される」と述べた。

キム・ミナ、チャン・イェジ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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21日の本紙の取材を総合すると、N氏は2018年に東自庁望祥1地区の開発事業者に選ばれた。その際に東自庁で望祥1地区事業を総括していた人物は、投資誘致本部長のA氏と望祥事業部長のB氏だ。

2023-04-23 09:41:35 | いったいどうしていたのか?
 

仁川の「賃貸詐欺王」江原道事業受注の際に

「仁川出身」の公務員が担当

登録:2023-04-22 06:12 修正:2023-04-22 09:14
 
 
伝貰詐欺被害者全国対策委員会の会員たちが21日午前、仁川地方裁判所前で、伝貰詐欺被害住宅の競売売却期日を職権変更してほしいと要請する記者会見を開き、スローガンを叫んでいる/聯合ニュース

 仁川市弥鄒忽区(インチョンシ・ミチュホルグ)の「建築王」N氏(61)が2018年に6600億ウォン台の江原道の東海岸(トンヘアン)圏経済自由開発庁(東自庁)の望祥(マンサン)1地区の開発事業者に選定されたことに関連し、江原道は21日、望祥1地区事業者の選定過程についての緊急監査を行うことを決めた。

 21日の本紙の取材を総合すると、N氏は2018年に東自庁望祥1地区の開発事業者に選ばれた。その際に東自庁で望祥1地区事業を総括していた人物は、投資誘致本部長のA氏と望祥事業部長のB氏だ。A氏は2016年に東自庁に任用され、北坪(プクピョン)、玉渓(オッケ)、望祥などへの投資誘致事業を総括する投資誘致本部長として働いており、B氏は2016年8月から昨年まで望祥事業部長を務めていた。

 彼らは2004年から仁川経済自由区域庁で投資誘致業務を担当していたことが分かった。A氏は2004年に仁川経済庁の契約職公務員として任用された。その後、2008年からは投資誘致業務担当課長を務め、共に民主党のソン・ヨンギル前代表が仁川市長を務めていた2012年に投資誘致本部長に昇進した。B氏は2004年にナ級公務員として任用され、2008年からは投資誘致担当チーム長を務めた。

 江原道企画調整室のキム・ハンス室長は21日、江原道庁記者室で懇談会を開き「江原道は当初5月初めに定期総合監査を実施する予定だったが、俗称『伝貰(チョンセ)詐欺師』N氏の望祥1地区事業権の獲得過程についての疑惑がふくらんでいることから、監査に早期に着手することを決めた」と明らかにした。(伝貰は契約時に高額の保証金を貸主に預けることで月々の家賃は発生しない不動産賃貸方式)

 ウォン・ヒリョン国土交通部長官は20日の国土交通委員会に出席し、「N氏は他地域(江原道)に行って投資事業を展開しており、その過程で高位の政治家たちが依頼したり圧力を加えたりしたという情報提供があるので、特別捜査をしていると認識している」と述べている。

 望祥1地区の開発は、海洋・複合観光都市建設という目標のもとに推進された。総事業費は6674億ウォン(約672億円)規模。2015年2月にはカナダのダンディーグループが開発事業者に選定されたが、2017年初めに事業費不足などで事業から撤退している。その後、N氏が経営するサンジン総合建設が2017年7月に業務協約を結んだ。N氏は東海Eシティーという特殊目的法人を作り、望祥洞一帯の175万平方メートルの土地を購入することで、開発事業施行者に選ばれた。だが、残り165万平方メートルの土地収用のための200億ウォン(約20億1000万円)あまりの供託金を昨年の期限までに預けられなかった。

イ・スンウク、パク・スヒョク記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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