「人の噂も75日」というが、世はスピード時代、今では1週間も経たないうちに、人々の関心は次の新しい話題に移って行く。つい先ごろまでは16歳少女の集団リンチ殺人事件がマスコミをにぎわしていた。が、それも山口県の連続殺人・放火事件の犯人逮捕ですっかり影を潜めてしまった。
そして、日曜日以降は、山口県・島根県など日本海側の記録的な豪雨による甚大な被害、遅々として進まぬ復旧作業の様子など。めまぐるしく変わる世に、人々の関心が通り一遍のものであるのは仕方ない。しょせんは「他人事」なのである。
山口県周南市の集落で5人の遺体が見つかった連続殺人・放火事件は、近隣住民とのつきあいをうまくできずに不満を募らせ、孤立した末に至った凶悪事件のように報道されている。自宅には郷集落住民に対する不平不満を綴った張り紙が複数見つかっているそうで、報道を見聞きする限りでは、変わり者の男の非道な犯罪で、一方的に男が悪いというような印象を受ける。
弁護人の会見で分かったことは、容疑者の自宅窓にあった「つけびして 煙り喜ぶ 田舎者」と書かれた貼り紙は、9年ほど前に書いて貼っていたらしい。「つけびして」は集落内で自分への悪いうわさを流すという意味、「田舎者」は集落の人を指したつもりだったと説明しているとか。周囲の人の反応を知りたかったとし、「自分の中に抱え込んだ気持ちを知ってほしかった」などと話しているという。
一体、どれほどの恨みつらみがあって、あんな非道なことをしたのか。容疑者は、うわべだけでは分からない深い心の闇を抱えていたらしい。週刊朝日8月9日号には【山口連続殺人 容疑者は「ジキルとハイド」だった?】という記事が掲載されているという。その中で「集落の外では容疑者はまったく異なる人格の持ち主で、高齢者のための“便利屋”のような仕事もしており、会う人々に好印象を与えていた」と書かれているそうだ。
また、ネットに興味ある記事を見つけた。元毎日新聞記者の板垣英憲氏が書いた【「心根優しい」親孝行な保見光成容疑者は、「鬼の住処」山口県周南市金峰の限界集落に帰郷すべきでなかった】には、これまでの報道とはまったく違った男の姿が書かれている。(一部抜粋)
【容疑者は40代の働き盛りで、介護や看護が必要な高齢の両親の面倒を見るために帰郷した。高齢の両親は、周囲から「親孝行な息子を持ってよかったな」と羨望の眼差しで見られただろう。介護や看護が必要な近所の高齢者は、介護福祉士や看護師に有料でサービスを受けることができても、決められた範囲以外のサービスは受けられない。家政婦の守備範囲である「家事」など細かいサービスについては、面倒を見てもらえないのである。あるいは、別途、「便利屋」を頼むしかない。いずれも有料であり、無料のボランティアを頼むわけにはいかない。
ところが、近所に「優しい心根」の親孝行な壮年が帰ってきた場合、近所の高齢者は、これ幸いに、その壮年の「優しい心根」につけ込んで、日常家事から集落の細々した雑用に至るまで、無料で便利に使い始めるようになる。それがやがて、「便利屋」のようになり、しかも、だれが無限に使ってもタダ働きとなって行く。
それでも、両親が生きている間は我慢したが、両親が他界してからは、いつまでも「便利屋」であり続けることを拒否する。すると、近所からは「なぜやらないのか」と逆恨みされ、「退職金をみんなに配れ」と言われて、拒むと、やがて「村八分」にされてしまう。そして、ありとあらゆる嫌がらせを受け、その果てに、父親の目にそっくりと感じて引き取って、家族の一員として可愛がっていた「愛犬」のことを、近所から「臭い」「汚い」などの罵声を浴びせられて、「保健所に頼んで、処分しろ」と命令口調で言われる。そればかりではなく、神社一帯の芝刈をたった一人でやらされ、自費で購入した芝刈機を焼かれたり、農薬を散布されたり、いじめは、延々と続く。以前に刃物で胸を刺されたこともあり、身の危険を感じた壮年は、自宅にいくつもの監視カメラを設置したり、警察署に相談に行ったりしていた。】
これがもし事実だとしたらひどい話で、大人のいじめである。そうなると板垣氏のいう、「鬼」か「山姥」ばかりの「鬼の住処」のようなところへユーターンした容疑者が不運だったというべきか。一体、どれが本当の姿なのか? これから色々なことが明らかになってゆくだろうが、どんなに虐げられても人の命を奪っていいということにはならない。どんな理由があろうとも…。
言葉を尽くし、右よりでもなく左よりにも注意怠りなくそれぞれの立場を忠実に客観的に表現しても、それが絶対事実だとは、当事者にも確信は持てないのでは。
複雑に絡み合う人間不信の現代。何処でも起こり得る、フラクタル性を持ち合わせた事件は地方にも都市にも大きな衝撃を与えたとおもいます。
この事件の容疑者に関する報道は、ほとんどが悪行非道な人間で、同情の余地なしというものばかりです。
が、年寄りって意外とジコチュウ(私も含めて)で、意地悪なところもあるように思います。
それこそみんなでいじめれば罪悪感はない。子どものいじめと同じで、抵抗しない者へのいじめがエスカレートしたのかも、そんな気もします。
でも、「窮鼠猫を噛む」、反動は怖いですね。
ネットでのこうした裏事情の出所はどこでしょうか。