小玉ユキ(小学館)
《あらすじ》
さえない大学生・陽一は、ある日、橋に引っかかった白鳥を助ける。その夜、見知らぬ女の子が唐突に陽一の部屋を訪れ、女の子と縁のない陽一は仰天。彼女は「自分は陽一に助けられた白鳥」などというのだが、そんなことって……!?
《この一文》
“吐く息も
景色も
あんなに白かったのに ”
小玉ユキさんの『光の海』というマンガが、緑川ゆきさんの『蛍火の杜へ』に迫る面白さだと、お友達が言うので、私は即座に走りました。近所の書店へ。ダッシュです。
「こ、小玉…小玉ユキさん」と書店の棚を探します。が、ないっ! 近所の弱小書店では『光の海』も他のも見つかりません。くっ、もう一軒の方も見てくるか! ふたたびダッシュです。
で、「あ、あった…。でも、『光の海』じゃない……。あれ? このマンガって、この人のだったのかー」
というわけで、『羽衣ミシン』です。非常に優れたマンガであるという評判は、私もどこかで聞いたことがありました。なるほどー。小玉ユキさんって、この人だったのか。
大急ぎで帰宅して、さっそく読みふけった私ですが、その日の午後はそのままぼーーっとして過ごすことになりました。何と言うか、もう悲しくて。このやり場のない悲しみをいったいどうしたら良いのでしょう。なにがそんなに悲しいのだか、うまく説明はできないのですが、主人公の陽一が気の毒で、気の毒でたまりませんでした。美しい結末には、しかし同時に無垢ゆえの残酷さのようなものが感じられてしまって、私などはとりつくしまもなく喪失への恐怖に襲われてしまいます。
「現代版 つるの恩返し」とも言うべきこのお話は、鶴ではなく白鳥の恩返しのお話なのですが、これが実に切ない。ネタをばらしたくないので、詳細には書きませんが、ある冬の日に白鳥を助けた男子学生と、助けられた白鳥の化身である女の子の純愛を描いた物語です。
この純愛ぶりが、しかしまぶしいほどの純愛なのでした。主人公のふたりがあまりにも純真で。それだけに別離という結末が痛々しいのです(あ、ネタばれ;失礼しました)。
最初に読んだときは、私は率直にいってこの結末を受け入れがたかったです。陽一が、ただ美羽さん(白鳥の女の子)に振り回されただけのように思えたので。でも、違っていました。何もかもが突然だったけれど、美羽さんはちゃんと陽一に恩を返していたのでした。彼は彼女と出会うことで、大きなものを得たのでした。それによって、ふたりの別離という結末は、悲しみを乗り越えられるものになっていたのでした。はあ。まいったな、これは。
泣きたくなるので、あまり読み返すことはできなそうですが、すばらしく美しいお話でした。絵も綺麗。さあて、今度街へ出た時には『光の海』を買ってくるとしましょうか。
《あらすじ》
さえない大学生・陽一は、ある日、橋に引っかかった白鳥を助ける。その夜、見知らぬ女の子が唐突に陽一の部屋を訪れ、女の子と縁のない陽一は仰天。彼女は「自分は陽一に助けられた白鳥」などというのだが、そんなことって……!?
《この一文》
“吐く息も
景色も
あんなに白かったのに ”
小玉ユキさんの『光の海』というマンガが、緑川ゆきさんの『蛍火の杜へ』に迫る面白さだと、お友達が言うので、私は即座に走りました。近所の書店へ。ダッシュです。
「こ、小玉…小玉ユキさん」と書店の棚を探します。が、ないっ! 近所の弱小書店では『光の海』も他のも見つかりません。くっ、もう一軒の方も見てくるか! ふたたびダッシュです。
で、「あ、あった…。でも、『光の海』じゃない……。あれ? このマンガって、この人のだったのかー」
というわけで、『羽衣ミシン』です。非常に優れたマンガであるという評判は、私もどこかで聞いたことがありました。なるほどー。小玉ユキさんって、この人だったのか。
大急ぎで帰宅して、さっそく読みふけった私ですが、その日の午後はそのままぼーーっとして過ごすことになりました。何と言うか、もう悲しくて。このやり場のない悲しみをいったいどうしたら良いのでしょう。なにがそんなに悲しいのだか、うまく説明はできないのですが、主人公の陽一が気の毒で、気の毒でたまりませんでした。美しい結末には、しかし同時に無垢ゆえの残酷さのようなものが感じられてしまって、私などはとりつくしまもなく喪失への恐怖に襲われてしまいます。
「現代版 つるの恩返し」とも言うべきこのお話は、鶴ではなく白鳥の恩返しのお話なのですが、これが実に切ない。ネタをばらしたくないので、詳細には書きませんが、ある冬の日に白鳥を助けた男子学生と、助けられた白鳥の化身である女の子の純愛を描いた物語です。
この純愛ぶりが、しかしまぶしいほどの純愛なのでした。主人公のふたりがあまりにも純真で。それだけに別離という結末が痛々しいのです(あ、ネタばれ;失礼しました)。
最初に読んだときは、私は率直にいってこの結末を受け入れがたかったです。陽一が、ただ美羽さん(白鳥の女の子)に振り回されただけのように思えたので。でも、違っていました。何もかもが突然だったけれど、美羽さんはちゃんと陽一に恩を返していたのでした。彼は彼女と出会うことで、大きなものを得たのでした。それによって、ふたりの別離という結末は、悲しみを乗り越えられるものになっていたのでした。はあ。まいったな、これは。
泣きたくなるので、あまり読み返すことはできなそうですが、すばらしく美しいお話でした。絵も綺麗。さあて、今度街へ出た時には『光の海』を買ってくるとしましょうか。